Semua Bab フィギュアオタクで手に触れた物をなんでもすぐ壊す僕が異世界全民ロードサバイバルで人類の分断を修繕する: Bab 21 - Bab 30

35 Bab

第021話 詩華と逃走①

「傑くん! 乗って!」 詩華が乗り込んだ車から僕に手を差し伸べる。「え──────?」 僕は詩華と一緒に車に乗り込むつもりはなかった。  詩華を逃がして、それで終わりだと思っていたのだ。「でも……」 僕は戸惑い、身体が硬直する。「いいから早くッ! ここにいたら傑くんも危険よッ!」 詩華にそう言われ、僕は考えるより先に身体が動く。  背後で雪崩を打って押し寄せる信者の怒声とも奇声ともとれる雄叫びが間近に迫り、身の危険を感じたということもあるが、とにかく僕は詩華と一緒に車に乗り込み、駐車場から急発進した。「……な、なんだこの状況……」 急に僕は自分の今の状況に気づき、ドギマギしてしまう。「じ、自分の最推しのアイドルと、同じ車に乗っているなんて……」 今にも僕は白目を剥いて気絶してしまいそうだった。  しかし、こんな夢みたいな一時の一分一秒だって無駄にすることはできないと自分を鼓舞し、必死に意識を保ち続けた。「で、でも、これは本当に現実? 今、僕の隣にいるのは国民的アイドルグループの不動のセンター・詩華こと「シーカ」なの?」 僕は横目で詩華を盗み見る。  夢や幻じゃなかった。  僕の座る座席の隣、手の届く範囲、同じ社内に詩華がいた。  僕は詩華に視線が釘付けになる。  しかし、その時、僕はある事に気が付いた。「……震えている?」 僕は詩華が硬く手を握り、身体を震わせている事に気が付いた。「ご、ごめんなさい。す、凄く怖くて……」 僕は意外に思う。  何万人という信者の前で堂々と歌を披露し、会場全体を魅了する詩華が、こんなにも震え、恐怖に怯えるなんて……。「……そうだよ。詩華も僕と同じ十六歳。アイドルじゃなかったら普通の女の子だったはずなんだから……」 僕は思わず手を伸ばし、詩華の手をそっと包む。「確かに怖かったね。でも詩華はやっぱり凄いよ。さっきの「こんな時だからこそライブを行いたかった」という詩華の信念。胸を打たれたよ。人類が危機に直面し、人々が明日に不安を感じ、希望を持てない今だからこそ、自分達「偶像」が人々を照らす灯りになりたいなんて、とても僕と同じ十六歳の女の子の台詞とは思えなかったね」 僕は「自分じゃ一生かかっても絶対に
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-07
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第022話 詩華と自己紹介

「僕は傑。詩華たちの事はデビューした当時からずっと信者だよ」「そうなの? ありがとう」 お世辞でも社交辞令でもなんでもなく、本心から詩華は嬉しく思ってくれているようだと僕は感じた。「デビューしたのは二年前。都内のライブ会場で収録したステージの動画を公開したのが始まりだよね。本当に偶然なんだけど、たまたまその動画がアップされて数分後に観たんだけど、その瞬間に体中に電気が走ったかのような感動を覚えたんだ。それ以来、正真正銘の詩華という沼にハマった信者の一人だよ」「あ、あの動画を観たのね……。あのライブはゲリラ的に行われたライブで、色々と問題があったみたいで数日で消されてしまったけど、確かにあのライブが私たちがデビューした瞬間だったの」「そうだね。あの動画は削除されたのか、閲覧が出来なくなってとても残念だったよ。でも、それから詩華たちはテレビ出演を果たし、そうしたら瞬く間に人気を博し、今では押しも押されもしない国民的アイドルグループだもんね」「そうなれたのは傑くんのようなファンがいてくれるからよ。ねえ、傑くん、これからもずっと私たちの───いえ、私のファンでいてくれる?」 詩華は真っ直ぐ僕を見つめ訴えかけてきた。  僕はもう何度目かわからない胸の高鳴りを覚える。  どうしたって最推しのアイドルと目が合う僥倖は、幸福感が爆発せずにはいられない。「も、もちろんだよ」 かろうじて僕はそう返事をする。「それじゃあ、《天使》の《審判》で異世界に行っても、ずっと一緒にいてくれる?」「い、異世界でも? も、もちろんだよ。僕はずっと詩華と一緒にいる。どこでだって君のファンであることはかわらないよ」 僕がそう答えると、詩華は心底安心したように、胸を撫で下ろした。「よかった……。私、本当に不安で不安で……。だって最初の《審判》で四十二歳の人たちは四十二人しか生還しなかったし、次の三十五歳の人たちなんて、誰も生還しなかったから……。そんな異世界でのサバイバルに自分が参加するなんて……」 その時、僕は気が付く。「詩華が震えている……」 それは僕にとって驚きの光景だった。  動画やライブ、そしてテレビでみる詩華はいつも堂々としていて、国民的アイドルグループの不動のセン
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-08
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第023話 詩華との約束

「はい、これ。私の連絡先」 不意に詩華が僕にスマホの画面を見せる。  そこにはコミュニケーションアプリのフレンド登録を行うQRコードが表示されていた。「ええ? こ、これって詩華のコミュニケーションアプリのフレンド登録? ぼ、僕が詩華とフレンド登録をするの?」「そうよ。だってそうしないと傑くんと連絡がとれないじゃない」 詩華は、それは当り前じゃないと言った様子だったが、僕はあまりの出来事に、腰を抜かしそうになった。「自分が最推しの……それも国民的アイドルグループの不動のセンターとフレンド登録を行うなんて……」 僕は震える手で詩華とフレンド登録を行う。「あ。そうだ。このアカウントは絶対に秘密だから、私とのメッセージのやり取りを他の人に話したり、ましてやSNSに公開したりするのは絶対にしないでね」 そう釘を刺されたが、僕は当然、そうしたマナーは心得ていて「も、もちろんだよ。絶対に漏らしたりなんかしないよ」と固く誓う。「もしこのアカウントがバレたら大変なことになるんだから……。ねえ、そうでしょう?」 詩華は車を運転するアイドルグループの事務所の関係者と、助手席に座るマネージャーさんに悪戯っぽく確認する。「そうだね。そこでの会話の内容が漏れたら、全国のニュースのトップを飾るだろうね」 「国民的アイドルの素顔の一部が漏洩───なんて見出しでね」 事務所の関係者とマネージャーさんは冗談めかして笑うが、僕は自分が受け取ったフレンド登録の重圧に、スマホを持っていられない程の重量を感じた。「傑くん、ありがとうございます。おかげで助かりました。そして私たちも、君たちと同じ位の子を持つ親です。詩華も、そして君も異世界に行くことを私たち大人が止められなくてごめんなさい」 「こんな事を傑くんに頼むのは筋違いかもしれない。傑くんだって異世界に行くんだ。大変さは同じだろうけど、どうかお願いさせて欲しい」「「どうか詩華を守ってください。そして詩華も、傑くんも無事に異世界から帰ってきてください」」 僕はそうお願いされて、身が引き締まる思いだった。  もちろん、僕も異世界に行くことに不安どころか、恐怖でいっぱいだったが、今はこの場にいる全員を安心させるために、期待に応えることにした。「はい。任せてください。僕は必ず詩華を守ります。そして詩
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-10
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第024話 混乱

「なんだ~? どうしたっていうんだよ」 うずくまる僕を軍毅が見下ろす。「傑くんッ! 大丈夫ッ!?」 詩華が心配して僕に寄り添ってくれる。「どうして……。詩華……。僕は君との約束を破ったのに。どうしてまだ僕を気遣ってくれるの?」 声には出なかったが、僕は詩華の親切に困惑した。「でも、どうして僕は約束を破ったんだ? 前世や別世界での僕は、現世の僕に何の関係もないのに……」 僕はさらに頭を抱える。「どうして……どうして……どうして……」 思考が定まらず、僕は錯乱しそうになる。「僕は誰だ? 前世と別世界、そして現世の僕……一体どれが本当の僕なんだ? 僕は誰を信じて行動すればいいんだ……?」 僕はギュッと目を閉じて拠り所を探す。 すると脳裏に浮かんだのは、まずは父と母だった。「傑! 異世界は過酷だぞ! 父さんでさえ、何度もう駄目だと思ったか……」 学生時代は相撲部の主将として鳴らし、身長二メートル十五センチ、体重百五十キロの巨躯にして、細菌化学兵器の研究者という文武両道を兼ね備えた父でさえ、死を覚悟した異世界。「異世界では自分を信じられない者から命を落とした。一瞬の判断の遅れが死につながる。異世界はそんな所だ」 自衛隊の「鬼陸将補」と異名を取り、紛争地に後方支援で派遣された事もある母。  そんな死地を経験した母でさえ、恐ろしいと感じた《天使》の《審判》。「僕は覚悟が足りなかった……。認識が甘かった……。僕なんかが異世界で生き残れるわけないじゃないか」 僕は自分の不甲斐なさを悔やむ。「今さら後悔しても遅いんじゃない? それに私の事も忘れてしまったの?」 次に僕の目の前に現れたのは、僕の最愛の妹だった。 僕の妹・虹心は《天使》がこの世界に現れた直後、「《消失12》」という惨事で《天使》に殺された。  《天使》は人類への見せしめとして、全世界の十二歳を全員、消失させたのだ。  その巻き添えになった僕の妹。  妹もアイドルを目指し、僕が一番の信者になってやると約束していた。  その約束を果たす間もなく、失われてしまった妹。「忘れてなんかいない
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-11
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第025話 立ち直り

「詩華……。ごめん。僕は君との約束を破ってしまった……」「何があったの? どうして急に……傑くんは人が変わってしまったみたいに冷たくなってしまったの……?」 僕はその事を詩華に説明したかった。  前世、そして別世界の事。  でもそれを説明しようとして、急に不安に駆られる。「前世や別世界なんて本当にあったのか? 現世の僕の夢幻───もしくは妄想なんじゃないか?」 そう不安を感じた僕は口から言葉が出なくなってしまった。「信じていたのに……。傑くんを信じていたのに……」 詩華は俯いて強く手を握る。  彼女のそんな手の甲に、涙の粒が一つ二つ落とされた。「なんだか知らないが、ガラクタと交換で水と食料をくれるんだろ? ほらよ。俺たちが集めたガラクタだ。全部くれてやるから水と食料をよこせ」 軍毅が乱暴に僕と取引を開始する。  僕は交換用の水と食料を全部取られたが、確かに軍毅の集めたガラクタは、とても量が多く、むしろ僕にとって有利な取引だった。 「よしよし。これで当面の水と食料は確保できたな。じゃあ、俺たちは先を急ぐぜ。何せ《天使》の指定するゴールは、まだまだ先だからな!」 そう言って軍毅は僕の前から去る。  その際、詩華の手を取ると、引きずるように彼女も一緒に連れて行った。 一人残された僕は、大量のガラクタの前で呆然としていた。「駄目だ……。こんなところで挫けるわけにはいかない。前に進まないと……」 僕は懸命に自分に言い聞かせ、自己を奮い立たせようとする。「約束を……。約束を守るために……」  ※ ※ ※ 何とか自分を取り戻した僕は、今回の取引で獲得したガラクタをトラックに積み込む。「うわ……。荷台がガラクタでいっぱいだ」 文字通り、ガラクタが山となり、荷台に積んだスポーツカーを覆いつくす程だった。 でもその光景は僕にとっては財宝が積まれた宝船のようにも見える。「資源はもう十分だ。いや、十分過ぎるほどだね。よし、僕も異世界の攻略に本格的に乗り出そう。今は何も考えず、その事に集中しよう。そうでないと……」 僕は沈みゆく太陽に目をやる。  間もなく日が暮れ、今日という一日が終わろうとしていた。  それは《天使》が初心者にたった一日だけ与えた「保護期間」の終了を
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-12
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第026話 様変わりした異世界

「うわぁ……。なんだこれ……」 目を覚まし、上体を起こした僕は、周囲の光景に驚く。「昨日までと様子が一変しているじゃないか……」 それは異世界の周囲の状況が、昨日までと全く違っている事への驚きだった。 異世界は生物───正確にはモンスターで溢れていた。 しかし、モンスターと言っても、それらはウサギやネズミのような小動物系のモンスターや、異世界ではお馴染みのスライム、他には近づいた生物を捕獲する食虫植物のようなモンスターで、凶悪さはなく、どこか可愛らしさがあった。そして空には翼の生えた猫や、鱗に覆われた鷲のような飛行型のモンスターも旋回していた。「これが本来の異世界の姿。《天使》が、僕たち初心者に、たった一日だけ与えた「保護期間」が終了した姿なんだね」 僕は初めてみる光景に目を奪われる。 しかし「同級審判全体チャンネル(=ワールドチャット:今回の「《審判》」に挑む戦友たちの「呟き」が次々と表示され、ログとして流れる)」を見ると、そうした異世界のファンタジーな光景に目を奪われてばかりもいられないようだった。「このモンスター、見た目は小さくて可愛いのに、凄く凶暴だ!」 「油断していると空から急降下して襲ってくる! 皆! 空飛ぶ猫に気をつけろ! 爪が鋭くて大怪我をするぞ!」 「スライムって雑魚モンスターじゃなかったのかよ! 攻撃が全く効かない! どうやって倒すんだ!?」 僕は無意識に、黒鉄宝箱を開けて獲得した工事現場で使うヘルメットを被り、ゴムタイヤを切って作った肩、肘、膝当て、それに鉄板や木の板で作った胸当てなど、自作した防具を装備する。 するとその時、「ベタンッ!」と粘着質な物がガラスに張り付くような音と共に、トラックが揺れた。 スライムがフロントガラスに飛びかかってきたのだ。「こ、このスライム……。僕を狙っている……」 スライムは身体を伸ばし、僕に迫ろうとするが、フロントガラスが何かわからないようで、透明な遮蔽物を、何度も確かめるようにペタペタと叩いた。「確かスライムって物を溶かす酸を持ったモンスターなんだよね……。トラックのフロントガラスが溶かされたら大変だ」 僕は釘やナットを埋め込んで殺傷能力を高めた、これまた手製の釘バットを握ると、慎重にトラックの運転席から外に出る。「昨日までのゴブリンから宝
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-13
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第027話 異世界での初戦闘

 幸い、スライムは動きが遅く、僕がスライムに掴まる事はなかったが、有効なダメージを与えることができず、僕は打つ手を見出せず、手をこまねいた。「困った……。スライムってどうやって倒したらいいんだろう。僕の戦闘能力が低いだけで、レベルが高ければ倒せるのかな?」 僕は《天使》の《審判》の経験者で、異世界から生還した父と母の教えの中に、スライムの倒し方はなかっただろうかと記憶を思い返した。「そう言えば、スライムは熱に弱いって言っていたな。炎の魔法でも使えたら倒せるのかな?」 僕は父と母の教えを思い出すが、残念ながら、僕は魔法を使うスキルは有していなかった。  その事を残念がっていたその時───。 不意に僕の目の前を何かが横切る。 驚いて目で追うと、それは角の生えたウサギのようなモンスターだった。「新手か……!」 僕はスライム以外に、他のモンスターに狙われた事を痛感した。「スライムだけに時間を取られちゃ駄目だよね。ここは異世界。次々とモンスターが襲ってくるんだ。早く攻略法を見つけないと」 そうは思ったが、僕はスライムに対して有効な攻撃方法は見出せなかった。  しかし、代わりと言っては何だが、ウサギ型のモンスターに対しては有効な攻撃手段を見出せそうだった。「確かこのモンスターは「角ウサギ」。その特徴的な角が弱点だったよね」 僕は左右に軽やかに飛び跳ねながら僕との距離を詰める角ウサギに身構える。「こうして左右に移動し、相手を翻弄した後、角ウサギは突進してくるはず」 僕は父と母に教えられた角ウサギの行動パターンを思い出しつつ、相手の動きに集中する。  すると角ウサギは、思った通り、頭を下げて角を突き出し、僕に一直線に突き進んできた。  その事を待ち構えていた僕はタイミングを合わせ、釘バットを一閃する。  乾いた打撃音が響き渡り、僕の釘バットが角ウサギの角を、難なく打ち払った。  幸い、この一撃で角ウサギの角は折れ、弱点を突かれた角ウサギは目を回してフラフラとよろめいた後、バッタリと倒れて動かなくなった。「やったぞ。初めてモンスターを倒したぞ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-14
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第028話 初戦闘の戦果

 僕は倒した角ウサギから「ウサギ肉」と「毛皮」を獲得する。 ウサギ肉は貴重な食料で、毛皮は取引で使用する交換アイテムとして使えそうだった。「ウサギ肉は脂がのっていてとてもジューシーだ。焼いても美味しいけど、煮込んでも美味しそうだ」 僕は久しぶりの温かい食事に舌鼓を打つ。  異世界に来てから圧縮ビスケットしか口にしておらず、また、自分で仕留めたモンスターの肉にかぶりつくという達成感が、よりウサギ肉を美味しく感じさせてくれた。「しかし、スライムに勝てなかったのは悔しいな……。なんとか上手い攻略方法はないだろうか……」 僕はスライムの行動を思い返し、最後にスライムが角ウサギの角を食べていた光景を思い出す。「スライムは角が好きみたいだね。骨とかも食べるのかな?」 僕は今、自分が食べた角ウサギの骨に目を落とす。 思い立った僕はトラックの荷台から錆びたドラム缶を取り出すと、ブリキのゴミ箱の蓋に穴を開け、ドラム缶に被せる。  そしてドラム缶の中に角ウサギの骨を入れた。  その後、僕はトラックを走らせ、スライムを見つけると、スライムに気付かれるようにドラム缶を設置する。  すると期待通り、スライムが近づいてきてドラム缶の中に入り、角ウサギの骨を食べ始めた。「やっぱり。スライムは角や骨など、固い物が好きみたいだ」 手応えを感じつつ、僕はドラム缶の周囲に薪を並べると火をつける。  瞬く間にドラム缶は炎に包まれ、中のスライムにダメージを与えた。 スライムはドラム缶から出ようとするが、僕がドラム缶に被せたブリキのゴミ箱の蓋は、外から中に入ることはできるように漏斗状にしていた為、中から外に出ることはできなかった。「少し残酷な気もするけど、熱での攻撃が有効なスライムにはこうするしかないからね……」 すぐにスライムは動かなくなり、ドロドロに解けて完全な液体状になってしまった。  僕はその変わり果てたスライムの状態を覗き込み、ある事に気が付く。「なんだか凄く良い匂いがするぞ……」 僕はコップを取り出すと、スライムをすくって飲んでみる。  すると爽やかな清涼感と、ほのかな甘さが口いっぱいに広がった。「お、美味しい。まるでソーダ水みたいじゃないか」 僕は
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-15
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第029話 レベルアップ

「レベルが上がったけど、特に変化はないな……」 僕は自分の身体を見渡すが、特にそれらしい変化はなかった。「まだレベルが一つ上がっただけだし、そんなに変化はないのかもしれないな」 そう思いつつ、心なしか釘バットを振る腕が軽くなったような気はしていた。「でもこの調子ならもっとレベルを上げられそうだぞ」 僕は角ウサギを狩り、角ウサギの骨でスライムをおびき寄せ、ドラム缶の罠で倒す攻略法に手応えを感じていた。「スライムをおびき寄せるドラム缶も改良しよう。それに大量に獲得した角ウサギの肉も、腐らないように処理しておかないと……」 僕は「改装」のスキルを使ってドラム缶の罠を整備し、さらに「燻製器」も作ってウサギ肉を燻製にし、保存性を高めた。 そしてスライム水は空いたペットボトルや小瓶に詰めていたが───。「あれ? あのスライム……。色が違うぞ……」 僕はある事に気が付く。  それはスライムの「色」についてだった。  よく目にするスライムは、水色で青っぽかったが、他にも緑や黄色、さらには赤色のスライムがいるようだった。「色違いのスライムを倒すと、違う味のスライム水を得られそうな気がする……」 僕の予想はその通りで、さらに、その予想を上回る効果もあった。「わぁ。緑色のスライムのスライム水は、ミントの様に爽やかで、とても気持ちが落ち着くぞ」 僕はその美味しさに感動すると共に、ステータスウィンドウを確認すると、魔法を使うのに必要なマジックポイントや、細かい作業を集中して行う際の精神力が回復する事を発見する。「青色のスライムのスライム水は体力が回復する効果があったし、これは黄色のスライムと赤色のスライムも、どんな効果があるのか楽しみだね」 僕は「黄色のスライム」と「赤色のスライム」もドラム缶の罠で仕留めて効果を確かめる。「うわ! 酸っぱい! レモンのような味かと思ったけど、これは酢のような酸っぱさだ!」 黄色のスライムのスライム水は、美味しそうな見た目とは裏腹に、刺激臭の強い酢のような味と香だった。「腐っているわけじゃなさそうだけど、飲料水には適していないね。でも一応持っておこう」
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-16
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第030話 新たな宝箱①

 角ウサギから食料を、そしてスライムから飲料水を獲得した僕はトラックを走らせる。  モンスターがいること以外は、異世界は長閑な草原が広がり、渡る風も気持ち良かった。「このままゴールまで、ゆったりとドライブができればいいけど……」 僕はそう思ったが、一つ、問題があった。「トラックのエネルギーが半分を切ってしまった」 それは魔力石のエネルギーが残り少なくなっていることだった。「これまでの走行距離とエネルギーの減りを見ると、今日一日は走行できそうだけど、それまでに新たな魔力石を手に入れないと、明日にはトラックは動かなくなってしまう……」 その事に危機感を覚えた僕は、何か手立てはないかと周囲を見渡した。 すると道路脇に車が停められ、四人チームで《天使》の《審判》に挑む戦友を見つけた。「どうしたんだろう……。こんな所に車を停めて」 何か困っている様子だと察した僕はトラックを減速させて、戦友の前で停車する。「こんにちは。どうしたの、こんなところで。何かあったの?」 僕はトラックからは降りず、またいつでもトラックを発進できる状態で、運転席から顔を出す。  《天使》が僕たちに設けた初心者保護期間は終了している。  戦友が僕を襲わないとも限らない為、僕は油断しないようにしたのだ。 父と母からも、僕はこう言われていた。「異世界でのサバイバルは極限状態の連続だ」 「《天使》の《審判》に挑む仲間同士でも、意見が割れ、また生き残るために他者を押し退ける」 「最も怖いのは凶悪なモンスターに襲われることじゃない」 「利己に染まった人間が最も恐ろしいのだ」 《天使》の《審判》に挑み、無事、異世界から生還した父と母は、繰り返し僕にそう言って聞かせていた。 しかし、今回の戦友たちについては、それは杞憂だった。 彼らは本当に困り、車を停めていただけのようだった。「宝箱を見つけて取りに行ったんだが……」 「食虫植物のモンスターがいて襲われたの」 「仲間の一人が食虫植物が噴射した煙を吸ってしまって……」 その仲間の様子を見てみると、目は見開き、口はポカンと開かれ、まるで酔っぱらっているかのような状態だった。  周りの仲間はとても
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-17
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