修二は一瞬、呆然とした。その隙をつき、純子は慌てて彼から逃れる。乱れた呼吸のままバッグを漁り、震える手で診断書を取り出した。「赤ちゃん、もう6週目なの。もう心拍もあるのよ」修二は雷に打たれたように、その場で動けなくなった。「あの子、戻ってきてくれたのよ。また私たちの子どもになりたかったんだと思う。修二……今度こそ三人でちゃんと暮らそう?」純子は感情を込め、静かに訴えた。修二の脳裏に、一瞬のうちに夏美が妊娠したときの喜びがよぎる。検査室で子どもの心音を聞いた瞬間、彼と夏美は抱き合って涙を流した。あんなに子どもを愛していた夏美が、どうして中絶なんかしたのだろう。真実を確かめるために、修二はスリッパのまま家を飛び出そうとした。「修二、どこへ行くの?」純子は焦って修二の前に立ちはだかった。「結婚してくれなくてもいい。でも、お腹の赤ちゃんを見捨てないで!」純子は子どもを切り札にした。「隠し子だったあなたは、大変な思いをしてきたでしょう?だからお願い……この子まで、そんな思いをさせないで。幼い頃からいじめられたりされたら、かわいそうすぎる」その言葉が修二の急所を突いた。彼は目を細め、純子の腹を見つめながら、口元を歪めた。「そうだな。俺の子どもを隠し子にはできない。とりあえず病院へ行って、検診を受けよう」純子の胸がじんと温かくなり、彼の腕にそっと手を回した。「やっぱり、修二は私と赤ちゃんを愛してくれてるのね」病院で、純子はエコー写真に映った小さな豆粒のような姿に見入り、声を弾ませて言った。「修二、見て!これが私たちの赤ちゃんよ。可愛いでしょう……!」修二はモニターをじっと見つめ、無表情のまま言った。「純子、この子が好きか?」純子は小さくうなずいた。修二は彼女のお腹に手を当て、目に冷たい光を宿す。「そうか。じゃあ、取り出してお前にやるよ」その言葉が終わらないうちに、純子はベッドへ押さえつけられ、手術室へと運ばれていく。「修二、それ、どういう意味?」純子が絶叫する。「言葉通りの意味だ」「嫌よ……この子はあなたの子なのよ!あなたの子を産ませてくれるって約束したじゃない!」修二は何かを思い出したように、ベッドの前に立ちはだかった。「前回の中絶のとき、全身麻酔だっ
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