交際してからの五年間、五十嵐海吏(いがらし かいり)は水瀬珠羽(みなせ みう)をこの上なく大切に扱ってきた。あらゆる記念日を記憶し、彼女の小さな心の機微にも細やかに気を配り、物質面でも決して出し惜しむことはなかった。だからこそ海吏の誕生日の夜、珠羽は一週間の出張予定を無理やり五日間に圧縮し、サプライズで彼を喜ばせようと、予定を早めて帰途についた。彼女がプレゼントを手に、個室の扉の前に立った時のことだ。個室の中から、海吏の友人の笑い声が聞こえてきた。「海吏、新星テクノロジーのあの融資案件だけどさ、本当に珠羽の名義で20パーセントも持たせるつもりかよ?さすが、太っ腹なお前らしいな!」「本当だよな。今日は主役のお前が、どうして逆に彼女へプレゼントを用意してるんだ?」ほどなくして、彼女を安らがせる海吏の声が響いた。「珠羽は俺の愛する女だ。俺たちの資産やリソースを共有するのは当然のことだろう」珠羽の口角は無意識に上がり、心の奥底に温かいものが広がっていく。海吏はいつもそうだった。私生活でも仕事でも、いつだって無条件で珠羽を支えてくれた。だが次の瞬間、海吏は突然こう言った。「それに、俺と絵凛は今夜、初めて体を重ねるつもりだ。あれは、俺から珠羽への埋め合わせなんだ」ドアを押しかけていた珠羽の手がピタリと止まる。あまりの言葉に、幻聴を疑うほどだった。個室の中も水を打ったように静まり返った。直後、信じられないといった風に、いくつかの驚きの声が上がった。「おい待てよ!お前、スキンシップ恐怖症じゃなかったのか?珠羽にすら指一本触れられないのに!桜井絵凛(さくらい えりん)っていう心理カウンセラーは、そんなにすごい腕なのか?」友人の声には隠しきれない動揺が混じっていた。海吏は酒を一口あおり、低く笑い声を漏らした。「ああ、俺自身も驚いている。ここ数年、この病気のせいで珠羽に触れることも抱きしめることもできず、近づくだけで吐き気を催しそうになっていたからな。絵凛との最初のカウンセリングの時も、正直全く期待していなかったんだ。彼女が『生理的療法』を提案してくるまでは。生理的な欲望を利用して、心理的な認知反応を再構築するというやり方だ。最初は指先が触れ合うだけの基礎的な段階だったが、次第に抱き合い、キスもできる
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