私の名前は、藤森紗弥(ふじもり さや)。婚約者の明智修司(あけち しゅうじ)はまた浮気をした。今度の相手もまた私の身代わり・大橋春菜(おおはし はるな)だった。私は彼の好みに合わせて、か弱くて清楚な女らしく見えるように着飾り、なんとか引き止めようとした。けれど修司は、自分の手で私のメイクを落としながら言った。「いい子だ。でも、こういうのはお前には似合わない」そのうえ――「ほかの女なんて、ただの気まぐれだ。将来、妻になるのはお前だけだ」そんな約束まで口にした。修司の許しを得て、春菜は私の代わりに表彰台に立ち、私が受け取るはずだった賞まで手にするようになり、やがて彼の隣で一族の集まりにまで顔を出すようになった。挙式のリハーサルの最中でさえ、修司のイヤホンから流れていたのは、彼と春菜が二人で作ったプレイリストだった。眉をひそめたまま動かない私を見て、修司は苛立ったように言った。「わざわざ取締役会までずらして来てやったのに、まともに集中することもできないのか?そんなに嫌なら、春菜に代わってもらえばいい」そのときの私は――もう、自分のために言い争うことすらしなかった。ただ淡々と「……いいよ」と答えた。その瞬間、スマホが震える。海外にいる――昔から何かと張り合ってきた七瀬蓮也(ななせ れんや)からだった。【紗弥。あのときの縁談、どうして俺を選ばなかった?】……「紗弥、俺の時間は貴重なんだ」修司は、私が上の空でいることを責めるような目を向けてきた。けれどその視線は、最初から最後まで隣に立つ春菜に向けられたままだった。春菜は、父が幼い私を守るために用意した身代わりだった。ずっと影のように私のそばにいて――いざというときは、私の代わりに危険を引き受けるための存在として育てられた。……なのに。急に、何もかもが馬鹿らしくなった。「じゃあ、その子にやってもらえばいい」私はベールを外し、そのまま背を向けて立ち去ろうとした。けれど修司が呼び止めた。「紗弥。そのドレスを脱いで春菜に渡してやれ」その冷たい目を見た瞬間、ただ馬鹿らしいと思った。ここには百人近く人がいるのに、その前で私にドレスを脱げと言うのだ。「……今、ここで?」「そうだ」修司は白紙小切手を叩きつけるよう
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