――昔、知り合いだった人。その言葉は刃となって、仁の胸へ深く突き刺さった。淳の表情が険しくなる。彼は仁を真っ直ぐ見据えた。「つまりあんたが、他の女のために里奈を労働更生施設送りにして、自分の手で書類に印を押して、この土地へ追いやった元婚約者ってわけか?」仁の顔から血の気が引いた。「俺は――」「言い訳はいい」淳は冷たく遮った。「里奈から全部聞いてる。あんたがやったこと、一つ残らずな」仁は里奈を見る。声が震えていた。「里奈、聞いてくれ。あの時の俺は知らなか――」「知っていたでしょう」里奈は静かに言った。「ネックレスの件があの人の仕組んだことだって、あなたは知っていた。それでも私を施設へ送った」彼女の声は淡々としている。「父の件だってそう。冤罪の可能性があると分かっていたのに、あなたはあの人の就職の世話を優先して、私には一度も会わなかった」そして、ゆっくりと告げた。「仁。あなたは何も知らなかったんじゃない。全部知った上で、彼女を選んだの」一言ごとに、刃が肉を削ぐようだった。仁は膝をついた。27歳にして隊長となり、これまで頭を下げられる側だった男が。土の庭に、まっすぐ跪いた。淳も思わず目を見張る。里奈も一瞬だけ息を呑んだが、すぐに視線を逸らした。「すまない、里奈......」仁の声は涙で詰まる。「本当に悪かった。殴っても、罵ってもいい。命を取られても構わない。でも......俺を捨てないでくれ」彼は懇願する。「頼む。俺と帰ってくれ」里奈は背を向けた。「帰ってください」静かな声だった。「私は今、幸せです。戻るつもりはありません」「どこが幸せなんだ!」仁は目を真っ赤にして叫ぶ。「こんな苦しい場所で!お前の手を、足を見ろ!お前はこんな苦労をする人間じゃないはずだ!」「それでも、あなたの傍にいるよりはましです」その一言に、仁は凍りついた。里奈は振り返らないまま続ける。「あなたの傍にいたら、あの人と仲睦まじくするあなたを見なきゃいけなかった。何度も見捨てられて、裏切られて。あなた自身の手で労働更生施設へ送られて。父のことで毎晩眠れなくなって」彼女は小さく息を吐いた。「ここでの苦しみは体だけ。なのにあなたの傍で味
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