確かに、私の端末には、先ほどの映像データの他に、別のファイルが送られてきていた。そのファイルにはロックが掛かっていて、開くことができない。「木香」宏樹は心配そうな顔で言った。「そこにあるのは、君にとってとても辛い事実だ。俺に任せてくれるなら、離婚手続きは全て代行する」「宏樹!」「理人は黙っていろ」宏樹の迫力に、理人はそれ以上何も言えなかった。「ただもし、君の目で全ての真実を知って、自らの手で幕を下ろしたいなら……"かつて君が愛した男"の誕生日を、入力してくれ」私は迷うことなく、理人の誕生日を入力した。『……理人、木香さんはいいの?』最初に聞こえてきたのは、詩織の甘えるような声だった。『ああ、構わない。あいつは仕事もしないで家にいるだけだ。槙原社で立派に働く詩織が優先されるのは当然だ』続いたのは、理人の残酷な言葉だった。これは……別荘のカメラの映像だ。詩織が私を拉致するより、ずっと前の日付が表示されていた。詩織が口を覆って呻いた。「木香、止めろ!」理人は、慌てて私の携帯を取り上げようとした。しかし、宏樹の手が、その手を掴んで止めた。「理人」宏樹の声は鋭かった。「自分が招いた結果だ。受け入れろ」それは、有浦家の……理人の兄としての、威厳が感じられる声だった。「やめろ……やめてくれ……謝るから……俺が間違っていた……」理人のきれぎれの懺悔と共に、音声は流れ続ける。『理人、あなたが欲しいわ』『詩織……ずっと側にいられなくてすまない。突然離婚したら、有浦家の体裁に関わる。辛い思いをさせるが、耐えてくれ』……映像の中の二人は、深く口付け合った。それは、紛れもない、不倫の証拠だった。覚悟は決まっていた。心は冷え切り、もう揺れることはなかった。「木香、違うんだ……俺が愛しているのはお前だけだ……これは……これは間違いなんだ……」理人は耐えきれず、その場に崩れ落ちた。『木香さんより、私を愛してる?』『ああ、愛しているよ』理人が詩織を抱き上げ、ベッドルームに向かった。画面が切り替わると、二人の愛し合う姿が映し出された。「いやあ! もうやめて!」恥辱に詩織は耐えかねて、叫びながら病室を逃げ出してしまった。「いいの? 槙原さんのこと追わなくて」私の嘲笑に反論することなど、今の理人にはできなかった。「違う!
Last Updated : 2026-04-23 Read more