乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…。外伝!

乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…。外伝!

last update最後更新 : 2026-08-05
作者:  三木猫剛剛更新
語言: Japanese
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83章節
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故事簡介

現代

強いヒロイン

転移

賢い子ども

天才

モテモテ

逆ハーレム

転生

男性恐怖症

現代日本風乙女ゲーム『輝け青春☆エイト学園高等部』通称『エイト学園』の世界に転生してしまった佐藤美鈴。男性恐怖症を持ちながらも何とか家族や友達、先生や後輩達に支えて貰いながら成長し高校もいざ卒業となり、乙女ゲームの時間が終わると思った、その時母親からある真実を知らされる。 美鈴は一つの道を選択した。けれど、もしその時の選択肢が違ったならば…。 この外伝は、美鈴が選ばなかったIF(もしも)のストーリーと結末である。 ※この物語は本編の最終章第三十話の続きから、他の攻略対象キャラクターを美鈴が選択した場合のifストーリーとなっております。

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第 1 章

外伝第一章 御三家ルート 第三十一話 無限ー御三家編ー

夫の初恋の人である野村美希(のむら みき)が、鈴木紗良(すずき さら)に車で轢かれたと嘘をついた。

するとその翌日、夫の鈴木英樹(すずき ひでき)と息子二人は、紗良の弟、中川海斗(なかがわ かいと)を巨大な油釜の上に吊るし上げ、生きたまま揚げてやると脅してきた。

紗良は狂ったように駆け寄ったが、ボディーガードに力強く押さえつけられた。

「間違いを認めるか?」スーツをかっちりと着こなし、傍に立つ英樹は冷たい目をしていて、その声はまるで氷のように冷たかった。「もう美希を傷つけるような真似はしないよな?」

「私は轢いてなんかない!」紗良は泣きながらもがく。「英樹!海斗を放して!海斗はまだ18歳で、大学に受かったばかりなの!」

まだ5歳の鈴木真司(すずき しんじ)も腕を組み、冷たい顔で言った。「証拠はそろってるのに、まだ言い訳するの?」

4歳の浩平(すずき こうへい)も頷き、無邪気で残酷な口調で続ける。「ママ、海斗兄ちゃんのことがそんなに大事なら、美希さんを車で轢いたりしちゃだめだよ。美希さんは、僕たちの大事な宝物なんだから」

紗良の心臓がきゅっと締め付けられた。

美希が宝物……じゃあ、自分は?自分は一体、何だというのだろうか?

紗良は英樹を見つめる。長年の夫婦の情に免じて、海斗を許してくれることを願って。

しかし、英樹の冷ややかに紗良を見つめる眼差しは、まるで他人を見るかのようだった。

紗良はふと笑ったが、その目からは涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

そうだったのか……何年経っても、英樹が愛しているのは美希だけだったなんて。

思い出がナイフのように心を抉る。

紗良、英樹、そして美希。3人は幼なじみだった。

紗良はずっと英樹が好きだったが、英樹の目には美希しか映っていなかった。だから紗良は、黙って二人を応援し、英樹の告白の計画を手伝うことさえした。

しかし、英樹が告白するまさにその前日、美希が乗った飛行機が事故に遭い、美希は帰らぬ人となってしまったのだ。

それからというもの、英樹は毎日酒に溺れ、人が変わったように荒れていった。

紗良はそんな英樹のそばに寄り添いただ見守った。英樹が泥酔して意識をなくせば酔い覚ましの薬を飲まし、血を吐いた夜には、一睡もせずに看病した。

ある晩、ひどく酔った英樹は、紗良の手首を掴み、美希の名前を呟きながら、紗良をベッドに押し倒した。

本当は、英樹を突き放すことだってできた。

でも紗良は英樹を心の底から愛していた。だから、替え玉でもいいとさえ、思ってしまったのだ。

翌朝、目が覚めた英樹はシーツの血の跡を見て、長い間黙り込んだ。そして最後に、ぽつりと一言呟く。「責任は取るよ。結婚しよう」

そうして、二人は結婚したのだった。

結婚してから、紗良は必死で英樹に尽くした。

英樹は胃が悪かったので、毎朝早く起きて胃に優しい食べ物を作ったし、英樹が仕事で忙しい時に書類整理を手伝えるよう、必死で勉強した。夜、英樹が悪夢にうなされている時は、一睡もせずに寄り添った。

すると次第に、英樹の紗良を見る目が変わっていった。

英樹も紗良を好きになり始めたようだった。紗良の好きな味を覚えてくれるようになったし、生理の時には自ら温かい飲み物を用意してくれた。眠っている紗良の額に、そっとキスをすることもあった。

やがて、二人の間には真司と浩平が生まれた。

二人の子供は紗良にべったりだった。英樹もいつも笑顔で彼女を抱きしめ、「お疲れ様、紗良」と言ってくれた。

この5年は、紗良の人生で最も幸せな時間だった。

しかし、幸せな日々はある日を境に終わりを告げる。

死んだはずの美希が、突然英樹の前に姿を現したのだ。

その瞬間、英樹の目にぱっと光が灯ったのを紗良は見逃さなかった。

そして紗良をさらに追い込んだのは、息子である真司と浩平までもが、すぐに美希に懐いてしまったことだった。

「美希さんはママよりずっと優しい!

美希さんは一緒に遊んでくれるけど、ママは僕たちのこと叱ってばっかりだもん!

パパ、美希さんが僕たちのママになってくれたらいいのにね」

子供たちがそう言う度に、英樹はただ淡々と紗良に一瞥をくれ、息子の頭を撫でながら「馬鹿なことを言うな」と諭すのだった。

しかし、決して否定はしなかった。

紗良は、まるで自分だけが部外者になった気がしていた。盗み取ったかのような5年間の幸せが、美希が戻ってきたのをきっかけに崩れ落ちていくのを、ただ見ていることしかできなかった。

そして今、彼らはこんなにも残酷な方法で、自分に濡れ衣を着せようとしてる。

「轢いてない!」現実に引き戻さた紗良は、震える声で叫んだ。「英樹!海斗を離して!」

だが、英樹の視線は冷たい。「往生際が悪いようだな。それなら、愛する者を永遠に失う苦しみでも味わえ」

英樹が手を挙げると、ボディーガードがすぐに縄を切った。

「やめてーっ!」

紗良は、縄が切れて英樹の体が熱い油の中へまっすぐに落ちていくのをただ見つめることしかできなかった。

狂ったように前に飛び出そうとしたが、ボディーガードに強く押さえつけられ、絶望の中で叫ぶことしかできない。「英樹!あなたは海斗を殺した!あなたが殺したのよ!」

胸が張り裂けるような痛みに襲われ、紗良は思わず血を吐いた。それを見た真司は、うんざりしたように口を歪める。「もうやめなよ。あれは海斗兄ちゃんじゃなくて、ただの人形。ママ、そんなに大騒ぎすることないじゃない」

浩平もふんと鼻を鳴らした。「そうだよ、ちょっと脅かしただけ。ママが美希さんを傷つけたりするからだよ」

全身の力が抜けた紗良は、地面にどさりと座り込む。心臓が止まるかと思った。

英樹が紗良を見下ろしながら言う。「この感覚を覚えておけ。美希は一度死んだんだ。二度と失うわけにはいかない」

そして、英樹は一息つくと、口調を和らげた。「お前が何を心配しているかは分かっている。だが、お前と結婚した以上、夫として、父親としての責任は果たすから、離婚はしない。だから、これ以上美希を追い出そうとするのはやめろよな」

紗良は震えながら顔を上げる。

もう離婚の準備は進めているのに……

だって、こんなにも美希贔屓の夫も息子も、もういらないから。

そう口を開こうとした時、英樹のスマホが鳴った。

「美希か?」電話に出た英樹の声が途端に優しくなる。「まだ痛むか?分かった、すぐに行くから」

電話を切ると、英樹は紗良に目もくれず、真司と浩平を連れて足早に去っていった。

工場の中に一瞬にして静寂が訪れる。紗良はぽつんと地べたにしゃがみ込み、涙を落とした。

涙を拭い、立ち上がろうとしたその時、スマホが突然震える。

美希からのメッセージだった。

【紗良。実は、あの人形すり替えておいたの。だから今、油釜で揚がっているのは、あなたの本当の弟さんだよ】

紗良は全身の血が凍りつくのを感じた。

油釜によろめきながら近くと、熱気が顔に吹きつけ、目がひりひりと痛む。

油釜の中で揚げられている海斗の体が、肉は焼けただれ、皮膚は黒焦げになり、手足はありえない方向に曲がっていた。ただその両目だけが、紗良をじっと見つめて、固く見開かれている。

「海斗……海斗!」

紗良が夢中で手を伸ばすと、跳ねた熱い油が手に降りかかり、一瞬で水ぶくれができた。

痛みに震えながらも、必死で海斗の手を掴もうとする。しかし海斗はもう声も出せず、ただ唇をかすかに震わせ、「姉さん」と呼ぼうとしているようだった。

絶対に助けるんだ!

ほんのわずかでも望みがあるなら!

紗良は狂ったように海斗を抱き抱え急いでその場を離れると、すぐに震える手で救急車を呼んだ。

全身が震え、涙で視界がにじむ。それでも海斗を必死に抱きしめ、ふらつきながらタクシーを止めた。

「病院まで!急いで、お願いです!」紗良の声はかすれ、もう頭の中は混乱していた。

運転手は血まみれの紗良の姿にぎょっとしたが、アクセルを思い切り踏み込む。

病院の廊下で、紗良は虫の息の海斗を抱いて救急処置室に駆け込んだが、看護師は困った顔で彼女を見つめた。「奥様、先ほど鈴木社長からご命令がありまして……医師は全員、野村さんの治療にあたれと言われました。なので今、弟さんの手術をできる者は誰もいないんです……」

紗良は全身を震わせ、すぐに英樹に電話をかける。

「英樹!お願い……お願いだから、医者を呼んで海斗を助けて!海斗は油釜に落ちたの!もう死んじゃう!」

しかし、電話の向こうの英樹の声は、氷のように冷たかった。「紗良、あれはただの人形だ。なのに、いつまで騒いでるんだよ?」

電話の奥からは、真司と浩平の不満そうな声も聞こえてくる。

「ママって、いつもこうやって我が儘言うよね。

パパ、もう放っておこうよ。美希さんが待ってる」

すると英樹は一方的に電話を切った。

紗良は床に崩れ落ち、絶望的な気持ちで周りの人に助けを求めたが、誰もが彼女を避けていくのだった。

ようやく協力してくれる医師を見つけた時には、海斗の体はすでに冷たくなっていた。

「海斗……海斗!」

紗良は海斗の黒焦げの亡骸をきつく抱きしめ、泣き叫んだ。しかし腕の中の少年が、もう応えることはなかった。

海斗が死んだ。

それも、自分が最も愛した男のその手によって。

……

3日後、墓地にて。

血の気の失せた顔をした紗良は、海斗の墓石の前に立っていた。

この3日間、紗良はまるで抜け殻のように、死亡届を出した後、海斗を火葬し自分の手でその骨を納めた。

その間、英樹と二人の息子は、一度も姿を見せなかった。

紗良は美希のインスタを開く。最新の投稿は、英樹が美希にうどんを食べさせている写真で、こう添えられていた。【どうしても自分で看病するって聞かなくて。本当に、困っちゃう】

その下には、真司と浩平からのコメントがあった。

【美希さん、早く良くなってね!治ったら、一緒に遊園地に行きたいな!】

【美希さんはママよりずっと優しいから、大好きだよ!】

スマホを閉じた紗良の目から、完全に感情が消え失せる。

紗良は墓地を出ると、まず二つのことをした。

一つ目は法律事務所へ行き、離婚に関する書類を作成。

そして二つ目は警察署へ行き、当直の警察を探した。

「こんにちは。この野村美希っていう人を、殺人罪で告訴したいのですが」

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83 章節
第三十二話① 表裏の輪
私の視界は真っ暗闇の中。 ふっ。私を舐めないで貰いたいわねっ。 毎度毎度この真っ暗闇を見ていたら、もう分かるもんねっ! ズバリ、私は気を失っているっ!どやぁっ! ……。 ………。 ……………しくしくしく。全くもって威張れたことじゃないのよぅ…しくしくしく。 何で私はまた意識を失ってるのー…。 えっと…、私は何でこうなってるんだっけ?気を失う前は確か…。 確か私は旭と一緒に買い物した帰りに、旭に扮した表門の人に刺されてー…はて? そこから記憶がないと言う事は、私はあそこで気を失ったって事だよね? んで、今現在意識がない、と。そう言う事だよね? でもさ?私今意識あるよね?こうやって考えていられると言う事は意識が戻ってるって事だもの。 と言う事は、意識は戻ってるけど、目を閉じているだけ、って感じ? …じゃあ、目を開けば…。 閉じていた目を開くと。ででんっ!「ふみっ!?」 目の前に毎度恒例ママのドアップ。 これ、本当にびっくりするから勘弁して欲しい。 ばっくばっく言う心臓を抑えつつ、数歩後ろに引くとママはこれ見よがしに大きなため息をついて私に呆れた目線を向けた。 「美鈴。何をぼんやりしているの?早くその本を持って廊下に出てみなさい」 「へ?」 本?廊下? 何を言ってるのかな?ママは。 何をぼんやりしてるって私の方が聞きたいし。刺された娘に本を持って廊下に立ってろなんて、なんとゆー拷問。 大体刺されたお腹だって……あれ?お腹に包帯も何もない。痛みもない。 え?ちょっと待って。そもそもなんで私、本を持って立ってるの? 「美鈴?聞いてるの?本を持って廊下に出てみなさい?」 「ふみ?」 全く状況を理解出来なくて首を傾げる。 待って?これどういう状況?本を持って、廊下って、え?さっぱり解らないんだけど。 手に持っていた本を見てみる。RPGに出てきそうな…って、これも前に思ったけど、これってセーブの本だよね? この本は私の部屋からは持ち出す事は出来ないって、もう実証済みだよね?一回やったもんね?結果は解ってるんだし、何度もやらなくてもいいんじゃ…? と言うか…今気付いたけど、ここ私の部屋じゃない? 周りを見渡してみても…うん、間違いない。私の部屋。
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第三十二話② ※※※
「…美鈴?」声が聞こえて目を開くと、ママのドアップ。「美鈴。何をぼんやりしているの?早くその本を持って廊下に出てみなさい」そしてまたこのセリフ。私の手にはセーブの本。流石に二度も同じ事があれば、夢でも幻でもないって理解出来る。いや、元々夢の可能性は大分低かったんだけどね。そしてもう一つ、夢を否定するに思い至る理由がある。ここに、いつもママのドアップがあるこの時に戻る理由。こんな事現実的じゃないと思って、つい思考から排除してたんだけど…。でも…もう、そうとしか考えられない。私はやはり『手に持っていた』本を開いた。そこに書いてある文字は、私の文字。『ハートの意味が解らない。でもこれはヒロインが持つべき本らしい』これは確かに私が書いた。それは間違いない。でも以前書いた時と違う箇所がある。私の書いた文字じゃない。それは以前と変わらない。違うのは勝手に浮かび上がった日付の後ろにあるハートの数だ。私が最初に見た時は三つあった。それが今は一つになっている。それを見て私は確信した。間違いない。これ、『残機』だ。残機って言うのも解り辛いかな?『ライフ』と表記するゲームもあるし。要は失敗できる回数って奴だ。RPG系のゲームには珍しいものでもある。これが良くあるのはそう、例えば土管工のおじさんが巨大亀を倒しに行くあのアクションゲームとかかな?今は土管工ゲームについての詳細は省くけれど、何故私がこのハートにその役割があると思ったのか。それは、私の記憶から解る事。恐らく、私は二回、『死んだ』のだ。一回目は、旭に化けた表門の女に刺された時。二回目は、旭を庇った時に投げられた、多分即死効果のある毒針を刺された時。初めて死んでゲームをやり直した時。私はこのセーブの本をちゃんと確認しなかった。今の状況が夢か何かだと思いたかったから。事実として受け入れ難くて、それに皆の安全を優先したかったのもある。だから本を確認しなかった。でもそれじゃ駄目なんだ。今になってママが以前言っていたこの世界はゲームの世界だって、油断するなって言った意味を痛感した。私は机に駆け寄りペンをとる。『何の因果かは解らない。だけど、今解る事を書き記そうと思う。いつどんな状況でまたやり直す事になるか解らないし、もしかしたらやり直せないかもしれない。でもこの本は役に立つ。使い方次第だか
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第三十二話③ ※※※
それから、襲撃のある8日まで。私は、一日一回はあえて外出し、買い物をするようにした。と言うのも、お兄ちゃん達が、遭遇すると言う形を作りたいと言ったからだ。ゲームにより近づける為なんだって。私としてはお兄ちゃん達だけ危険な目に合わせるつもりは毛頭なかったから、即頷いた。むしろ一日一回で良いのかと聞き返してしまった位だ。けど余計なことをしてもまたお兄ちゃん達の計画を崩すだけだよねとちゃんと思い止まった。買い物をして、華菜ちゃんの家に帰って、華菜ちゃんのご家族の代わりにご飯を作って、パソコンを借りて一日分の仕事をして。これを数日繰り返した。…私、本当にこれでいいのかなぁ…?ちょっと不安になるよね。だって、お兄ちゃん達は忙しく動き回ってくれてるってのに、私はここで華菜ちゃんと楽しく会話しながら、仕事をしているだけなんて。いいのかな…?こんなんで…。お兄ちゃん達の仕事だって滞るよね…。お兄ちゃん達のお店にだって迷惑がかかるだろうし…。…お兄ちゃん達に何か他に出来る事ないかって聞きに行こうかな…。最悪何も出来なくても差し入れだけでも…。うん、そうしよう。開いていたパソコンを閉じて、お財布を持って。部屋で勉強していた華菜ちゃんに断りを入れて、買い物に出る。おー。いー天気ー。朝からこんなに晴天だとお昼頃には暑くなるかもなー。動きやすい恰好で出て来て正解だったかも。えっと今日は何を買おうかな。お昼ご飯はもう決まってるから、晩御飯の材料かな。今日の晩御飯は…華菜ちゃんパパのリクエストでもつ鍋ですっ!前回、華菜ちゃんママのリクエストを聞いたら華菜ちゃんパパが拗ねちゃったからね。今日は華菜ちゃんパパのリクエストっ。まずはもつ鍋の一番の目玉である『もつ』を買いに行かなきゃ。透馬お兄ちゃんのお店が肉屋さんだから丁度いい。お肉、お肉~。どんな時でもお買い物って楽しいよね~。あ、勿論警戒は怠ってませんよ?ふっみみみ~♪脳内でのみ鼻歌を歌いつつ、少し軽い足取りで透馬お兄ちゃんの実家のお店へ向かっていると、「きゃあああああっ!!」えっ!?何事っ!?突然の叫び声。…叫び声だけど、どっちかと言うと喜び系の叫び、所謂黄色い声だったような?女性が群れをなして走って行く。しかも皆三方向へ割れた。途中まで同じ方向に走ってたのにっ?直角に割れて行くよっ!?あーゆー時の女子の
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第三十二話④ ※※※
車で揺られる事、数時間。 「そろそろ目的地に近いと思うんだけどー」 大地お兄ちゃんの言葉に私は、運転席と助手席の間から顔を出して、カーナビを見る。 確かにそろそろ免許証にあった住所につく。 なんてこったい、案外近かった…。 高級住宅街。言うだけあってそれはそれは立派なお家が建ち並んでいる。 そんな住宅街のド真ん中に、後藤鉄平(ごとうてっぺい)宅はあった。 「うぅ~ん、確かに立派な家だけど…」 「姫さん。白鳥家と比べたらあかんで?」 「あ、うん。それは勿論比べたりはしないけど。でも、なんでかな?高級なお宅感があんまりしないよね…何で?」 「言われてみたら確かに。何て言うん?こう…悲壮感が漂うてると言うか…」 悲壮感?窓の外を見ると、高級な住宅が何軒も建ち並んでいるが。どこの家にも高級住宅街と言うには違和感がある。 一体何が他の高級住宅街と違うのかな? じーっと違和感を探る。高級住宅……あれ? 「あぁ、そっか。庭とか壁とか全部放置されてるんだ」 「?、姫さん?」 「ほら、奏輔お兄ちゃん。見てみて。普通の高級住宅なら、誰かしらがお庭の手入れとか、壁の修繕とかするはずだよね?なのに、見て。外観の目立つ所以外は」 「あぁ、なるほど。…元々あった金を当てにして、何もせぇへんからこうなるんや」 車がゆっくりと狙いの後藤家の前に止まる。一先ず降りたりはせずに、車の中から家の中の様子を窺った。……特に私達の事は報告されている訳では無さそうだね。報告が行ってるのなら、この車にだって何しかしら反応を示すはず。スッと後藤家の窓の方に視線だけを向ける。…視線は感じない。こちらの様子を探っている訳でもなさそう。 視線を車の中へ戻すと、前に座っているお兄ちゃん達もこちらを振り返っていた。目を見ると、お兄ちゃん達も真剣に頷いた。きっとお兄ちゃん達も同じ結論に達しているんだろう。 「まず、俺が行って様子を見てくる」 シートベルトを外した透馬お兄ちゃんが車を降りた。 門の前に立ち、律儀にチャイムを鳴らすと、奥さん?らしき人が出て来た。 透馬お兄ちゃんを見て、一瞬固まったかと思うと一言二言話して、会釈して戻って行ってしまった。 透馬お兄ちゃんがそれから数度チャイムを鳴らすけれど、奥さんらしき人は戻って来なくて。透馬お兄ちゃんはそのまま車に戻って来た。
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第三十三話① 白猫が奏でるは魔學士の夢(嵯峨子奏輔編)
「奏輔お兄ちゃんっ!」叫んで。 トスっと背中に衝撃がきた…と思ったけど、あれ?痛くない? 閉じていた目を開いて、そっと振り返ってみると。 確かに私の背中に矢はぶつかっていた。 けど刺さってない。 むしろくっついているが正しい。吸盤でこうぴったりと。 あれ?もしかして使われた矢って玩具の矢だった? でも、あっちから感じた気配は完全に狙ってきたものだと思ったけど…。 首を傾げていると、私が庇った筈の奏輔お兄ちゃんが急に私の腕を肩から引っ張り上げて背負った。 しかもそのままくるんと半回転。 「ふみっ!?」 慌てて奏輔お兄ちゃんの首に腕を回してしがみつく。 「姫さんの性格上、こうなる気はしとったんや。前もって対策しといて正解やったわ」 ふーやれやれと言いたげに奏輔お兄ちゃんは大きく息を吐いた。 そして少しずれた眼鏡のブリッジを指で戻したかと思うと、 「透馬。大地。屋根の上や」 と、二人に指示をした。透馬お兄ちゃんも大地お兄ちゃんも気付けば私達の横に立っており、 「屋根上だな」 「了解ー」 二人は一斉に駆け出す。 残されたのは奏輔お兄ちゃんとそれにぶら下がる私。 「えーっと…?」 「ちょっと待っとってな。直ぐにアイツらが連れて来るやろうから」 「う、うん。でもこのままでいいの?重くない?」 「全然。お姉達に比べたら軽いし可愛ぇしで何も問題あらへんよ」 「ふみ?桜お姉ちゃん達も可愛いよ?美人よ?」 「姫さん。とうとう目が悪くなってもうたんやなぁ。後で眼鏡買いに行こな」 そんな心底『可哀想に』と同情するような目で私を見なくても…。 なんでー?お姉ちゃん達は奏輔お兄ちゃんと同じでとっても美人なのに。 美人だけどまだ独身なのは、きっと高嶺の華だからだと思うの。うんうん。 「所で奏輔お兄ちゃん」 「うん?」 「そろそろ降りても良い?腕が痛くなって来たの」 「もう少し頑張りぃ。あんまり広範囲の盾(シールド)はまだ使えへんのや」 「盾(シールド)?って?」 「スキルや。どうやら俺はスキル特化型らしくてな。透馬や大地より一回に覚えれるスキルが多いんよ」 「へぇ~。じゃあ、私の背中に刺さってるこれもスキル?」 「そや。武器変化のスキルを使うた。言うてもこのスキルは使用者の体に触れてる事が大前提や」 「って事は?」
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第三十三話② ※※※(奏輔視点)
「いっ」姫さんには悪いけど叫び出しそうなその口を手で塞ぐ。今叫び声を上げられると、逃げ出している事がバレる。もしかしたら既にばれている可能性もあるが、それでも。俺の意図を理解してくれた姫さんが大人しくしてくれている。その隙に源祖父さんが張ってくれた結界を頼りに庭へ降りた。肩に担いだ姫さんがどんどん冷えていくのが触れた部分から伝わって、どうにかしてやれないかと背中を叩いてみる。これで少しでも安心してくれると良い。こんな事しか出来ない自分が情けなくもある、「邪魔だなぁ…。華の横に男は要らないんだよ」嫌な予感がした。背中から何か嫌な気配がして、咄嗟に俺は姫さんを肩から降ろして腕の中に入れた。同時に背中から爆音と風圧が襲ってきて、俺達は庭に転がった。何とか姫さんは守れたと思う。けど元々俺の体力はそこまで強くない。恐らく鴇や透馬等に比べると俺が一番弱い。大地や透馬ですら直ぐに動けない爆風を喰らった俺が直ぐに動ける筈もない。せめて姫さんだけは守らないと。頭ではそう思っていても動けない。背後からは姫さんを狙う男が迫って来ている。立ち上がらないと…。腕に力を込めて立ち上がろうとした。だが、それよりも早く姫さんが動いた。一瞬だけかち合った視線。その視線は強く語っていた。俺達を守らないと、と。巻き込んではいけない、と。違う。姫さん、その選択は違うでっ。俺の腕から抜けた姫さんは振り返らずに走りだす。男が姫さんの後を追う。姫さんがいくら本気を出して逃げたって、相手はあいつだ。どこまでも追い掛けて行くだろう。駄目だ。こんな、こんな攻撃で足を止めてる場合じゃないっ。動かない体を無理矢理に立たせて、足を動かす。姫さんの後を追って道路に出て、俺の視界に入った光景は…。「美鈴っ!!」「ママっ!!」姫さんの手と佳織さんの手が触れあうと同時に、男の体が青く光りその手から出された青い光が姫さんの体と接触した瞬間だった。「姫さんっ!」俺の声は姫さんに届いただろうか。崩れ落ちた姫さんの体を佳織さんが抱き止める。「姫さんっ!」もう一度叫ぶも姫さんは俺の声にピクリとも反応しない。「美鈴っ!しっかりしなさいっ!美鈴っ!」佳織さんが姫さんの体を揺さぶるも全く動かない。遠目で見ても姫さんの体からは少しずつ血の気が失せて行く。「…
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第三十三話③  ※※※(奏輔視点)
佳織さんが転移させた場所。それは、 「おかえりなさい。佳織」 源祖父さんの家。佳織さんの実家の庭だった。出迎えの言葉をくれるヨネ祖母さんの声が尚更転移した事実を実感させた。 だが確かにここは地図に載らない場所。安全ではあるかもしれない。けれど俺達は皆この場所を知っている。 逃げ場としては、あまり良くないのでは? 俺の疑問は顔に出ていたんだろう。 佳織さんは俺の顔を見て、静かに首を振った。 「大丈夫よ。奏輔くん。ここからもう一度転移するから」 「え?」 「私の秘密基地へ移動するわ」 頷いてから佳織さんはヨネ祖母さんの方を向く。 「母さん。頼んどいたあれは」 「ちゃんと配達させといたわ。安心なさい」 「ホントに?助かるー。父さんには」 「何も言わないように言ってるわ」 と言いながら、ヨネ祖母さんの手には何やら四つ折りにした紙が一枚。 …二人がえらい悪どい顔して笑ってるって事は、近寄らないが吉。 「ありがとう。母さん」 「この位何の問題もないわ。…頑張るのよ」 「えぇ。絶対に助けるわ」 大きく頷いて、再び足元へ特大の魔法陣が現れる。 そして、また俺達は転移した。着いた場所は、窓一つ無い殺風景な狭い部屋。 「こっちよ、奏輔くん」 手招きされてそちらを見ると壁がある。 こっちよって、その壁に何かあるのか? こんな時におふざけなんて佳織さんは絶対しないだろうから。 俺は大人しく佳織さんの後を追うと、ガコンと音を立てて壁に穴が現れた。 中を覗くと、滑り台状に下へと穴が続いている。……先が見えない。 「はい。入って入って」 入ってって…ホンマに大丈夫なんか?これ…。 下からヒョオオオオと風の音がしてるんやけど…? 「奏輔くん。入らないなら蹴るわよ」 「い、行きます」 無理矢理蹴落とされるなら、素直に覚悟決めるわ。 姫さんをしっかりと抱えて、一二の三で尻から滑って降りる。 人二人分の重みと何故かしっかりと滑る様に出来ている滑り台の所為で加速する加速する。 正直怖い。 姫さんと眼鏡を抑えて加速するまま下ると、突然滑り台が消えぽいっと体が投げ出された。 ボフンッ。 体を何かが受け止めてくれたが、自分の後ろから直ぐに佳織さんが来ると察知して素早く横へ避ける。 「よっと」 着地した佳織さんがカツカツと歩く音
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第三十三話④ ※※※(奏輔視点)
「それじゃあ、私は調査に行ってくるわね。あ、そうそう。あっちに見えるドアがトイレで反対側に見えるドアがキッチンね。あと向うに見えるのがお風呂場へ向かうドア。ここにあるものは自由に使ってくれても構わないから。食材も母さんに運んで貰ってるし」「了解です」俺が頷くと満足気に頷いて佳織さんはまたスキルを使ってその場から消えた。……さて。あの野郎の事は佳織さんに任せる事にして。念の為に。姫さんを抱き上げて一旦椅子に座らせて、靴を脱いでベッドに乗り上げた。俺達が落ちて来た穴。あれを塞ぐ。魔法で塞ぐって事も出来なくはないが、完全に塞いで異常事態が起きた時逃走経路がない、なんてそんな事で焦りたくはないからな。そこらにあった何の変哲もない段ボールをテープで貼り付けるだけに止めて置いた。これで侵入者が気配を消して入ってきたとしても気付けるだろう。(けどこれだけやと逆に不安やな…。何かスキル、ないんか?)自分のスキル一覧の所を見ると、【盾(シールド)】の上位互換スキルに【結界(バリア)】がある。ステータスを開いて、結界(バリア)を習得して、この部屋全域に発動させる。これで誰が来ても解るし、不要な侵入者も防げる。段ボールの意味はないかも知れないが、明かりが見えなかったりとか多少の誤魔化しには、まぁ使えるやろ。守りをそれなりに作り上げてから、ベッドを少しだけ移動させて、もう一度そこへ姫さんを戻した。セーブの本を開いて、もう一度中を確認する。相変わらずハートのマークは点滅している。そこに逆に安堵を覚えた。これが点滅してる限りは姫さんはまだ意識を保っている証拠だから。そのセーブの本を姫さんの枕の横に置いて、俺は中央の机に戻り佳織さんが用意してくれた書類に向き合った。(さっきは佳織さんと話を合わせたけど…正直、佳織さんを信用出来ない部分がある。確かに佳織さんは姫さんを救う為にはなんでもする。それは間違いない。けどそれは【佳織さん】の感情であって、ゲームでの【佳織さん(ラスボス)】ではない。姫さんが言っていたヒロイン補正。それが何処で出てくるかなんて解らない。そもそも俺が疑ってるのはそこだ。【ゲームの主軸から外れた】と。それは本当なんだろうか?)何も書いていない紙とペンを持ち、疑問に思った事をつらつらと書きとめて行く。(もし主軸から外れたとしたのなら、佳織さ
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第三十三話⑤ ※※※(奏輔視点)
あれも駄目、これも駄目、と。 もうかなりのパターンを試してみたと思う。 (けど…それらしき結果は出なかったな) しかも、何日も夜通しぶっ続けで実験を繰り返していたから、正直体力的にも限界に来ている。 (いい加減、何か食べないと…頭が上手く回転しぃひん) あれから何日経過している? この部屋には窓がない上に地下にあるようで、さっぱり今が何日の何時なのか解らない。 一先ず時間だけでも確認出来ないかと周囲を見回して、壁にかけてある時計を見つけた。見ると時間は十五時を指している。 (ここに来た当初は気に止めんかったけど、良く見回してみるとここ、時計いくつあるん?しかもなんで全部日時時計で表示が二十四時間?) 疑問には思ったものの直ぐに理由に思い至る。成程。その時計にしないと感覚が狂うからか。数があるのも例えば何かの時計が狂った時に他の時計で時間を合わせる為なんだろう。 あれから五日経ってたのか…。俺良く動けてたな…。 さてと。 足をキッチンのドアに向ける。 姫さんとの会話とトイレしか往復してなかったから、キッチンに入るのは初めてだな…って、これはキッチンか? シンクと蛇口の横に何故か電子レンジ。横にドでかい冷蔵庫と床にカセットコンロ。狭いキッチンの面積はほぼ冷蔵庫が占めている。 冷蔵庫を開けて気付く。 (これ冷蔵庫でなく、冷凍庫や…) 恐らくヨネ婆さん手製の料理がジップされて積み重ねられている。 …佳織さんが言っていたのはこれの事だったんだろう。 適当に手に取り、そのまま電子レンジへ入れて解凍と温めをする。その間に皿を……ないやん。 食器類が何もない。せめて、せめて箸か何か…。 周りを見回し、部屋の隅に小さな段ボールがあるのを発見し、急いでそれを開けると中から使い捨てのスプーンが大量に出て来た。 (スプーンがあるなら、何とかなるわ…) チンッと音が電子レンジから聞こえ、解凍されたジップの中に入っているのがおでんだと解る。 汁が零れないように慎重に取り出さなあかんね…熱いだろうから袋の上の部分の端っこを掴んで…あちち…。 キッチンから戻り、どうせならと姫さんと会話しながら食べようと姫さんのベッドの側へ。 俺は床に座って、姫さんの手を握った。 「姫さん。聞こえるか?」 (はいはーい♪聞こえてるよー♪) 会話をしながらお
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