私の名前は、香村夏穂(こうむら かほ)。婚約者だった小澤始(おざわ はじめ)が死んだ翌年、親友の駒井翔子(こまい しょうこ)も死んだ。しかも二人とも、私の誕生日に。私は昔から、周りにお姫様のように大切にされてきた。だから二人が死んでから、いつしか「不幸を呼ぶお姫様」と呼ばれるようになった。五年が過ぎても、私はずっと自分を責め続けていた。私が誕生日なんて迎えなければ、二人は死なずに済んだのだろうか、と。ある日、親戚の子の転校手続きで学校へ行った私は、始によく似た男を見かけた。思わず追いかけると、その男は子どもの前にしゃがみ込み、叱っているところだった。「美羽(みう)、また友達を叩いたのか?次やったら、おやつ抜きだぞ」子どもは不満そうに頬をふくらませた。改めてよく見てみると、この子は驚いたことに、どこからどう見ても翔子にそっくりだった。「パパのばか!何もわかってない!先に意地悪してきたのは、あの子なのに!」パパ?二人は死んでいなかった。それどころか、子どもまでいたのだ。「夏穂お姉ちゃん、何見てるの?」親戚の子が言った。その声に反応して、始が振り向いた。そして、私を見た。私はその場に立ち尽くしたまま、胸の中がぐちゃぐちゃになっていた。あの二人は、私のせいで死んだわけではなかった。それを喜ぶべきなのか。それとも、二人がいちばん残酷な形で私を裏切っていたことを、悲しむべきなのか。どうしてなのだろう。始は、私の幼なじみだった。二十歳のときには、わざわざ名前を「始」に変えてまで、私に告白してきた。彼はこう言った。「過ぎ去ったものは、すべて序章にすぎない。俺たちの過去は恋の始まりで、これからの一生こそが本編なんだ」あのときの私は、それが私たちの物語の始まりを意味しているのだと信じていた。誕生日の前日、始は私にこう言っていた。「夏穂、一生俺が守る。お前につらい思いなんてさせない」けれど、いつだって私をいちばん傷つけるのは、ほかでもない彼自身だった。いったい、いつから彼の心は私から離れていたのだろう。私にはわからなかった。そのとき、突然チャイムが鳴った。死んだはずの親友、駒井翔子(こまい しょうこ)。その娘である美羽は、もう一人の生徒と一緒に慌
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