人気の無い静かな図書室と対照的にグラウンドでは、部活に勤しむ生徒達の声が響いている。古臭い紙、インクの匂いと夕日に当たって静かに揺れて舞っている埃の中、私と彼は勉強していた。数学の数式とにらめっこしつつ、答えが分からなくて唸っている私を横目に、彼は少し寂しそうに呟いた。 「こんな時間が、永遠に続けばいいのに……」 「どうしたの? 急にそんなこと言うなんて」私がそう問うと、彼は困ったように眉を下げて笑いながら、こう返した。 「僕が夢を叶えても、こうしてずっと隣にいてくれるかい?」顔は笑っているが、その瞳には今にも消えてしまいそうな儚さが漂っている。 「うん、隣にずっといるよ」私は彼の手を握り、指先を絡めてそう答える。すると彼は、憑き物が落ちたように心底安心した表情を浮かべた。 「ずっと僕の1番のファンでいてね、紬……」夕日に縁取られながら笑う彼は、神様が丹念に作り上げた彫刻のように完璧で、直視し続けるのが怖くなるほどだった。そんな恐怖と恥ずかしさから、私は顔を逸らす。顔を逸らされたのが気に食わなかったのか、彼は眉を寄せて不満げな表情を浮かべる。 「どうして顔を逸らすの?」 「ご、ごめん……。なんか恥ずかしくなっちゃって……」私が白旗を上げるように理由を漏らすと、彼は満足げに喉を鳴らした。不満げに歪んでいた唇が、獲物を手に入れた子供のような、無垢で残酷な笑みへと形を変える。 「そろそろ帰ろうか」彼が私に手を差し出してくる。なんだか御伽噺の王子様に誘われているようだと、場違いな期待を抱きながら、私はその手を取った。ーーその温もりが、私を一生離さない鎖になるのだとも知らずに。
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