振り返る前から、分かってしまう。 振り返った瞬間、そこにいたのは——ユリウスだった。 一瞬、息が止まる。 「……どうして、ここに?」 問いかけると、彼は視線を逸らしたまま答えた。 「……夫人から、連絡を受けた」 「……止めに来たんですか?」 わずかに間があった。 「……止めたかった」 低い声だった。 「……でも、君を止められそうにない」 胸の奥が、わずかに揺れる。 「この間は、すまなかった」 俺は、思わず瞬いた。 「……君の言っていることは、正しい」 「……本気で、そう思ってるんですか?」 問い返すと、ユリウスはわずかに眉を寄せた。 「教会のやり方は歪んでいる。 だが俺が動けば、あの連中は必ず改革派ごと潰しに来る」 「……やっぱり、立場の話ですか」 そう言うと、ユリウスの目がわずかに揺れた。 「……それだけじゃない」 声が、少し低くなる。 「教会を見るたび、思い出す。……姉のことを」 俺は、息を呑んだ。 彼が止めていた理由に、姉のことが絡んでいるなんて、想像もしなかった。 「泣きながら、俺の袖を掴んでいた。 行きたくない、と……言い続けていた」 指先が、わずかに強く握られている。 「だが俺は、何もできなかった」 静かな告白だった。 「……だから、また同じことが起きるのが怖かった」 しばらく、言葉が出なかった。 「……それで、私を止めたんですか」 「……ああ」 肯定だった。 「……でも」 俺は、小さく息を吸った。 「私は、あなたに守られている側でいるだけじゃ……嫌なんです」 ユリウスの視線が、はっきりと俺を捉えた。 「……君は、強いな」 「強いわけじゃないです。ただ……もう、逃げたくないだけで」 沈黙が落ちる。 やがて、ユリウスが静かに言った。 「……それでも、君を危険にさらしたくない」 「……分かっています」 「失うことに、耐えられない」 胸が、はっきりと鳴った。 「……それでも、行きます」 しばらく、何も言わなかった。 やがて、ユリウスは小さく息を吐いた。 「……だろうな」 そして、低く続ける。 「……だから、一人では行かせない」 顔を上げる。 「俺の側近をつける。名はセイン・クローディア」 「…
Last Updated : 2026-05-18 Read more