All Chapters of 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…。外伝!: Chapter 11 - Chapter 20

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第三十三話⑥ ※※※(奏輔視点)

声を潜めて、ジッと様子を窺う。呼吸音すら今は煩わしい。 耳を澄ますと、足音が複数聞こえてくる。 誰かがいる? ここを探り当てた? 探り当てれるとしたら…あいつらしかいない。 だとしても、こんだけ建物が揺れるって事は……誰かと争ってる? 誰か?と考えるまでもない。 透馬達が争うとしたら佳織さん以外いない。 佳織さんを狙う理由は一つ―――姫さんの奪還、だ。 姫さんとやっとここまで来たんだ。 やっと姫さんを助ける道が見えて来た所なんや。邪魔されて堪るかっ。 姫さんは俺と一緒に生きたいと言ってくれたんや。 佳織さんには悪いが、頑張って貰わなあかん…。 あいつらかて、佳織さんの命までは奪わんやろうし…。 俺は争い音が止むまで、姫さんを抱えジッと息を潜めていた。 暫くして、争いの音は消えた。 佳織さんがあいつらに負ける筈はない。 ならもう少ししたら、外に出るか。 念の為に姫さんと会話をして置こう。 「姫さん」 (奏輔、お兄ちゃん……) 「姫さん?どうした?」 (ママ、が、いるの…) 「え?」 (目の前に、ママが、いるの…。ごめんなさい、って、ごめんねって、謝ってるの…) 「姫さん?意味が解らん。ちょっと落ち着け」 (どう言う事?どうしてママが謝るの?どうして?守れなかったって、どう言う意味?ママ?何処に行くの?どうして、私をそっちに引っ張るの?止めてっ) 「姫さんっ!?」 思わず出た声に、外の足音が反応した。 こちらへ足音が近づいてくる。 失敗した。声なんて出したら気付いてくれと言っている様なもんだ。 とは言え、姫さんと会話するには声を出すしかない。 ガチャッとドアノブが動き、ドアが開いた。 そこに立っていたのは俺の予想通りの人間で。 「やっと見つけたぞ、奏輔」 「佳織さんが匿ってるって解ってたけど、佳織さんがほんっと強くてさー。手こずっちゃったー」 手こずる…? 「ちょい待ちぃや…?透馬、大地。佳織さんをどうしたんや?」 二人は静かに俺から視線を逸らした。 言われずともそれが答えだった。 「……殺したんか?」 やはり二人は答えない。無言こそ答えだと言うのに…。 「お前ら、何考えてるんやっ!?」 つい声を荒げてしまう。二人がそんな事するとは思いたくない。だが俺の声に反応した二人の言葉は俺が望
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第三十三話⑦ ※※※(奏輔視点)

姫さんを失って、どれくらいの月日が経過しただろうか…。 実家に戻って来たけれど、何もする気になれず、ただ毎日を過ごすのみの日々が続いて。 けれど、それすらも、もうどうでも良かった。守れなかった。今の俺にあるのは後悔のみだ。 助けると、諦めないと約束した。 なのに、俺は守る事が出来なかった。 姫さん自身も、そして姫さんの存在も。 姫さんはあの時、透馬や大地の【姫さんの記憶】を消したらしい。 目を覚ました時には、姫さんの存在も佳織さんの存在も全て覚えていなかった。 これは二人に限った事じゃない。二人に関わった人間全てその記憶を失っていた。 誰も、白鳥家の兄弟達ですら覚えてはいなかった。それでも、と俺は一縷の望みをかけて鴇に会いにも行った。 だが、鴇は……死んでいた。詳しい話は誰も聞いていないのか、それとも興味がなくなったのか解らないが、葵と棗に聞いた話だと、ある男をずっと探していたと言っていた。 その男ってのは俺の予想だと、姫さんを襲ったあの男だと踏んでいる。鴇が、あの鴇が姫さんを傷つけられて放置する筈がない。絶対に。 鴇は…鴇だけは、姫さんの記憶を持っていてくれると、どこかでそう思っていた。だから、鴇には全力で謝るつもりでいた。 (助けられなかった。殴りたいだけ殴れ、て…言うつもりやった。せやのに…死んでしもうてたら、それすらも出来ん。鴇、お前ほんま狡いで…) 俺は、失うものが多過ぎた。 芯の強さを持った憧れの女性も、何があっても繋がっていると思っていた友達も、そして、ずっとずっと大事にしたいと思っていた宝物の様な愛おしい姫も…。 (こんな…こんなん地獄や…生きてる事が辛すぎるでっ) 涙なんてもう枯れ果てた。 誰の慰めも発破も耳に入る事もない。 人形の様に、日々を過ごす。 朝、体を起こして、口に入れれるものを適当に入れて、仕事をしに外へ出て、やるべき仕事をして帰宅する。昼休憩なんて取る必要を感じない。味のしない夕飯を食べて、風呂に入って寝る。 透馬と大地がたまに様子を見に来ていた気がするが、それももう俺には何の励ましにもなりはしない。 もそりと自宅のベッドで体を起こして、スーツに着替える。ネクタイを巻きつけて鞄を持ち外へと向かう。 「ちょっ、奏輔っ。あんた何処行くんっ!?」 呼ばれて、顔を横向けた。 「そのかっこ
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第三十三話⑧ ※※※(奏輔視点)

がっつり睡眠をとって、意識して食事をし栄養をしっかり摂取して、ようやく頭が冴えて来た。 お姉達の言う通りだ。 俺はまだ全力を出してない。やれる事をやりつくしていない。 調べる事はまだある。 まずは透馬達が操られていたのは何故なのか。 スキルの複製を使って複製した資料を読み漁る。 何処かに見逃した事はないか?違う解釈をすべき所はないか? 小さな事も今は見逃してはいけない。逆にどんな大きい事も今それを扱う必要があるか見極める。 今はもうパソコンで情報を盗まれる事を考える必要はない。何故なら鴇があいつを倒してくれているだろうからだ。姫さんの為に命を賭けた鴇が倒さない筈がない。 だから俺は安心してパソコンにデータを入力して、情報を整理していく。 情報を再構築している間に、お姉達が飯を運んでくれたり、何度かぶっ倒れて怒られもしたが、今の俺はやる気に溢れていたから気にならなかった。 そして情報を集めてどれくらいたっただろうか? やっと、俺は一つの答えを導きだした。 導き出したモノと言うのは…『力』の事だ。 姫さんが生きていた時、俺は仮説を立てていた。『神様』から力を借りてスキルを使用する事が出来ていると。そう仮説を立てた。そして俺達を襲ったあの男はその力を奪っているとも。 それを更に細分化してみたのだ。 まず『神様』は一人だ。ただし、この神様には複数の眷属がいる。 俺が思うに、それが佳織さんとお姫さん、そして鴇だ。誠さんも同等の強さを有しているが、恐らくそれは神様と力の質が違うのだろう。それはそれで凄い話だが今は掘り下げずに置く。 俺達がスキルを使えるのは、その神様が少しだけ力を分けてくれているに過ぎない。元々の基礎値が違うのだと思う。 簡単に表すとこうか?神様=誠 能力は違えど、力や基本的な素地が同等。 神様>佳織さん、お姫さん、鴇 基本的な素地が同じだが、力は神様より劣る。 神様→透馬、大地、俺 あくまでも一般人だが、神様の恩恵を受け力を使う事が出来る。 神様⇒謎の男 神様の力を奪い取り使っている。と言う所か。 以上の事を踏まえると、謎の男の力、要するに透馬達を操った何かが姫さん達に効かなかった理由が解る。 そこで一つ疑問を持つ事になるのが、姫さんにかけられた【凍結】のスキルだ。 何故姫さんに効いたのか。 最初は力を
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第三十三話⑨ ※※※(奏輔視点)

部屋に帰りついて、俺は即パソコンに入っていたデータを漁る。 自分が整理しているデータだ。そんな時間がかかることなく目的のデータは見つかった。 (これさえあれば姫さんとまた会えるっ) やっぱり誠さんに会いに行って正解だった。 やっとだ。やっと見つけた。姫さんと会える手段を。 あまりの喜びに泣きそうになるが、まだ今は泣く時じゃない。 この方法で会えたとしても、絶対に俺はまたあの男と対峙する事になる。 その時にはもう負ける訳にはいかないんや。絶対に姫さんを守らなあかん。失敗は絶対出来ん。 アイツを、鴇にも佳織さんにも、そして姫さんにも、倒させる訳にはいかない。悪縁は繋げるのではなく断ち切らねばならない。 と言うより、これ以上あの男に俺の大事な人達を狂わされたくない。守る為にも断ち切るのだ。 しかし、問題はその方法だ。 何か、良い手段はないだろうか。 データをもう一度見返す。 ………特に、これと言った情報は……うん?そう言えば一つ、解らない記号の羅列が書かれてた紙について語っていた記述があったな。 何年前の記事だったか。スキルや神様に関係あるかと思ってその記事を保存しておいたが、世界の何処の言葉でもなく後回しにしたのがあったんだよな。 引っ張りだしたデータには相変わらず意味不明の記号が並んでいる。 他に目ぼしい情報もない。けれど、短さといい、最初の書きだし方といい、この紙の折り方といい手紙っぽいんよな。…それこそ他に目ぼしい情報がない訳やし、試しに解読してみるか。 解読と言えば、まず記号の意味を辿る所からだな。 その日から、俺はまたパソコンと睨めっこの日々を開始した。 まずは文字を分類化して、規則性を探し出す。 大体の分別が終了したら、今度はこの文字の読み方を探す。 解読に没頭して恐らく数日が経過して…一旦パソコンから視線を外した。色々試しては見たが、今一掴めない。 行き詰まってしまったらしい。 「…………奏輔様。ご飯」 「ん。おおきに」 丁度良く空良が食事を持って来てくれたので、立ち上がり肩を鳴らしながら体を動かす。 「…………意識がこっちに、戻って来た?」 「ん?何の話や?」 一先ず休憩しようとベッドに座ると、目の前のテーブルにトレイを置いた空良が俺にお茶を差し出しつつ、言った。 「………奏輔様。集中するとこっ
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第三十三話⑩ ※※※(先代金山視点)

「金山さん。貴方にしか出来ない俺の唯一の願い。それは…俺を殺して下さい。お願いしますっ」 言葉を失うと言うのはこんな時に使う言葉だったのだろうか。これまで生きてきて、ここまで度を超した願いを言われたのは初めてだ。 そんな依頼をした彼を私が初めて見たのは、鴇坊ちゃまの様子を見て来いと良子様に指示された時だった。 あれはまだ彼らが小学生の時だったか。 いつも少し斜に構えていた鴇坊ちゃまが楽しそうに遊んでいた姿を見て、良いご学友が出来たのだと喜んだものだった。 その鴇坊ちゃまや佳織奥様、そして美鈴お嬢様が亡くなったと予想外の事を聞かされたばかりか、その上鴇坊ちゃまのご学友である嵯峨子様を私が殺せと。 「……嵯峨子様。それは…」 出来かねます、と。そう答えようとした。だが、嵯峨子様は立ち上がり、床に膝を付いて深く深く頭を下げた。 「頼む、金山さんっ。もう、アンタしかいないんやっ。俺はアンタに殺されないとあかんねやっ」 「ど、土下座などっ、私の様な者になさらないで下さいっ」 慌てて同じく床に膝をつく。 そんな私の腕をグッと掴み嵯峨子様は私を見据えた。 「…金山さん。貴方がここにいる理由を俺は知っています。姫さんが…美鈴ちゃんが幼い頃、一緒にここの里へ来た時がありましたね?その時ホテルで姫さんが感じた恐怖感。あれは、金山さん、貴方ですね?」 「ッ…………」 「そんな目をしないでください。知っていると言ったでしょう?」 自分の罪を明らかにされて、きっと情けない顔をしていたのでしょう。 そんな私を見て、嵯峨子様はゆっくりとその手を離して、私へと向き合いました。 「…貴方には、自分ではない、けれど間違いなく自分だと思ってしまう、理解出来ない感情があるはずです」 「何故、それを…」 「………説明する事は出来ます。ただ、それを説明する事で、貴方の努力が無に帰してしまう。それは【金山さん】の為にならない。だから言いません」 「………全てを知っていて尚、貴方が私に求める事が」 「俺を殺す事です」 彼の瞳は迷いのない目をしていた。 嵯峨子様の死にどのような意味があるのか。そして私が殺す事になんの意味があるのか。 私には解らない。だが、目の前の彼は、それを切に願っている。ならば、私が出来る事は…。 「解りました。貴方を殺しましょう」 「金山さ
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第三十三話⑪ ※※※(奏輔視点)

「……け…ぃちゃ…」 遠くから声がする。 「…すけおにぃちゃん」 姫さんの声。 賭け、だった…。 姫さんを狙ってたアイツの力を逆に利用するには金山さんに頼むしかなかった。 けれど、真っ暗な闇しかない。 これはやっぱり失敗したのだろうか。 ……けどそれならそれで姫さんに会える。ならそれでも…と、そう思ってはみたものの…。 あかん、ね。 こんな状況で姫さんに会ったら、きっと怒られる。 俺は俺が出来る事を全てやりきらないと。それこそお姉達にもしばかれる。 俺は……。「…奏輔お兄ちゃんっ!」遠かった声が直ぐ近くで聞こえてハッと目を覚ました。 「立ったまま寝るなんて、奏輔お兄ちゃん。器用だね」 ふふふと笑う姫さんの顔が目の前にあって。ずっとずっと求めていた姫さんの笑顔があって。 思わず手を伸ばした。 「ふみ?」 頭に触れると、姫さんは首を傾げる。 頬に触れると、温かくて…俺が毎日触れていた冷たさとは違うくて。 「ふみみみ?」 姫さんだ…。 目の前の姫さんが、間違いなく姫さんで…。 「奏輔お兄ちゃん。大丈夫?」 姫さんの手が俺の頬に触れて、何かを拭う。姫さんの手が指が濡れている事で、自分が泣いている事に気付いた。 「珍しいね。奏輔お兄ちゃんが泣くなんて。透馬お兄ちゃんや大地お兄ちゃんは…あれ?そもそもお兄ちゃん達が泣く事ってまずないね。ふふふ」 「姫さん…」 「なぁに?奏輔お兄ちゃん」 もしかして夢か幻の可能性もある。 「俺を叩いてくれへん?」 「おらよっ」 げしっ。 「痛っ!?」 誰やっ!?俺の脛蹴ったんはっ!? 振り返るとそこには透馬の姿があった。 「もう一発いっとくー?」 大地の姿もある。 「いらんわ」 きっぱりと断ってから、俺はもう一度姫さんと向き合う。 「ふみ?」 『何も解らない』姫さんは首を傾げている。 成功、した? さっき透馬に蹴られた時、ちゃんと痛みを感じた。 夢ではないと痛みは知らせる。けれど、実感がわかない。 「姫さん」 「なぁに?奏輔お兄ちゃん」 「悪ぃ。…抱き、締めても、ええやろか?」 情けないことに、声が震えていた。 姫さんが生きて目の前にいる事に。 自分の命を賭けた最後の勝負が成功した事に。 実感が欲しい。 姫さんが確かに生きてるって実感が欲しい
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第三十三話⑫ ※※※(奏輔視点)

ドォンッドォンッと地響きがして地面が揺れる。砂や石が弾け飛び、地面が抉れた。「ちっ、ちょこまかとっ」「それはこっちのセリフやっ!」ちょこまかと逃げ回っては、俺達の攻撃を避けて、隙あらば姫さんに近寄ろうとする。どこまでもこいつの狙いは姫さんって事かと、呆れと怒りで攻撃の威力が増した。「『火炎弾(ファイヤーボール)』」RPG鉄板の魔法だ。ちっと舌打ちしたそいつは難無く回避する。だが回避した先には待ち構えていた大地がいて、そこからまた一撃が繰り広げられた。ボォンッ!!都貴の周囲が暴発した。俺達は一気に距離を取る。その隙を狙われる訳にはいかないと、瞬間移動で姫さんの前に戻り、案の定姫さんを狙ってきた奴に向かって氷の刃を放つ。「そ、奏輔お兄ちゃんっ。私も戦、ッ!?」戦うなんて言わせない。姫さんを止める為に、額にキスをすると……顔を真っ赤にして停止した。うん。これでいい。「大人しくしとって。俺からもう姫さんを奪わんといて」耳元で息を吹きかける様に囁いて、再び戦闘に戻る。姫さんにはもう傷一つつけさせないと誓ってはいるものの、姫さんはどうにも誰かが危なかったり、自分が何も出来ない状況にあるとどうしても動いてしまう質らしい。それはとても姫さんらしい美点だが、今はそれが姫さんの死に直結する事を俺は知っているから。多少強引でも動きを止めなければいけない。そして、もう一つ。さっさとこの戦いを終わらせなければいけない。次から次へと攻撃スキルを叩き込む。三人がかりで一斉に攻撃を仕掛けてはいるものの、どうにも致命傷に結びつかない。それ所か都貴の攻撃力が全然衰えないのは何でや?…大抵技を使い続けるとMPが減る筈だ。例えそれが神の力を奪っていたとしても、一度自分の力としているなら限界があるはずなんだ。まずは相手のMPを削ってみるか?その後、【能力解析(アナライズ)】のスキルを使って状況を把握しよう。その為にはまず、二人に渡した武器に【MP吸収】のスキル付加しなければならない。決まったからには即行動。透馬と大地の持っている剣にスキルを付加し、そして俺も【精神衰退】のスキルをアイツにぶつける。黒い球体の様な物が無数に現れて、触れた途端に精神力、MPが失われて行くスキルだ。「……ふっ」笑ってる?しかも、そいつにとっては何の影響もないの
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第三十三話⑬ ※※※

「うぐぐぐ…緊張するでござるぅぅぅ…」「ちょっと、コタ。そんなに緊張しないでよ。私までその緊張が移るじゃないっ」今日は愛奈と近江くん…うぅん、愛奈ももう近江になるんだから、虎太郎くん、かな?兎に角二人の結婚式。めでたい門出の日だっ。「二人共、おめでとう」私は二人を笑顔で祝福した。二人もまた笑顔で答えてくれる。正直この二人、ここまでが滅茶苦茶長かった。障害という障害は何もなかったと思うのだけど、二人の意思が中々互いが思うように固まらず…嫁、婿と呼び合ってた癖に…婚約から、正式に結婚するまでの長さたるや…思わず遠い目をしそうになるほどだ。二人の言い合いなど、周りから見ると犬も食わないあれだと言うのに。きゃんきゃんと言い合う二人を眺めていると、コンコンとノックが聞こえた。そして顔を覗かせたのは、「おかん?ここにおるんか?」可愛い可愛い私の愛息子だった。愛奈に会場に行くと告げて、いそいそと新婦の控室を出て息子と顔を合わせる為にしゃがみ込む。「んー。私の子は可愛いなぁ」スリスリと頬を擦り合わせると照れて笑うのが…もうっ、可愛いったらっ!結婚式に出る為におめかしをしてるから尚の事可愛い。そして何よりも、「お?やっぱりここにおったんか。美鈴ちゃん」「奏輔さん?」私の旦那様にそっくりだから、一層可愛いのである。珍しく髪をオールバックにして、スーツをびしっと着こなしているその姿は、誰よりも下手すると私よりも綺麗で、尚且つカッコいい。「?、どした?」「え?あ、うん。奏輔さんカッコいいなーって。えへへ」ちょっと照れくさくて息子を抱きしめて照れ隠しをすると、奏輔さんが盛大に息を吐きだして。「俺の嫁さんはいつまでも可愛いっ!」と言われ息子共々彼の腕に抱き込まれた。さっき自分も息子に関して同じ事を思ってたし、奏輔さんにも同じ事を思っていたから何も言えない。出来るのは逆に抱き付く事くらい?私の腕の中にいる息子とアイコンタクトして、いたずらっ子の顔をして二人で奏輔さんに抱き付いた。「おとん、大好きやでー」「私も大好きー」「………あかん。天国や。毎日が天国や…。あれ?俺、実はあの時死んでたんか?」奏輔さんが言う『あの時』の事は、奏輔さんが退院してから全て聞いた。正直、そこまでしてくれたのか?と、本当に命を賭けて戦ってくれたのか、と何度思
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外伝小話 奏輔編 とある恋人の話 

ガツンッ!! いきなり顔面を殴られた衝撃に脳が揺さぶられた。 「ちょっとっ!もっと丁寧に扱いなさいよっ!」 「あぁ?アンタも同じように殴ってやろうか?」 「やってごらんなさいよっ!アンタ程度のチンピラの殴りなんて痛くも痒くもないわっ!」 駄目だっ!これ以上煽ったら彼女も殴られるっ! 僕は慌てて彼女と男の間に割り込んで彼女を腕の中に抱き込んだ。 「ちょっ、離しっ」 「黙ってっ!これ以上は駄目だっ!君に怪我なんてさせられないっ!」 「……ッ」 彼女の手がそっと僕の頬に触れた。 それが痛そうで辛そうで。その表情が僕の心をも苦しめる。 「とにかく、大人しくしておけよっ。金さえ貰えば、お前達は直ぐに解放してやるっ」 …良かった。今の口調だと殺されることはなさそうだ。 彼女をきつく抱きしめ、僕達を誘拐した男達から視線を動かす事なく睨みつける。 犯人の男は僕達に向かって小馬鹿にした笑みを浮かべ、鼻で笑い部屋を出て行った。 男の姿視えなくなった事にホッと一息つく。 出て行った途端、腕の中の彼女はポケットからハンカチを取りだして、僕の口元を拭ってくれた。 気付かなかったけど口の中が切れてたみたいで、ハンカチには血の跡がついてしまった。 「すみません。ハンカチを汚してしまった」 「こんなのどうでもいいの。それより、ごめんなさい。私の所為で…」 「貴女の所為ではありませんよ。今回の誘拐は貴女の家を狙ったもの。悪いのは全て犯人達です」 「……ありがとう。庇ってくれて嬉しかったわ」 あぁ、微笑むその顔が見れただけで、僕は満たされる。 彼女を守る事が出来て良かった。 「…これからどうしましょうか」 「……どうもしなくても大丈夫よ」 「え?」 「…必ず助けに来てくれるわ。あの子が」 彼女が不敵に笑って、同時に外からガラスの割れる音が耳に届いた。 様々な声が聞こえて、バタバタと焦りを感じる足音が近づいて来て、ドアが開けられる。 さっき僕を殴った男だ。 青褪めた顔で僕達の側まで来て銃を突き付ける。 咄嗟に僕は彼女を庇うように立ったけれど、これは悪手だったかもしれない。 彼女だけでも遠くへ逃がせば良かった。 「へっ!これで形勢逆転だなっ!こいつらがどうなってもいいのかっ!?」 男が誰かに向かって叫んでいる。 一体誰に…? 男
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外伝第二章 御曹司ルート 第三十一話 無限ー御曹司編ー

※ このお話は本編である『乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…』の三十話から続くお話です。まだ本編をお読みで無い方はまずは本編からお楽しみください。「…となるから、ここは白鳥と業務提携を結びたいんだが」 「うんうん。お断りですっ!」 「お、おまえ…」 お茶会と言う名の重役会議中。 ホテルの会議室を借りて、私と樹先輩、それから猪塚先輩と優兎くんの四人で、もう一度言いますが会議中です。 「俺が相手だから取りあえず断ってるんじゃないだろうな?」 「美鈴ちゃんがそんな事する訳ないでしょう。樹先輩の企画書穴だらけですよ。むしろ樹先輩こそ、相手が美鈴ちゃんなら少し融通利いてくれると思ってるんじゃないですか?」 「うっ…そんな事は…」 「樹先輩。相変わらず企画書作るの下手くそですよね~。上に立つからって立場に甘んじてたからそうなるんですよ」 …うん。優兎くんの毒舌絶好調。 中学卒業してからこっち、毒舌レベルがどんどん上がっている気がする。 誰に似たんだろう?………もしかして、私か? 「あ、そうだ。美鈴ちゃん。今日、ここに向かってる途中で美味しそうなクレープ屋さんがあったから買って来たんだ。後で食べようね?」 「食べるっ!ありがとう、優兎くん。お礼に私がお茶淹れるね」 「うん。ありがとう」 「白鳥さんっ!ぼ、僕もご相伴に預かりたいんだけどっ!」 「あ、すみません。猪塚先輩。美鈴ちゃんの為にもご遠慮下さい」 「ず、ズりぃぞぉ、花島ぁ…しくしくしく」 猪塚先輩、相変わらずちょいちょい言葉がきつくなるなぁ。目つきも相変わらずだから結構怖いよね。 「お前ら。真面目に話し合えっての。美鈴も。何処が悪いのかはっきり言えよ。じゃないと解らん」 「え?はっきり言っていいんですか?」 え?言っちゃうよ?赤裸々に全てぶちまけちゃうよ? 「……オブラートを希望する」 挙手して言う樹先輩。潔いんだか、情けないんだか。 まぁ、これが樹先輩か。 それじゃあ、オブラートに包んで…。 「まず、この人員。こんな人数でこんな改革とか馬鹿としか言いようがないですね。次に」 「待て待て待てっ!全然オブラートに包んでないだろっ」 「えっ!?もっと包むのっ?じゃあもう言う事ないんだけどっ?」 わいわいがやがやと騒いでの会議。 これ
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