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第4話

مؤلف: 亜優
胸の奥から一瞬にして血の気が引き、代わりに鋭い氷の破片をぎっしりと詰め込まれたかのような衝撃が走った。

珠羽はその場に立ち尽くし、暗闇の中で激しく求め合う二つのシルエットを見つめたまま、自分の呼吸すらほとんど感じられなくなっていた。

パッと、不意に照明が点灯した。

先ほどまで密かに愛を確かめ合っていたはずの海吏が、いつの間にか彼女のそばに戻ってきていた。

それどころか、彼の方から自ら珠羽の手首を握ってきた。

「どうしてこんなに手が冷たいんだ?」

彼はすぐに手を離したが、その声には明らかな罪悪感が混じっていた。

さらに彼は言い訳のように続ける。「すまない。暗闇の中だとしても、やっぱりお前を抱きしめたり、キスしたりすることはできなかった。こんな場でお前に寂しい思いをさせて……」

珠羽は自分の視力がこれほどまでに優れていることを恨んだ。優れすぎているせいで、彼の薄い唇に、艶やかな水気を帯びた紅の跡が残っているのがはっきりと見えてしまったからだ。

彼の瞳に浮かぶ気遣わしげな表情と、彼が先ほど犯した裏切り。その残酷なまでの乖離が彼女の心をも真っ二つに引き裂いていく。

けれど幸いなことに、彼女はすでに底知れぬ苦痛を味わい尽くしていた。だからこそ、今はまだどうにか表情を崩さずに保つことができていた。

「悪いのはあなたじゃないのかもしれない。私が思い上がって……」

――私が思い上がっていた。私たちの絆を過信し、あなたを救えるなどと自惚れていた。

彼女が言葉を言い終えるより早く、頭上から突如として凄まじい亀裂の音が響き渡った。

巨大なクリスタルのシャンデリアが激しく揺れ、会場は一瞬にしてパニックに陥った。

「危ない!」

海吏は猛烈な勢いで彼女をその腕の中に引き寄せ、自らの背中を盾にして、降り注ぐ破片を遮った。

抗う間もなくその胸へと力任せに引き込まれた珠羽は、自分を抱きしめる両腕の力強さをはっきりと感じ取った。

彼が私を抱きしめている――その事実に、彼女は一瞬だけ意識が遠のくような錯覚を覚えた。

しかしその直後、人混みの中から別の騒ぎ声が上がった。

「あっちだ!女の人が下敷きになってる!早く来てくれ!」

海吏の身体がビクッと硬直し、珠羽を抱え込んでいた腕の力が無意識のうちに緩んだ。

「海吏!痛いっ!」涙声で助けを求める絵凛の声が、はっきりと耳に届いた。

その瞬間、海吏の瞳から最後の一筋の迷いが完全に消え去った。

「ここにいて、動くな。すぐに戻る!」彼は切羽詰まった声で言い残し、素早く珠羽を太い柱の陰へと押しやった。

そして、一度も振り返ることなく、声のした方向へと駆け出していった。

珠羽はその後ろ髪を引かれる様子すらない決然とした背中を、ただじっと見つめていた。

彼は自分の危険を顧みず、とっさの危機から私を救ってくれた。

しかし同時に、私を置き去りにして、躊躇いもなく絵凛の元へ向かうこともできる。

彼が絵凛に抱いているのは、本当に彼自身が言うような、ただの「生理的な欲求」なのだろうか?

おそらく、彼自身すら分かっていないのかもしれない。

あの無意識の焦燥と思いやりに満ちた行動は、とうの昔に「治療」という言い訳の境界線を越えてしまっている。

その時、さらに大規模な崩落が起きた。

頭上から崩れ落ちてくる装飾ドームを前に、珠羽は無意識のうちに助けを求めていた。「海吏……」

だが、その弱々しい声は人々の悲鳴と喧騒に掻き消された。パニックになって逃げ惑う人波の中で必死に身をかわす彼女の目に映ったのは、絵凛をしっかりと抱きかかえて去っていく海吏の後ろ姿だけだった。

ガシャン!

重い金属製の骨組みが彼女の左脚に激しく叩きつけられ、身を裂くような激痛が一瞬にして全身を駆け巡った。

彼女の意識は、そのまま深い闇へと沈んでいった。

……

ツンとした消毒液の匂いが鼻を突く。

誰かが自分の手を強く握りしめているのを感じながら、珠羽は重い瞼をゆっくりと押し上げた。

「珠羽ちゃん!目が覚めたのね?」心配に震える、泣き出しそうな声が響いた。

首を巡らせると、目を真っ赤に腫らした海吏の母親、五十嵐明音(いがらし あかね)がベッドの傍らに座っていた。

「明音さん……」口を開くと、喉はひどく干からびてしゃがれた音しか出なかった。

「無理に喋らなくていいのよ。目が覚めて本当によかった……心臓が止まるかと思ったわ」明音は慌てて珠羽を宥めながら、再びボロボロと涙をこぼした。

「あの馬鹿息子、あなたを守りきれないなんて!話は全部聞いたわよ!彼が来たら、絶対にただじゃ……」

言葉が終わるより早く、病室のドアが静かに押し開かれ、海吏が部屋に入ってきた。

蛍光灯の光に照らされた彼の顔面は蒼白で、目の下には濃いくまを作り、白いシャツにはまだ少し灰の汚れがこびりついていた。

「母さん……珠羽」

明音は弾かれたように立ち上がると、彼の顔を真っ直ぐに指差し、怒りのあまり全身を激しく震わせた。

「よくもノコノコと顔を出せたわね!見なさいよ、あなたが珠羽ちゃんをどんな目に遭わせたか!左足は骨折、全身傷だらけじゃない!

海吏、あなた頭がおかしくなったの?この子を一人であんな場所に置き去りにするなんて!」

海吏は明音の怒りを一身に浴びながらも、その視線は珠羽の血の気を失った顔に釘付けになっていた。

「すまない、珠羽」彼の声はひどく掠れていた。

「あの時はあまりに混乱していて……絵凛の方が崩落箇所に近かったから、俺はただ……」

彼は言葉を切り、喉仏を上下させた。「彼女の方が、危険だと判断したんだ」

珠羽は静かに彼を見つめていた。その顔には、もはや何の感情も浮かんでいない。

「海吏」彼女は彼の弁解を遮った。その声はひどく淡々としていた。「もう、言い訳はしなくていいわ。

あなたはただ、あの瞬間、絵凛の命の方が私の命よりも重いと思った。それだけでしょう?」

海吏の目が驚愕に見開かれ、まるでその言葉に焼かれたかのように、その場に縫い止められた。

珠羽はもう彼を見ることはなく、ゆっくりと目を閉じた。

「出て行って」深い疲労を滲ませた声で、静かに言い放った。

「聞こえなかったの!ここにいては目障りよ!」

明音がすぐさま歩み寄り、涙を拭いながら、立ち尽くす彼を力任せに病室の外へと押し出した。

バタンと背後でドアが閉まり、外の世界のすべてが遮断された。

珠羽は目を閉じたまま、左脚から伝わる鈍い痛みを感じ取っていた。

奇妙なことに、この五年間、ずっと胸の奥にくすぶり続けていたあの締め付けられるような切なさは、彼が別の女を抱き抱えて去っていくのを目にしたあの瞬間に、完全に焼き尽くされてしまったようだった。

今やここには、冷え切った灰だけが残されている。

しばらくして目を開けた珠羽は、スマートフォンを手に取ると、不動産アプリでいくつかの賃貸物件を絞り込み、退院の日に合わせて一括で内見の予約を入れた。

今、彼女の心にはただ一つの思いだけが残っていた。

――もう、去るべき時だ。

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