――私が黎明館学園に入学してから、数日が経った。 怜央への対抗心を胸に秘めつつ、私は真面目に授業をこなした。 クラスメイトたちの多くは、まだ緊張しているらしい。真新しい教科書を真剣な顔で見つめている。この独特な空気が、私には心地よかった。 しかし、全員が全員真面目に授業を受けているというわけではなくて――。「ぎゃはは! ダッセェ!」 英語の授業直前、教室内に耳障りな笑い声が響いた。 プリントを持ったクラスメイトのひとりが、うっかりつまずいたのを見て、ある男子生徒が笑いものにしたのだ。 私は立ち上がって、馬鹿笑いをする男子生徒に近づいた。「ねえ。うるさいから静かにして」「あ? 何だよいきなり」「些細な失敗をことさらに嘲るのは、クラスの雰囲気を壊す行為よ」「……は?」「わかりやすく言うわね。あなたのその笑い声、キンキン響いて無理」「別にいいだろ、ウケたんだから」 男子生徒が苛立った顔をする。私が静かに睨み付けると、彼は目線を逸らした。 星岡大河。 態度がでかいわりに小柄で、高校の制服を着ていても中学生に見える。 茶髪にピアス。典型的なやんちゃ坊主だ。 ただし、顔は整っている。いわゆるかわいい系。おそらく母親譲りだ。 見た目同様、性格も『良く吠えるチワワ』。キャンキャンといつもうるさい。 不真面目、自分勝手を画に描いたような人間で、私が一番、心底、嫌いなタイプだ。 なのに、どうしてここまで詳しいかというと、大河は地元の有力議員の息子だからだ。 父親の星岡議員は、怜央と繋がっているという。朝菜経由で調べはついている。 つまり、私にとって敵側の人間なのだ。(本当なら情報収集のために適当に仲良くすべきなんだろうけど……無理。あんな子に媚びを売るくらいなら、正面から敵対していたほうがいい) プリント拾いを手伝いながら、私は思った。(もしくは、手のひらで
Terakhir Diperbarui : 2026-05-05 Baca selengkapnya