「ルミエル」 低く、とろけるような蜜を含んだ甘い声が、すぐ耳元で形を成した。その響きだけで、ルミエルの背筋を心地よい戦慄が走り抜ける。アルリックの強靭な腕が、吸い付くようにルミエルの細い腰へと回り、有無を言わさぬ力強さで、その厚い胸板へと引き寄せられた。 先ほど交わしたばかりの、あの深く濃厚な口づけの余韻が、今も唇に熱く、痺れるような感触を残している。ルークのフェロモンに誘発されたヒートの火照りは、引くどころか身体の奥底でいっそう激しくくすぶり続け、骨の芯をじりじりと灼いていた。アルリックの大きな掌が触れた箇所から、彼の体温が侵食し、ルミエルの理性をじわじわと塗り潰していく。 ルミエルは震える両手をアルリックの胸に当て、拒絶ともつかぬ弱々しさでそっと押した。そして、切なげに眉を寄せ、首を左右に振る。 まだ隣には、ルークがいるのだ。あの刃のように鋭く、歪んだ嫉妬を孕んだ兄の視線の前で、これ以上の秘め事を晒すことなど、ルミエルの誇りが許さなかった。声を出して拒むことができないルミエルは、必死に視線で、これ以上は耐えられないと訴えるしかなかった。(兄さんの目があるところでは……あんなに、あられもない姿は見せられない) 声にならない、悲鳴にも似た思いを込めて、アルリックの琥珀色の瞳を見つめた。「わかった」 アルリックは、ルミエルの瞳の揺らぎを読み取ったのか、意外なほどあっさりと頷いた。だが、その瞳の奥には、ルミエルを誰の目にも触れさせたくないという、昏く濁った独占欲が渦巻いている。
Last Updated : 2026-04-18 Read more