そんなやりとりを経て店を出て、俺は買ったポタアンを軽く揺らしながらぼんやりと街を眺める。 藤色と薔薇色に染まった空の下、ぽつぽつ灯りが点るビル。人々の喧噪が渦のように回っていて、どこか遠い世界のように感じられた。 俺は胸の中に染み渡る充足感を思い、ゆっくりと頬を緩める。 「イヤホン、か。まあ、こういう関係も悪くはない、かもな」 人と人のふれあいを繋ぐ紐が、たまたまイヤホンのケーブルだったと言うだけの話。 俺にとって重要なのは生きててよかったと思えることだ。 サキに対するコンプレックスを振り払い、自分が自分として自分らしく生きるということ。 でもやっぱり俺は大したことのない人間で、特段取り柄というものがないつまらない男だ。 そんな俺でも幸せになりたいし、未来に光が差し込んで欲しい。 それが今、アコとの出会いによって得られようとしている。 たまらなく嬉しかった。 「できる限り一緒にいたい。いや、出来るな」 アコが人間だから、それが本当によかった。 「よかった……」 言の葉に乗せてみると、それは力となって俺にエネルギーを与えてくれる。 とくんとくんと心臓が高鳴る。 「多分俺はもう――」 もう、疑う余地もない。 「アコが、好きなんだと、思う」 街が、遠く見えた。 しかしそんな楽しい日々がいつまでも続くわけではなかった。 「……な、なに!? か、帰る!?」 それはある日、学校を終えて家につくなり電話が鳴ったのである。 スマホではなく電話というのがどうにも気にかかり、電話を出てみたらそれはサキだった。 受話器の向こうから伝わるサキのあっけらかんとした声が、酷く不愉快に聞こえる。 「あー、ちょっとだけ。用事ができたから一時帰国。すぐまだ発つけどさ」「え!? マジかよ……」 「何か困ることでもあるん?」 「いや、別に……」 少し前なら大変困ることになったのだが、今はまあ、どうにかなる。 「アコが
Terakhir Diperbarui : 2026-05-22 Baca selengkapnya