私、鐘森真昼(かねもり まひる)、もうすぐ結婚するんだ。でも、5年も付き合ってきた彼氏の榊原燃(さかきばら もゆる)は、そのことをまだ知らない。だって彼、最近は毎晩のように女性の同僚・芳野芝子(よしの しげこ)を家まで送ってて、帰りはいつも遅いから。その女はやたら忘れっぽくて、しょっちゅう彼の車に物を置き忘れる。ピアスに、ニプレス、それに……過激な写真まで。深夜0時、車にアレルギー薬を忘れたから届けてくれ、って連絡があれば、燃はズボンを整えるのもそこそこに、家を飛び出していくんだ。その芝子のせいで、私たちの結婚式は十九回も延期になった。それでも、5年の思いがあるから──私は彼に、最後のチャンスをあげようと決めた。「送り迎えをやめるか、式をキャンセルするか、どっちかにして」彼は一晩中黙り込んで、そのあとは本当にきちんと時間通り帰ってくるようになった。私はやっとうまくいったと、そう思ってた。式の一週間前、家のドアを開けると、リビングの半分が空っぽになっていた。隣の部屋から芝子がひょっこり顔を出して、私の買ったばかりの洗濯機を撫でながら、にこやかに笑った。「鐘森さん、お隣さんになりましたよ!燃さんがお金を貸してくれて、家を買っちゃったんだ。この古い家電も、とりあえず私が使っていいって言ってくれたんです」震える手で銀行アプリを開く。私たちが5年もかけてコツコツ貯めた結婚資金の600万円が、1円残らず消えていた。今度ばかりは、言い争う気力さえ湧いてこなかった。そこに私の母・鐘森麻木(かねもり あさき)から電話がきた。「真昼、式場、ローズガーデンに変えない?今のままじゃ、うちの娘がかわいそうすぎるわ」私は空っぽのリビングを見渡して、静かに笑った。「いいよ。ついでに……新郎も、変えちゃおうか」どうせ母は再婚で名門財閥、西園寺家に嫁いで、5人の義理の兄たちはみんな私が実家に戻るのを心待ちにしてる。西園寺家のお嬢様として、私と結婚したがってる男が、掃いて捨てるほどいるんだから。芝子は「新郎を変える」と聞いた瞬間、目に興奮の色がよぎった。口ではもっともらしいことを言う。「鐘森さん、そこまでしなくたっていいじゃない?燃さんが毎日どれだけ疲れて働いてるか、知ってるの?別れるって脅す以外に、あなた
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