翌朝、おばあさまから電話がかかってきた。「彩ちゃん、午後に時間があるなら、本邸まで来てくれる?」午後二時、隼人の車が三浦家本邸の門前に停まった。リビングでは、おばあさまが重厚な椅子に腰かけていた。目の前のローテーブルには、数部の書類が並べられている。その隣には、家政婦二人に付き添われるようにして、陽菜が座っていた。陽菜は化粧もしておらず、髪も乱れていた。泣き腫らした目で私を見るなり、肩をびくりと震わせた。おばあさまは顔を上げ、私の手の甲を軽く叩いてから、陽菜へ向き直った。その眼差しは、冷たい刃のようだった。「伊藤、あれを見せなさい」執事は、偽造された卒業証明書、クレジットカードの滞納記録、SNS投稿のスクリーンショットを、陽菜の前に一枚ずつ置いていった。陽菜の顔が、さっと青ざめた。「おばあさま、私、説明できます……」「必要ないわ」おばあさまは湯呑みを持ち上げ、平坦な声で言った。「結城陽菜。いいえ、結城夏子と言うべきかしら。あんたは学歴を詐称して三浦グループに入り込み、悠生に近づいた。そして、悠生が軽い気持ちで渡したものを、特別扱いされている証拠みたいにネットで見せびらかした。結婚式の前夜には、悠生を酒の席にまで引っ張り出して」おばあさまの声が、低く冷えた。「その結果、私のひ孫は失われた。あの子が三浦家にとって、どれほど大切な命だったか。あんたにわかる?」陽菜の唇が震えた。「三浦社長は……子どもができない体なんじゃ……」その一言が出た瞬間、おばあさまは氷のように冷たい笑いを漏らした。「伊藤。資料は一部を管轄の警察へ、もう一部を三浦グループの法務部へ回しなさい。学歴を偽って入社した以上、採用時の経歴詐称にあたる。法務には正式に手続きを進めさせて」陽菜は椅子を弾くように立ち上がった。涙が一気にあふれ、よろめきながら私の前へ駆け寄ってくる。「彩葉さん!お願いです、助けてください!本当に、あなたを傷つけるつもりなんてなかったんです。ただ……ただ三浦社長のことが好きだっただけで。あのネクタイピンだって、本当に社長がくれたんです。あなたが作ったものだなんて、知らなかったんです!」私は彼女を見下ろし、スカートの裾を必死につかむその手を一本ずつ引き剥がした。「彼が好きだから、私の思いが
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