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第2話

Author: 菜々子08
再び目を開けたとき、直哉はやつれた様子でベッドの傍らにうつ伏せになっていた。

私が目を覚ましたのを見ると、彼はぎゅっと私の手を握り、震える声で言った。

「沙耶、目が覚めたのか?まだつらいか?」

私は力を込めて自分の手を引き抜き、かすれた声で言った。

「子どもは?」

直哉はそっと私のひび割れた唇を撫で、水を一口飲ませると、優しい声であやすように言った。

「まだ保育器の中だ。女の子だよ。沙耶、俺たちに娘ができたんだ。嬉しいか?」

目の奥が熱くなった。

嬉しい?

本当なら、嬉しいはずだった。

愛する人がそばにいて、腕の中には小さな命がある。

本来なら今日は、私にとって一番幸せな日だったはずなのに。

でも今は、すべてが泡のように消えてしまった。

私は口元をわずかに引きつらせ、言葉を発しようとした、そのとき。

一人の女が入ってきた。

私の姉、真鍋麗子(まなべ れいこ)だった。

「沙耶、目が覚めたのね。フルーツ持ってきたの。あとで直哉にむいてもらって食べてね」

彼女は今日は胸元の大きく開いた丈の短いワンピースを着ていて、首筋にははっきりと赤い痕が残っていた。

わざとだと、すぐに分かった。

怒りに、理性が焼き切れた。

私は頭に血が上り、そばにあった物を手当たり次第に掴んでは、二人に叩きつけるように投げた。

「出てって!二人とも今すぐ出てって!麗子、恥ずかしくないの?妹の夫に手を出すなんて、最低よ!」

「沙耶、気でも狂ったのか!」

直哉は顔を曇らせ、私の手を強く掴んで後ろへ突き飛ばし、麗子を庇うように抱き寄せた。

ただでさえ産後で体はぼろぼろだった。気力だけで何とか持ちこたえていた。

その勢いで、私はベッドから転げ落ち、背中を床に強く打ちつけた。止血のために当てられていたガーゼがずれ、血が一気ににじみ出した。

視界がぐらぐらと揺れる中、麗子を庇う直哉を見上げ、心は完全に冷え切った。

直哉は複雑な表情で私を見下ろした。

「沙耶、麗子は君のお姉さんだろ。妊娠中、どれだけ世話になったと思ってるんだ?

夜中にコロッケが食べたいって言ったときだって、眠いのを我慢して起きて作ってくれた。妊娠後期に足がむくんだときも、わざわざ習いに行ってマッサージしてくれただろ。

文句があるなら俺に言え。麗子に当たるな」

彼が警戒するように麗子を守る姿を見て、私はふっと笑った。

麗子は昔から私を憎んでいた。

私が生まれたことで、周囲の関心を奪われたと思っていたから。

彼女は、私が金を盗んだだの、嘘をついただの、同級生をいじめただのと、ありもしないことをでっち上げた。

そのせいで両親は、私を生まれつき性根の悪い子だと思い込み、ことあるごとに嫌っては、殴ったり罵ったりした。

そんな私が直哉と出会った。私の話を聞いた彼は心から同情し、低い声で怒りを滲ませた。

「こんなひどい家族がいるなんて」

そして私を強く抱きしめて約束した。

「沙耶、俺が一生守る。もう二度と、君にこんな思いはさせない」

私のために怒り、私を愛してくれる人が現れたのは、初めてだった。

私はそれを信じ、すべてを彼に捧げた。

彼と一緒に地下室に住み、アルバイトをしながら彼を支えた。

貧しい青年だった彼が、今や誰もが敬う桐生社長になるまで、ずっとそばにいた。

資金調達のために取引先と酒を飲み、子どもを一人失ったことさえあった。

直哉と結婚してから。

両親と麗子は頻繁に連絡してくるようになり、過去の過ちと後悔を口にして、償いたいと言った。

心の奥では揺らいだが、私は一度も受け入れなかった。

直哉も彼らには冷たく、会うたびにきつい言葉を浴びせていた。

それが、私の妊娠が分かってから変わった。

両親と麗子は、直哉が私の世話をしきれないのではと心配して、自ら家に来るようになった。

気遣いと優しさに満ちたその様子を見て、私は心が緩んでしまった。

許そうとした。過去のことは水に流そうとした。

ようやく、私を愛してくれる家族と、愛してくれる人を手に入れたのだと思った。

けれど、私がお腹の子を十か月守っている間、彼らはそのうち八か月ものあいだ、私のすぐそばで関係を続けていた。

つわりやむくみ、ホルモンの乱れに苦しめられて眠れない夜、彼らは隣の部屋で密かに逢瀬を重ねていた。

誰一人として、私に真実を告げなかった。

それどころか。

終わったあとには、私の前でまるで互いに反目しているかのように振る舞っていた。

本当に、吐き気がするほどだった。

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