痛みで視界がぼやける。白い天井が、ゆっくりと回っている気がした。麻衣子はベッドの上で唇を噛みしめ、両手でシーツを握りしめていた。腹の奥から這い上がってくる激痛が、息をすることすら許してくれない。「もう少し我慢してくださいね……」看護師の優しい声が遠く聞こえる。でも麻衣子には、ただの雑音にしか感じられなかった。結婚三年目。待ちに待った赤ちゃんだった。ついに陽性反応が出た日の夜、麻衣子は夫の弘人に報告しようと何度も電話をかけた。でも繋がらなかった。「今、急な出張で海外なんだ。悪いけど少し待っててくれ」弘人のLINEはいつも通り素っ気ないものだった。それでも麻衣子は嬉しくて、毎朝つわりで吐きながらも「今日も元気だよ」と報告を送り続けていた。それなのに——「うっ……!」また痛みが波のように襲ってきた。麻衣子は歯を食いしばって耐える。一人だった。誰も側にいない。弘人は今頃、どこにいるのだろう。スマホが震えた。【弘人】 今夜も遅くなりそう。体調どう? 無理すんなよ。麻衣子は震える指で返信しようとした。「今、流産しそうで病院にいるの」——そう打とうとした瞬間、また新しいメッセージが届いた。今度は写真だった。送信者:弘人添付画像:三枚。開いた瞬間、麻衣子の世界が凍りついた。青い海をバックに、弘人が笑っている。その隣で、秘書の辻本彩花が甘えるように彼の首に腕を回し、唇を重ねていた。次の写真では二人がビーチベッドで絡み合い、笑い合っている。三枚目——彩花が弘人の胸に顔を埋め、幸せそうに目を細めている。場所は明らかに海外のリゾート。弘人が「急な出張」と言っていた場所。「…………」指が動かなくなった。スマホの画面が、冷たい光を放ちながら、麻衣子の心を切り裂いていく。次の瞬間、激しい怒りが腹の底から爆発した。「うああああああっ!!」麻衣子は力の限りスマホを床に叩きつけた。ガシャン、という乾いた音と共に画面が粉々に砕け散る。まだ痛む下腹部など関係ない。もう、何も感じなかった。「須藤弘人……あなたは、私がこんな目に遭ってる間も、あの女と楽しんでたのね」涙が溢れて止まらない。でもそれは悲しみの涙ではなかった。純粋な、燃えるような憎悪だった。看護師が慌てて駆け寄ってくるが、麻衣子はゆっくりと体を起こし
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