All Chapters of 宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――: Chapter 11 - Chapter 20

22 Chapters

第11話……目薬のプレゼント

 ニコッと笑う老婆に尋ねる。「あの、なんの御用ですか?」「いや何、占ってやろうかと……」 自分の名前をどこで調べてきたのかは知らないが、大した用ではなさそうなのでどっと疲れがでた。「いえ、間にあっています」「まぁ、そういうな。何か望みはないかね?」「えっと……じゃあ眼が良くなりたいかな!?」 私は小さいころから目が悪いのでそう答えた。 そして時間がかかりそうなので、テーブルに置いてあった紙幣をいくらか渡してその場は帰ってもらった。☆★☆★☆ リアルの世界で目を覚ましたら、既に昼だった。 既に陽が高い。 うぇ……、飲みすぎで気持ちが悪い。 ゲームの中の二日酔いが、現実世界の体にも波及したようだ。 これって一種のVR酔いなのかな……。 風呂に入って、コンビニに行きシャケ弁当を買って家に戻る。 机の上で弁当を開けようとすると、――ピンポーン インターホンが鳴った。 ……宅配便だった。 宅配便のお兄さんにお礼を言い、別れを告げた後に差出人を見る。 『VR・AVS』様。 聞き覚えがないと思ったら、いま遊んでいるゲーム会社からだった。 『当選おめでとうございます』 そう書かれた封を開けると、小さな目薬が入っていた。 確かにゲーム三昧で目が疲れていたところだ。 ご飯を食べた後に目薬を差すととても心地よかった。 ゲーム会社って案外気が利くのですね。 目薬を差した後、すぐにカプセルに入ってゲームに戻ることにした。 ぇ?……戻ることにした!? なんか違う気がする。 でもまぁ……いっか、そろそろタヌキ軍曹殿とクリームヒルトさんが戻るころだった。☆★☆★☆ 惑星リーリヤの役所で、新しい資源会社設立の手続きをする。 いろいろと面倒くさいが、他にやってくれる人もいない。 しかも間違うのが怖い。 失敗しても、五月蠅くもフォローしてくれる上司はここにはいなかった。 皆を束ねる支店長ってやっぱり結構頑張っていたのだな、って今になって思う。 ちなみに会社名は『ハンニバル開発公社』とした。 この星の王様にも出資してもらう計画なので、きっと公社でいいだろう。 その後、港に戻り、海に浮かぶハンニバルの艦橋でのんびりしていると、二人が戻ってきた。 正直とても嬉しかった。「ただいまです」「帰ったポコ!」 二人はとても元気そ
last updateLast Updated : 2026-05-06
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第12話……衛星アトラス

「あの辺りの地形がいいですかな?」「へぇ、勉強になります」 山師の方に授業料を払い、鉱山として良さそうな地形を教えてもらう。コンピュータにあるデータだけでは物足らなかったためだ。 鉱山の総売り上げの3割を蛮王様に収めるために、全く儲けが出ない予想の開発計画。さらには、この惑星の方々は機械化を嫌うのだ。 頭でわかっても感情が付いて行かないのはだれにでもある。しばらく収益化には時間がかかるだろう。  ここは緑が美しい星だった。工業化もされておらず、小川の水は澄み、空気もきれいで夜の空は星のシャワーが降り注ぐ。いつかこんなところに別荘が欲しいな、と身分違いの夢を抱いてみた。☆★☆★☆ ……再び宇宙空間――ドドドーン「すごいポコ!」「凄いですわ!」 何を褒めて貰っているかというと、射撃。 美味しいリンゴを見分けられるようになった眼力で、小惑星の脆いところを確実に認知。効率よく射撃することで、エネルギー効率の良い小惑星破壊の任務達成が可能になっていたのだ。……セコくてすまん。 現在、惑星リーリヤの鉱山開発の為に、星間ギルドで大量の借金をしている。 儲かると思ったのが、そうはいかない現実、というかゲームの中……!? 苦手なシェリオ伯爵対策を蛮王様に頼んでいるとはいえ、コツコツ小惑星を壊さないと借入利息の返済が滞る今の現状は不味かった。 そうブツブツと一人事を言いながら、惑星リーリヤに帰還する途中。「あれはなんでできているポコ?」 タヌキ軍曹殿が指さしたのは、惑星リーリヤの【衛星アトラス】だった。「あっ、そうか」 衛星は惑星が分離した状態の物も多かったため、惑星に似た性質の衛星が多かった。 すぐに着陸し、簡易な地質を調査すると。ビンゴ!! 空気も無く、氷に閉ざされた岩石衛星だったが、ミスリル鉱石などの含有率は惑星リーリヤのそれだった。 蛮王様に衛星を譲り受けたい旨を申し出ると、二つ返事でもう一つの【衛星ガリア】まで貰えることになった。わが【ハンニバル開発公社】の財政が悪いことに、申し訳ないと思ってくれているようだ。有難い。 早速、惑星リーリヤで従業員募集。 役所の入り口の横の路肩でのんびり待っていると、20名くらい来ていただけたので雇用契約した。 賃金は多め、何しろ何もない未知の衛星アトラスで働くのだ。 普通だったら嫌
last updateLast Updated : 2026-05-07
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第13話……不時着令嬢マルガレーテ!?

――コツコツコツ 煙を吹いて宇宙港に不時着した宇宙船からハイヒールの音が響く。 よく見ると、タラップから色白の女性が降りて来た。 その女性は真っ白いドレスに、ピンクの羽帽子という派手な出で立ちだった。 彼女の名はマルガレーテ。 我がカリバーン帝国に敵対するグングニル共和国の地方星系領主のご令嬢だった。 我が国で言えば、侯爵か辺境伯相当の有力者の御息女である。 元有力者と言ったほうが良いだろうか。 彼女の父親は、政敵に嵌められて失脚したらしい。 かの国は民主制と聞いているが、やはりいろいろとあるのだろう。 彼女は政敵から逃げおおせ、この帝国の辺境である衛星アトラスに不時着したとのことだった。 政治的亡命者は手厚く受け入れるのが、我がカリバーン帝国の方針だった。 よって、失礼が無いように整列して出迎えた。「出迎えご苦労です」「はっ」 敬礼し、急ごしらえの応接間に案内した。 クリームヒルトさんはお茶を出したあと、私の横にタヌキ軍曹殿と共に控える。「……では、帝国本国に連絡致しますので、こちらでお待ちいただけますか?」「それは、……。と、とても困ります……」 少し怒った後に、なんだか恥ずかしそうに俯かれてしまった。「え?」「帝国の力なんて借りたくありませんわ! 私の力でお父様の敵を討ちたいんです。どうか協力してください」 涙目で頼まれる。が、私は一介の士官なのだが……。なんともしようがない。「そういわれましても……」「……」「……」「…………このっ」「ぇ?」「……この私の操を貴方に差し上げても良くてよ!?」……ぇ!? 突然のビックリ発言にクリームヒルトさんの視線が痛い。差し上げられたとしても、なにもする力は全くないのだが……。無意味に敵が増えそうでとても困る。 ……けど、少しうれしい、一回言われてみたかった。 ……。「この乙女の覚悟が受け入れられないのですか!? 蛮王ブルー様!」 ……そ、それはお隣の惑星の王様ですよ!?「ぇ?」 シマッタと顔を赤らめるマルガレーテ嬢。人違いだ。いやギガースとブタの間違いか……。そもそも蛮王様がブタとか知っているのかな。 ……その後、丁重にお見送りした。☆★☆★☆ その後、三日ほど皆で町造りをしていると。 再び例の船が来た。見覚えがある。マルガレーテ嬢の宇宙船だ
last updateLast Updated : 2026-05-08
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第14話……サーベイ商会船団

――レーベン宙域。「艦長! レーダーに巨大質量捕捉!」 中型商船6隻を護衛する重巡洋艦ハンブルクの艦橋にて、オペレーターが叫ぶ。「小惑星か? 方位は?」「左前方より急速接近中。金属反応はありますが、シールド反応はありません」 艦長の男性は、額の汗をぬぐい一瞬思案した後、断を下す。「やむを得ん、主砲にて迎撃せよ!」「待ってください、艦長!」 副官らしき女性が、艦長を制止する。「ここは中立宇宙空間ですよ!? 相手は重力シールドも張っていませんし……」「ではどうせよというのか? ぶつかってしまうぞ!?」 ここレーベン宙域は、カリバーン帝国とグングニル共和国との緩衝地帯で、中立協定がなされた宇宙空間だった。中立協定区域においては、シールドを張っていない相手に対して先制攻撃を行ってはいけない決まりがあった。もし金属体が有人船であったなら攻撃はできない。  ハンブルクの艦長は髭をさすりながら再び思案し、つむっていた眼を見開いた。「かまわん破壊せよ、証拠を残さねば問題になるまい! 跡形も残すなよ」「了解! 一番砲塔、二番砲塔、自動偏差射撃開始!」 輸送艦六隻を護衛する重巡洋艦ハンブルクは、未知の金属体に次々に主砲塔からレーザービーム砲を浴びせた。 未知の金属体にレーザービームが次々に命中し、金属体表面が衝撃で引き裂かれ、熱で融解し蒸発していった。 ……が、しかし、その金属体のすべてが宇宙の藻屑に至る前に、重巡洋艦ハンブルクの左舷前方に突き刺さった。 凄まじい衝撃が走り、ハンブルクは電子戦装備やシールド発生装置が故障する大損害を受けた。 その後、どこからともなく大量のミサイル群が飛来し、ハンブルクと輸送船6隻は大破炎上した。――その6時間後。 グングニル共和国国境警備艇が駆け付けたころには、輸送船ごと強奪された後だった。☆★☆★☆「上手く行ったポコね~♪」「流石は旦那様~♪」 皆が褒めてくれる。 ……というか少し違うな。二人とも鹵獲の輸送船を美味しそうに眺めていた。 私はお愛想だけかと、少し拗ねる。 今回の作戦では、我が衛星アトラスで大量に産出されるミスリル粗鋼をハンニバルの前部に大量にくっつけていた。もう前が見えないくらいに。 もともとハンニバルの筐体は頑丈だったこともあり、計算上は重力シールドなしで相手の砲撃に耐えら
last updateLast Updated : 2026-05-09
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第15話……ゲームの世界も水不足!?

 日差しがまぶしい。 もう暦は秋だが、残暑が酷い。 冷蔵庫を開け、リンゴを齧る。 ……酸っぱい。 現実の私には、リンゴを見る眼は無い様で、少し納得したように自嘲した。 最近気づいたのだが、現実時間に比べてゲーム世界の時間の進みが遅くなっていた。兄に問い合わせると、『沢山遊べていいだろ? まぁ、そんな楽な仕事はないってことよ!』と笑われてしまった。――ゲームを始めて三か月。 カリバーン歴849年7月。 皆でワイワイと小惑星を破壊する。もうカリバーン帝国の土建屋さんに名前を覚えられ、急ぎの場合は報酬割増しの仕事の指名まで頂けるようになった。 たまにクラン仲間のバニラ大尉に誘われて宇宙海賊退治もやる。でも、一人で遊んでいる方が好きだな、と思う。現実には一人ではないのだが……。 NPCであろうと思われる、クリームヒルトさんやタヌキ軍曹、マルガレータたちと遊んでいる方が良い。同級生とはなれ、一人砂場で遊んでいた過去の自分を思い出す。 何はともあれ、衛星アトラスは活気を呈していた。 大規模生産という訳ではないが、ミスリル鉱山からの鉱石精錬を経て、精錬鋼を惑星フィリップスの中心都市パンゲア市へ輸出していた。 その為、いくらでも労働者は必要だったし、その労働者を相手に商売する者も惑星リーリヤから大量に流入していた。 住宅プラントも商業プラントも、工業プラントも設備すればするだけ住人でいっぱいになった。あ……ブタ族が多いけれども。 町造りのゲームをやったことがあるが、それ以上に急激に住人集まった。 皆で計画し、道路を作り、駅を作り線路も伸ばした。都市部中心は大きなドーム状のシールドで覆った。 マルガレーテ嬢は地上でチマチマするのが嫌みたいで毎日海賊を追い回しているけど。 ……そんな平和な時間が過ぎていた。 が……、ある日。「電力が足らないポコォォォ!」「水も足りませんわ! どうしましょう?」 我が幕僚たちから、エネルギー不足を通達された。 いわゆる生活インフラ不足である。 ……ああ、急に人が増えすぎか!? 停電や水不足は、生活上大変である……。 私が所属するクランの長、シェリオ氏が推進するのはダイソン球。 我々の世界で言う太陽を、丸々ソーラー発電パネルで囲う壮大な計画である。 建設費は膨大だが、効率は良い。 これを惑星リーリ
last updateLast Updated : 2026-05-10
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第16話……停戦崩壊

――カリバーン歴849年8月。 帝国の安泰は、一瞬の出来事によって脆くも浸食された。「こちら国境警備艇564号、リヴァイアサン要塞司令部応答願います」 カリバーン帝国の主星系アルバトロスへの最後のワープポイントに、大宇宙要塞リヴァイアサンは構築されていた。 この要塞は一辺80キロメートルの正八面体の半人口天体であり、超高度ミスリルの複層装甲と大出力の軌道砲台などの武装をもってこの宙域を防衛する。 さらに、この要塞の重力圏には、機動防衛衛星や迎撃用プラント等を80個余り備えていた。 平時には宇宙商船団の一大休息地でもあり、それをもてなす大小歓楽街も20程ある。警備保安のみならず検疫所や税関も備えた一大宇宙港であり、帝国最大の大要塞であった。 グングニル共和国との100年の戦争の間、ずっと帝国主星系アルバトロスを守ってきた。また、共和国への反攻作戦時には兵站システムと後方司令システムを担い、帝国の戦線維持に尽力。四年前の休戦協定の調印式もこの要塞リヴァイアサンで行われていた。 まさに精神的にも帝国の護りの柱石であり、礎であった。「こちら要塞司令部。どうぞ」「星系外縁に、グングニル共和国の艦影多数。星間航行戦闘艦104隻以上」「なんだと!?」 要塞リヴァイアサンは驚愕する。この要塞に駐留する星間航行戦闘艦は一個艦隊の16隻だった。他にも空間跳躍できない補助艦艇も多数配備されていたが、圧倒的な戦力差だった。「主星系アルバトロスの総司令部に連絡しろ! 非常事態だ!」 要塞防衛司令官は叫び、その幕僚たちも慌ただしく配備についた。 防衛用要撃機にスクランブルがかかる。 非当直戦闘員もサイレンでたたき起こされた。 カリバーン帝国とグングニル共和国は、4年前より停戦ラインを定め休戦している。しかし、その休戦ラインを共和国の大艦隊が無断で越えてきたのだ。「警告スル。コチラハ、カリバーン帝国国境警備隊。グングニル共和国艦艇停船セヨ!」――要塞リヴァイアサン司令部に緊張が走る。 尚も、グングニル共和国艦隊は速度を緩めない。「共和国艦隊、第8惑星軌道を突破。最終防衛ラインに侵入してきます」「くりかえし警告を続けろ。こちら側からは撃つなよ」 要塞防衛司令部は大慌てだった。駐留艦隊が迎撃のために次々に緊急発進する。 要塞リヴァイアサンの各砲台は軌
last updateLast Updated : 2026-05-10
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第17話……食糧危機と金

――カリバーン帝国大敗、リヴァイアサン大要塞陥落。 大きな見出しのニューステロップが流れる。 続いて、帝国に味方していた地方有力者が次々と独立宣言を行うのが報道された。グングニル共和国との戦いに帝国が負けた場合に備え、共和国からの報復を回避するためである。「節操がないなぁ……」 私はこの世界のテレビを見ながら、そう呟いた。 確かに敗戦は一大事なのだろうが、ゲームの世界なのか、私にはイマイチ実感がわかない。 しかし……強きに従い、弱きをくじく、か。 嬉々として民衆に手を振り、帝国を見捨てる地方領主たちに辟易した。「皆、支配星系の民がおりますから、しかたありませんわ」「なるほどねぇ……」 クリームヒルトさんに言われても、イマイチピンとこない。自分が凡庸たる所以なのだろう。その後も、テレビ番組は帝国の惨敗ばかりを告げていた。『……続いて、今日の経済です』 ほぉ、この世界も経済番組があるのか。支店長に毎晩見ておけとかよく言われたな……。「……は?」 経済情報番組の内容に目を疑った。 食料や資材、燃料が40%以上も値上がりを見せているのだ。たった一日で。「戦争に負けそうですから……ね」「逆転して勝つポコ!」 よく支店に来ていた銀行マンの言葉を思い出す。『信用の無い国の通貨は下落する』だ。 この世界の場合、敗戦で信用力が弱くなった帝国ドルの下落に対して物価が上がるという訳だ。きっと逆転するだろうと思うタヌキ軍曹のような人は少数派だ。 更に、下がるモノはより多く売られ、上がるモノはより多く買われるため、物価は更に上昇する気配を見せていた。☆★☆★☆「大変ポコ! これを見るポコ」「どした?」 テレビを見ながら皆でお昼を食べた後。部屋で歯を磨いているとタヌキ軍曹殿が慌ててやってきた。「コレを見るポコ」「なになに?」――御社の鉱山が魅力的なので、是非わが社と取引してください……!? 物価上昇にともなう資源価格高騰を予感した商人からの買い付けの申し出だった。「素敵ですニャ~♪」 いきなり部屋に入ってきたマルガレータ嬢に抱き付かれる。 彼女の両目は既に『$』マークだ。 『そうだった!』と思い出す。  ……彼女はお金にとても目がないのだ。 モテたと勘違いをすると、とても危ない。 ふかふかした尻尾が名残惜しいが、離れてもら
last updateLast Updated : 2026-05-10
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第18話……奇襲!レーベル泊地

「第二エレベータ雷撃機搬送急げ!」 整備員が甲板に現れた雷撃機に、四人がかりで大型ミサイルを据え付ける。「艦上滑走路及び発進進路オールグリーン」「カタパルト電磁推力チャージ一番二番オン」 航宙母艦上の滑走路に青色の誘導灯が灯り、誘導オペレーターが信号を送る。「艦載機発進せよ!」「了解! 第一雷撃隊順次発進!」 胴体に大きな対艦ミサイルを抱いた雷撃機が、電磁カタパルトによって弾きだされた瞬間、アフターバーナーを点火し次々に虚空の彼方へ消えてゆく。「第三エレベータ、強襲爆撃機準備急げ!」「続いて、制宙戦闘機、電磁カタパルトにセット」 帝国軍航宙母艦バロンの艦橋にて、サンタクロースを思わせる風貌のカールハインツ提督は、発進した艦載機攻撃隊を、目を細めて見送っていた。 カリバーン帝国防衛の要、大要塞リヴァイアサンを共和国軍に奪取された帝国軍は、主星系アルバトロス外縁にまで攻め込まれる。しかし帝国軍は廃棄寸前の退役艦までも繰り出し、防衛に徹した。 特に皇帝近衛部隊クー・フーリン艦隊は防衛戦において獅子奮迅の働きを見せていた。 しかし、防衛だけではじり貧に陥ると判断したカールハインツ中将は、帝国軍総司令部に艦載機による敵兵站への攻撃を進言。しかし総司令部は航宙母艦を護衛する艦船の抽出は困難と判断。 カールハインツは迷ったが、麾下の航宙母艦二隻のみで敵泊地へ独断で殴り込みをかけることにした。 護衛艦隊無しで航宙母艦を運用することは、一般的な運用法に反していた。航宙母艦は敵の攻撃に対してとてもぜい弱だからである。 敵前線を迂回したカールハインツ艦隊は巧く宇宙磁場潮流に紛れ込んだため、共和国軍のレーダーに探知されることなく後方のレーベル泊地の攻撃に成功した。【戦果】星間航行可能大型輸送船……撃沈4大破6星間航行可能中型輸送船……撃沈16中破2各種その他輸送船……撃沈6防衛艦……大破1駆逐艦……中破1レーベル泊地アダマンタイト貯蔵庫……破壊6 ……という前代未聞の戦果を叩き出し、凱旋したカールハインツは帝国軍の英雄として称えられ、階級も大将へと昇進した。 艦載機による攻撃に際し、共和国軍の前線への輸送物資が次々と誘爆し戦果が拡大したのは幸運だったが、彼の勇気への評価が下がるわけでは決してなかった。☆★☆★☆「ほらぁ~逆転ぽこぉ~♪
last updateLast Updated : 2026-05-10
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第19話……補給作戦

「副長! そろそろ星系外縁だからエンジン絞ってね」「はい! ヴェロヴェマ艦長!」 操艦をクリームヒルトさんにお願いして、双眼鏡を片手に【羅針眼】で敵の索敵機を探すことに専念する。 敵に接近がばれれば、優位な体制で迎撃される恐れがあったためだ。 第87要塞はマイドリンク星系の小型要塞である。この星系はグングニル共和国の勢力圏に近いが、辺境星系であり、両軍ともさほど重要視していなかった。「第852ブロック X座標269 Y座標536 Z座標288に一機」「了解! 同座標へ砲撃開始ポコ!」 私達は次々に小型偵察艦を破壊していった。 レールガンはレーザービーム砲と違い、威力は低いが可視光線がほぼ出ない。 よって先に見つけることが出来れば、哨戒用の小型艦であれば一方的に沈めることができた。 隠蔽効果を狙い、岩石などに紛れながら小型偵察艦を潰しつつ、作戦目標の手前まで進んだ。 帝国第87要塞は周辺の居住惑星を護るための防衛型要塞であった。 直径5kmの岩石をくり抜いた中に防御施設が建設してある。要塞主砲は超γ線収束砲。収束されたγ線は迫りくる敵に対し高い破壊力を誇った。 対して、この要塞を攻撃する共和国軍艦隊の主力は、核融合炉型の重巡洋艦2隻、同型軽巡洋艦4隻、地上軍揚陸艦4隻を投入し、この要塞を包囲していた。 エルゴエンジンを積んでいないこれらの船は旧型であったため、要塞を強引に力攻め出来なかったのだ。☆★☆★☆「司令! 最後の偵察艦からも音信が途絶えました。敵かと思われます」「うーむ、レーダーにも映らんし、エネルギー反応もないが、やはり敵だろうな」「最後の偵察艦が消息を絶ったのはどこか?」「はっ、この宙域になります。司令!」「よし、そこへ全艦集結させろ! 兵力分散の愚を犯すな!」「了解」――二時間後。小惑星地帯。「敵装甲型戦艦発見! たった一隻です!」「おお! いたか! 全艦撃ちまくれ!」「打ち方、順次始め!」 六隻にもなる砲列が一斉に戦火を開いた。 レーザービームのエネルギーが唸りを上げる。  しかし、距離がかなりあり、命中弾がなかなか出なかった。――砲戦開始30分後。「敵が逃げます!」「逃がすな! 追え!」 目標の装甲戦艦は、小惑星の岩陰に入ったり、煙幕を焚いたりして逃げ回った。 共和国軍の艦隊は長い
last updateLast Updated : 2026-05-10
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第20話……帝国の歴史とレストラン

 人型生命体の都、グングニル共和国は繁栄し、ユリウース星系に莫大な人口を抱えていた。その数350億。 その凄まじい勢いで増える人口を養う大地を常に求めていた。 しかし、光の速度を超えることが出来ず、星系内のみに活動が限られていた。 新宇宙暦元年。コバルト鉱石探索に訪れていたエルゴ・アダマンタイト博士はユリウース星系第八惑星で未知の遺跡を発掘する。後日アヴァロン超文明の遺産と命名されたインフレーション機関であった。 インフレーション機関は次元跳躍を可能とし、人型生命体の文明版図は光の速度の壁を突破することになる。 共和国の版図は加速度的に拡がり続け、瞬く間に他の星系を支配することになった。 更に進出先の星系の知的生命体に戦争を仕掛け、次々に従属支配していった。 共和国政権は従属星系に対し、不足しがちな食料生産を単純強制。星系レベルで産業構造のゆがみが生じ、貧富の格差は拡大した。 新宇宙暦166年。 共和国は星系国家群と呼べるほどの版図を支配するに至った。が、穀倉地帯に設定されていた惑星アルトースが、中性子星の爆発に巻き込まれ滅びてしまう。 これにより、共和国内は各派閥に別れ、食料を奪い合う内戦が始まった。 しかし、この時点の消費カロリーを賄う食料の生産は確保されており、投機目的としての食料争奪戦である。 新宇宙暦172年。 原理資本主義の延長たるこの戦いは拡大し、共和国全土に熱核戦争を引き起こした。共和国は文明資産の実に99.86%を焼失し、その支配地は死の大地と化した。 しかし、その後も共和国ユリウース星系中央政府は従属星系に経済的圧力をかけ、食料を徴発し続けた。そのため従属星系では飢饉が発生。家族6人の夕食が小さなジャガイモ一つを分け合う事態にまで悪化した。 新宇宙暦192年。 ついに共和国の地方星系アルバトロスで反乱勃発。アルバトロス星系の反乱軍リーダーである青年カリバーンは各地で転戦。この3年後にカリバーン自身は戦死。 新宇宙暦208年。惑星リヴァイアサン成層圏の戦いにて、反乱軍は共和国軍主力艦隊を撃破。ここに共和国政府は反乱軍と講和せざるを得なくなり、すべての市民に平等に資産の分配を是とするとするカリバーン自由連邦が誕生。同時に各地方有力星系が多数、共和国政権から独立した。 新宇宙暦308年。 勢力を拡大し続けたカリバ
last updateLast Updated : 2026-05-10
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