結城蒼汰(ゆうき そうた)はまたしても、私の誕生日パーティーに高橋莉奈(たかはし りな)を同伴している。彼は彼女の腰を抱き寄せ、招待客たちに紹介する。「莉奈は結衣の一番の親友であり、結城グループの新たなビジネスパートナーです」シャンパングラスを握りしめる私の指先は、血の気を失っていた。莉奈は先週、私が三年がかりで進めてきたプロジェクトを横取りしたばかりなのだ。蒼汰が私の耳元に顔を寄せ、低く囁く。「感謝してほしいな。大切な友情を、繋ぎ止めておいてあげたんだから」それからというもの、莉奈は私のジュエリーを身につけてチャリティーパーティーに出席し、私の専属メイクアップアーティストを使い、あろうことか結城家の代表として株主総会にまで出席するようになる。一族恒例の乗馬会の日、蒼汰は私の愛馬を莉奈に貸し与えてしまった。彼は自らの手で彼女のあぶみを調整しながら、顔すら上げずに私へと言い放つ。「君は乗馬が下手なんだから、みんなのペースを乱すなよ」馬場の脇にぽつんと立ち、二人が肩を並べて障害物を飛び越えていくのを見つめる。結城家の親族たちが笑いながら褒めそやしていた。「本当にお似合いの二人だね」帰路につく頃には、土砂降りになった。私に車がないことなど、誰も気にも留めない。蒼汰からメッセージが届く。【自分でなんとかしろ。せっかくの気分をぶち壊すなよ】私はそっとエンゲージリングを外し、ただ【わかった】と返信した。スマホの画面が明るくなった時、雨が私のまつ毛から滴り落ちていた。神崎蓮(かんざき れん)からのメッセージが目に飛び込んでくる。【あの時のラブレター、本当に受け取ってくれたのか?】私は顔に掛かった雨を拭い、ずぶ濡れの画面を指で何度もなぞって、ようやくロックを解除する。遠くからスポーツカーの轟音が響き、蒼汰の黒いランボルギーニのテールランプが、雨の向こうで刺すように赤く光っている。突然車の窓が下がり、黒い傘が一本投げ捨てられ、泥水の中を転がった。蒼汰の声が雨音に混じって聞こえてくる。「風邪なんか引くなよ。来週のパーティーに支障が出るからな」助手席から莉奈が顔を出す。新しく巻いたばかりの髪は少しも濡れていない。「結衣、待っててあげたほうがいい?」口ではそう言いながらも、その指はすでにパワ
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