私は白川清花(しらかわ さやか)。白川知樹(しらかわ ともき)の妻だ。結婚して三年目、知樹は若い愛人を囲うことに夢中になった。相手は、須藤優奈(すどう ゆうな)という女だった。優奈を喜ばせるためなら、知樹はどれほど理不尽な要求でも私に呑ませた。そして私が一つ頷くたび、彼は小切手を一枚よこした。だから私も、彼にもらった金で、外に大学生の男の子を囲った。結婚記念日の夜、知樹はベッドの上で私の腰を抱き寄せた。「今度、優奈の現場でヌードシーンの代役が必要なんだ。現場には人が大勢いる。あの子は若いし、そういうのを気にするだろ。それに俺も、あの子の肌を他人に見せたくない。お前ならちょうどいい。そんな体、誰も欲しがらないだろ」私は枕の下から離婚届を取り出した。「ちょうどよかった。私のほうも最近うるさくて。離婚しましょう。私も、もうこんな生活を続ける気はないの」知樹は目を細め、しばらく私を見つめた。やがて、何かを察したように笑う。「金が足りないのか?もう一桁増やせば満足か?」彼は長い腕で私の腰を抱え込むと、片手で私の手から離婚届を取り上げ、そのままゴミ箱へ放り込んだ。「ずいぶん偉くなったな。離婚届なんか出して、俺を脅すつもりか」知樹は昔からそういう男だった。私が何を望んでいるのかも、どれだけ我慢してきたのかも、彼には見えていない。結婚した日、彼は私に言った。「金以外、俺はお前に何もやれない」その言葉どおり、この五年、知樹はいつだって金で私を黙らせてきた。私は腰から下へ滑り込もうとする彼の手を払いのけ、まっすぐに見返した。「知樹、私は本気よ。あなたの愛人も好き勝手しているし、私のほうも似たようなものよ。別れたほうが、お互い楽でしょう」知樹の顔から、すっと笑みが消えた。それでも、口調にはまだ薄い嘲りが残っていた。「前にも言っただろ。白川夫人として置いてやるのは、お前だけだ。優奈は少し甘えているだけだ。お前に直接迷惑をかけたわけでもないのに、何をそんなに目くじら立ててる。いい年して、若い女に張り合うなよ」結婚する前から、知樹の口からは何度も似たような言葉を聞かされてきた。昔の私は、そのたびに取り乱して言い争い、泣きながら縋った。けれど今は、もう何も感じない。女遊びの
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