植田慎司(うえだ しんじ)によって精神病院に送り込まれてもう3年が経つ。私の中にはもう生きる気力なんて残っていなかった。寒さの厳しい冬のある日、慎司の新しい恋人が現れ、やつれた私の頬を優しく撫でた。「あなたが、慎司の奥さん?」私は警戒するように山田智子(やまだ ともこ)を睨みつけただけで、何も答えなかった。すると次の瞬間、相手は瞳に猛烈な殺意を宿しながら、私を階段から突き落としたのだ。「あなたが消えてくれさえすれば、私が慎司の奥さんになれるって、みんな言ってくれるんですよ。だから早く死んでくださいね!」咄嗟のことで一切反応できなかった私は、そのまま階段から落ち、頭から血が流れ出すのを感じた。手術室で丸一日生死を彷徨ったが、何とか死の淵から這い上がることができた。血走った目の慎司が駆け込んできて、私の手を固く握りしめる。「日和(ひより)、約束する。君が助かった後に、智子がやったことを公にしないでいてくれるなら、過去のことは全部帳消しにしてやる。それに、これからは二度と君に迷惑なんてかけないから!」私には、返事をする気力も残っていなかった。その時、頭の中でずっと沈黙を貫いていたシステムのアラート音が、突然鳴り響いた。「おめでとうございます。任務対象からの罪悪感ポイントが100パーセントになりました。この世界からの脱出が可能です」私は小さく安堵の息を漏らす。ようやく、家に帰れるのだ。……あの怪我の状態なら、本来集中治療室行きのはずなのだが、私はなぜか一般病棟に移された。まだ顔色の悪い私を見て、慎司が優しい声を出す。「心配するな。最高レベルの医者を集めたから。ただ智子は今、仕事が絶好調だから、この件は内密に処理したいんだ。だから、お前が今回のことは『事故』だと公に発表するなら、ここから出してやる」慎司が私を抱き起こし、雑炊を渡してきた。「医者が言うには、今の体じゃこれしか食べられないらしい。ほら……」私は顔を背け、目線を下に向ける。「慎司、あなたはそんなことしなくていいから」慎司は顔色をさっと変え、少し大きな声を出した。「3年も経ったっていうのに、まだそんなよそよそしい態度をとるのか?」私は何も答えない。私だって慎司に心を壊される前は、彼に対して、こんな他人のような態
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