私、真鍋沙耶(まなべ さや)が難産になったとき、看護師は夫の桐生直哉(きりゅう なおや)を分娩室に呼び入れた。彼は私の手を握り、何の前触れもなく耳元でこう言った。「君のお姉さん、さっき妊娠が分かったんだ。子どもは俺のだ」顔が真っ青になり、信じられないという目で彼を見つめる私を前にしても、彼は平然とした表情で、落ち着いた手つきで私の額の汗を拭った。「実は昨夜、君が破水したとき、俺たちは隣のゲストルームにいたんだ。君の悲鳴は聞こえてた。でも彼女が俺にしがみついて離れなくてさ、抜け出せなかった。そのあと彼女が病院に来ただろ。顔が真っ赤だったから、体調が悪いのかと思って早く帰って休めって言ったけど、あれはただ興奮してただけだよ」そう言って、彼は意味ありげに笑った。まるで余韻に浸っているかのように。「それに、君の両親も俺たちのことは知ってる。ずっと隠すのに協力してくれてた」全身が凍りついた。分娩室に入る前、あんなに心配そうに扉の前で私の汗を拭き、泣きながら無事を祈ってくれていたのに。激痛が全身を襲い、私は残った力を振り絞って彼の手を掴み、問い詰めた。「どうして?」彼は気のない様子で口を開いた。「妊娠してから触らせてくれなかっただろ。俺にも欲求はある。でも子どもができた以上、彼女には責任を取らないといけない」……口を開いたのに、声が出なかった。涙が抑えきれずに溢れ、汗と混ざって流れ落ちていく。取り乱して惨めな姿の私を見ても、直哉の目は少しも揺れていなかった。彼は冷静に私の涙を拭い取り、残酷に言い放った。「麗子と最初に関係を持ったのは、君が妊娠二か月の頃だ。三回目に誘っても断られてさ、君の邪魔はしたくなかったから、ゲストルームのバスルームで一人で済ませようと思ってドアを開けたら、ソファにお姉さんがいた。君に買ったのに、一度も着てくれなかったあのセクシーな下着を身につけていてさ。あの夜、彼女を君だと思って、そのままソファで寝た。君は眠りが浅いから、彼女は声を抑えていたけど、緊張して俺の首を引っかき傷だらけにしたんだ。会社の猫に引っかかれたって言ったら、君はあっさり信じたよね。沙耶、君って単純だよな」直哉は愛おしそうに私の頭を撫でた。けれど、もうそこに少しの温もりも感じられなかった。ただ骨の髄まで
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