俺、時田瞬(ときた しゅん)は、親友の従姉で企業の社長を務める江崎結月(えざき ゆづき)と三年間、秘密交際をしている。ある日、親友が俺にこう言った。「後でさ、従姉が三年付き合ってる彼氏を連れて、うちに挨拶しに来るらしいんだ。 そうだ、お前はいつになったら、付き合ってる子を俺に紹介してくれるんだよ!」親友の問いかけにどう説明していいか分からず、俺はベランダに逃げ込み、結月に電話をかけた。だが、電話はすぐに切られてしまった。振り返ると、俺の彼女が一人の男と腕を組んで玄関に立っている。俺と目が合った瞬間、結月の笑顔がスッと消え去った。「どうしてあなたがここにいるの?」彼女が眉をひそめ、思わず口にした問い詰めるような言葉で、その場にいる全員の視線が俺に集まった。まずいと気づいたのか、結月は目を細めて、口調を少し和らげた。「時田部長はどうしてここに?出張に行っていたのでは?」江崎家全員の視線を浴びる中、俺は一瞬呆然とした後、苦笑いを浮かべ、彼女の芝居に合わせることにした。心の奥でチクッとした痛みが走る。時田部長、ね。どうやら、俺は日の目を見られない存在らしい。頭の中には数えきれないほどの言葉や、結月に答えてほしい疑問が山ほどあるというのに。しかし今の俺には、それを口にする気力すら残っていなかった。突然、すべてがどうでもよく思えてきた。「今戻ったばかりで、まだ江崎社長にご報告できておりませんでした」俺の空気を読んだ態度に、結月の顔色はついに元通りになった。食卓は和気あいあいとしていて、まるで出来のいい芝居のようだ。俺は結月の「恋人」である鶴見翔(つるみ しょう)と意気投合したふりをして、杯を交わし、連絡先まで交換した。その日、俺は結月と一言も言葉を交わすことなく、食後一人で家に帰った。ソファに座っていても、脳裏に浮かんでくるのは、結月が翔と腕を組んで俺の前に現れ、両親や親戚たちに挨拶している光景だった。そしてこれらはすべて、かつて俺が待ち望んでいたものだった。俺たちの関係を公にして、ご両親に紹介してほしいとずっと願っていた。結月を一生大切にし、決して少しも辛い思いはさせないと、ご両親に伝えるつもりだった。こんな、遊び相手のような扱いではなく。夜中までソファに座り込んでいると、
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