離婚協議書の末尾には、紛れもなく彼自身の直筆サインが記されていた。俺たちは、もうとっくに離婚していたのか……蓮司の手が激しく震え、裁縫箱を危うく床に取り落としそうになった。慌てて掴み直したものの、目の前に突きつけられた現実がどうしても信じられない。嘘だ!そんなはずはない!俺の三年にわたる裏切りを耐え忍んできた遥香が、どうしてこうもあっさりと離婚を決意したっていうんだ!蓮司は呼吸を乱し、窒息しそうなほどの痛みを胸に抱えながら、さらに箱の中を掻き回した。離婚協議書の下には、何枚ものしわくちゃになった診断書が重なっていた。末期がんの診断書、抗がん剤治療の記録、そして直近の妊婦健診の記録と入院カルテ……。蓮司の目はみるみるうちに赤く充血していった。手の震えがさらに激しさを増す。遥香ががんだった?どうして、今まで俺に一言も……!蓮司の視界が歪んだ。離婚協議書、そして一枚一枚の診断書が、まるで鋭利な刃物となって、彼の両目、そして心臓を容赦なく深く抉り取っていく。「ああああ!」蓮司の口から、悲痛で獣のような絶叫が漏れた。目尻から溢れ出した涙が、とめどなく頬を伝い落ちる。診断書の束の一番下には、一通の手紙と一つの指輪が残されていた。一目見て分かった。その指輪は、二人が婚姻届を出したあの日、彼が露店で六百円で買ってやった安物だった。あの時、彼は彼女にこう誓ったのだ。「遥香、待ってろ。俺が成功したら、世界に一つしかない、とびきり大きなダイヤの指輪を贈るからな!」視界がますます涙で滲んでいく。こぼれ落ちた涙が、何枚かの診断書を濡らした。蓮司は手の甲で乱暴に涙を拭い、その手紙に目を走らせた。【蓮司へ。あなたがこの手紙を読んでいる頃、私はもう、この街を離れる飛行機に乗っているはずよ。私の命は、まもなく終わりを迎える。十年前、あなたが私に何て言ったか覚えてる?『もしお前を裏切るようなことがあれば、俺は死んで地獄に落ちるだろう』……そう言ったわね。時々、考えずにはいられない。どうして私たちはこんな結末を迎えてしまったのか。どうしてあなたは私を裏切ってしまったのか。私に、至らない点があったからでしょうか?けれど、自分が末期がんを患い、命のカウントダウンが始まっていると知った時……ふと、多くの
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