フィギュアオタクで手に触れた物をなんでもすぐ壊す僕が異世界全民ロードサバイバルで人類の分断を修繕する

フィギュアオタクで手に触れた物をなんでもすぐ壊す僕が異世界全民ロードサバイバルで人類の分断を修繕する

last updateLast Updated : 2026-08-21
By:  柳アトムUpdated just now
Language: Japanese
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宇宙からある日突然、「天使(セラフィム)」を名乗る二柱の巨人が地上に舞い降りた。 その姿はとても神々しかったが、彼らが告げた言葉の内容は、人類にとっては死の宣告───「審判(ジャッジ)」だった。 しかし「天使(セラフィム)」は冷酷ではなかった。 人類に滅亡を免れるチャンスを与えてくれたのだ。 「今から人類を全員、異世界に転移させる」 「そこで世界の果てにあるという「至宝(シジル)」を見つけることができれば、人類を滅ぼすことをやめましょう」 こうしてフィギュアオタクで手にした物をなんでもすぐ壊す(=分解してしまう)僕も、異世界で人類の滅亡を回避すべく、全民ロードサバイバルの旅に出ることになってしまった。

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Chapter 1

第001話 裏切られて死んだスクラップ改装師(改稿)

 僕は夢を視ているようだ。

 様々な場面が浮かんでは消え、近づいては遠ざかる。

 とても目まぐるしい。

「それともこれは過去の記憶かな……?」

 僕は夢と現実の区別がつかない状態になっていた。

「お前の「改装」スキルは本当に凄いな。どんなスクラップも新品同様に作り直せるんだから」

 誰かが僕にこう言った。

 そう言われた事を、はっきりと覚えている。とても懐かしい。

「でも僕にこう言ったのは誰だっけ……?」

 名前を思い出せない。でも僕にとって「友人」で、ビジネスパートナーであった事だけは覚えている。

 僕のスキルは「改装」で、壊れた機械を直したり、改造したりすることができる。

 でも逆に云うとそれしかできない。「改装」は後方支援系のDランクスキルだった。

 僕は冒険者になるべく、冒険者ギルドに登録したが、結局、誰も僕をパーティーに加えてはくれなかった。そして僕は役立たずの烙印を押され、路頭に迷った。

 そんな僕を救ってくれたのが、この「友人」だった。

 友人はAランクの冒険者で腕っぷしが強く、ダンジョンの奥深くまで潜って様々なスクラップを集めてくることができた。

 そしてそのスクラップを僕が「改装」し、人々の役立つ「製品」にして売り出した。

 すると商品はたちまち大人気となり、飛ぶように売れた。

 商売は順調だった。僕は飢え死にせずに済むようになった。

 そんな僕には恋人がいた。

 彼女は僕の幼馴染で、どんな時も一緒にいてくれて、誰よりも僕の成功を喜んでくれた。

「苦労をかけた彼女をやっと笑顔にすることができて嬉しかったな……」

 しかし生活が安定すればする程、彼女の心が僕から離れて行く「溝」を感じた。

 そしてそれは危惧ではなかった。現実だった。彼女の心は「友人」に傾いていた。

 僕は、僕を欺き、僕に内緒で逢瀬を重ねる二人を問い詰めた。

 そして決定的な現場を抑え、言い逃れができない状況に二人を追い込んだが、二人が諦め、僕に謝罪するかと思いきや、二人の取った行動は僕の想像とは全く違っていた。

 二人は開き直り、僕にこう言い放ったのだ。

 まず彼女は「壊れた機械を直す事しかできないあなたじゃ、私の欲しい人生はくれないのよ」と僕を蔑んだ。

 彼女の言葉は鋭いナイフとなって僕の胸を貫いた。とても衝撃的で痛かった。

 そして友人は「もうお前は十分役に立ってくれた。俺たちはすでに大金を稼いだ。これ以上は必要ない」と僕を切り捨てた。

「大金を稼いだ? そんな馬鹿な! 僕の改装したスクラップは売れるには売れたが、大儲けとはいえない程度だ! 一体いつそんな大金を稼いだっていうんだ……!?」

 そこまで口にして僕は気づく。

「そうか……。本当は僕の改装したスクラップは高値で売れていたんだ……。でも友人は必要最低限の報酬しか僕に支払わず、残りの大金を独り占めしていたんだ……」

 僕は騙されていた事に気づき、両膝をつく。

「これでお別れだ」

 友人は指を鳴らして合図を送った。

 Aランク冒険者の友人には手下が大勢いた。その手下が僕を取り囲む。

 僕に成す術はない。僕は「改装」しかできないのだから。

 そして僕は友人も恋人も、成功も、そして命も奪われた。

「短く、そして虚しい人生だった」

 ポツリと呟き、僕は目を覚ます。

「あれ……? 僕は殺されたんじゃ……?」

 その瞬間、僕の脳内に大量の記憶が流れ込む。

 僕は白石しらいし まさる。十六歳。

 ごく普通の高校生だ。

「今のは僕の前世の記憶……? 白石しらいし まさるに前世の記憶が蘇った? それとも前世の僕に、今世の白石しらいし まさるのこれまでの人生が、記憶の情報となって流れ込んだ……?」

 どちらにせよ、情報の大波に呑まれた僕は、激しい頭痛と眩暈に苦しめられる。

「でもどうして「····」に……? 今日は僕が「《天使セラフィム》」が人類に科した「《初級文明審判ジャッジ》」に挑む日だっていうのに……」

 僕はようやく痛みと眩暈から解放され、頭を抱えながらベッドを降りる。

「いや、逆かな……。「····」だからこそ───僕が「《天使セラフィム》」の「《初級文明審判ジャッジ》」に挑む日だからこそ、こんな事が起こったのかもしれない」

 僕は鏡の前に立ち、まるで今日初めて見る顔であるかのように確認する。

「起きているか、まさる。今日は「···」だぞ」

 母が心配して僕の部屋のドアをノックし、ドア越しに声を掛けてくれる。

まさるー! 起きたかー!? 朝食の準備が出来ているぞー! 顔を洗ってこっちに来なさーい!」

 キッチンで僕の朝食を用意してくれている父も僕を呼ぶ。

「わかった。すぐに行くよ」

 僕は返事をして両親を安心させると、「《天使セラフィム》」が人類に科した「《初級文明審判ジャッジ》」に挑むべく、着替えを始めた。

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第001話 裏切られて死んだスクラップ改装師(改稿)
 僕は夢を視ているようだ。  様々な場面が浮かんでは消え、近づいては遠ざかる。  とても目まぐるしい。「それともこれは過去の記憶かな……?」 僕は夢と現実の区別がつかない状態になっていた。「お前の「改装」スキルは本当に凄いな。どんなスクラップも新品同様に作り直せるんだから」 誰かが僕にこう言った。  そう言われた事を、はっきりと覚えている。とても懐かしい。「でも僕にこう言ったのは誰だっけ……?」 名前を思い出せない。でも僕にとって「友人」で、ビジネスパートナーであった事だけは覚えている。  僕のスキルは「改装」で、壊れた機械を直したり、改造したりすることができる。  でも逆に云うとそれしかできない。「改装」は後方支援系のDランクスキルだった。  僕は冒険者になるべく、冒険者ギルドに登録したが、結局、誰も僕をパーティーに加えてはくれなかった。そして僕は役立たずの烙印を押され、路頭に迷った。 そんな僕を救ってくれたのが、この「友人」だった。 友人はAランクの冒険者で腕っぷしが強く、ダンジョンの奥深くまで潜って様々なスクラップを集めてくることができた。  そしてそのスクラップを僕が「改装」し、人々の役立つ「製品」にして売り出した。  すると商品はたちまち大人気となり、飛ぶように売れた。  商売は順調だった。僕は飢え死にせずに済むようになった。 そんな僕には恋人がいた。  彼女は僕の幼馴染で、どんな時も一緒にいてくれて、誰よりも僕の成功を喜んでくれた。「苦労をかけた彼女をやっと笑顔にすることができて嬉しかったな……」 しかし生活が安定すればする程、彼女の心が僕から離れて行く「溝」を感じた。  そしてそれは危惧ではなかった。現実だった。彼女の心は「友人」に傾いていた。  僕は、僕を欺き、僕に内緒で逢瀬を重ねる二人を問い詰めた。  そして決定的な現場を抑え、言い逃れができない状況に二人を追い込んだが、二人が諦め、僕に謝罪するかと思いきや、二人の取った行動は僕の想像とは全く違っていた。 二人は開き直り、僕にこう言い放ったのだ。 まず彼女は「壊れた機械を直す事しかできないあなたじゃ、私の欲しい人生はくれないのよ」と僕を蔑んだ。  彼女の言葉は鋭いナイフとなって僕の胸を貫いた。とても衝撃的で痛かった。  そして友人は「もうお前
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 三年前───。 人々が変わらぬ日常を過ごしていたある日。  地球上のすべての「スクリーン」「通信機器」「衛星信号」が同時に乗っ取られた。  そして「《天使》」と名乗る二柱の巨人が突如として現れ、地上に舞い降りた。  その姿は淡い光に包まれ、絵画の中に描かれた天使のように神々しかったが、彼らが告げた言葉の内容は、人々にとって、とても禍々しい死の宣告───「《初級文明審判》」だった。  彼らは、テレビ、パソコン、スマホ、タブレットなど、あらゆるスクリーンと通信機器、そして衛星信号を使って人類に言葉を告げる。「人類諸君。「《初級文明審判》」へようこそ」「喜びなさい。アナタたちは選ばれたのです」「審判対象=地球文明。文明等級=宇宙初級。  ……といっても諸君は「初級」と呼ぶにもおこがましいレベルの低さだが……」「これより一年後、今からワタシたちが選ぶ十一歳から六十六歳までの人類を異世界に転移します」「そこで君たちが「《至宝》」というゴールを見つければ地球文明の存続を認めよう」「さらに、もし人類が試練に三度成功した場合は、より高位の「《審判》」への参加を認めます」「但し、「《審判》」に失敗した場合は地球文明を抹消する」「本来なら今すぐにでも抹消しても良いのですが……。それ程までにアナタたちの文明等級は低すぎるのです。「《審判》」というチャンスを与えられてもらっただけでも幸運だと思いなさい」 そして《天使》は「《運命の2d6》」を振った。そして出た目は「四」と「二」だった。  その結果、全世界の四十二歳の者は全員、住んでいる国や地域や性別も立場も健康状態も何もかも関係なく、等しく異世界に転移させられ、地球上からいなくなった。  そして彼らは、異世界で命懸けの過酷なサバイバルを強いられ、次々と命を落としていった。  しかし幸い、四十二歳の者の中には、少数ではあるが生還する者がいた。  しかし、それらの幸運な生還者も「《至宝》」を見つける事はできなかった。 その為、《天使》の試練は続く事となった。 次に《天使》が「《|運命の2d6《ジェミニ・ディスティ
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第003話 元の白石傑の死亡記憶②(改稿)
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第004話 今世では、単独挑戦モードを選ぶ(改稿)
 僕と、そして僕と同じく、これから「《天使》」の「《審判》」に挑む全世界の十六歳の若者たちは、政府が用意した施設に集められた。 そこで、過去に「《天使》」の「《審判》」から生還した「経験者」から、最後の注意事項と、エールをもらう。 壇上に立ったのは僕の父と母だった。 自衛隊の「鬼陸将補」と異名を取る母。そして学生時代は相撲部の主将として鳴らし、身長二メートル十五センチ、体重百五十キロの巨躯にして、細菌化学兵器の研究者の肩書きを持つ父は、最初の「《審判》」から生還した数少ない「経験者」だった。「ご両親が「《審判》」の「経験者」だなんて、傑くんは本当に凄いね!」 僕の隣で詩華が嬉しそうに僕の手を掴む。 僕は女の子に手を握られ、そのこと自体はとても嬉しかったが「きっと傑くんはご両親から私たちでは聞けないような「異世界」での教訓を教えてもらっているでしょ?」と目を輝かせる詩華を見ると、彼女の目的は僕ではなく、僕が両親から教えられた「異世界の情報」なのではないかと勘ぐってしまう。 そしてついに僕たちは異世界に転移させられた。 全員が淡い光に包まれると、光の中に溶け込むかのように現実世界から「消失」したのだ。 次に僕たちが目を開き、周囲を見渡すと、どうやらそこは広々とした草原のようだった。 僕と同じく「《審判》」に挑む「戦友」たちは不安げにざわついたが、この場にいる全員の頭に《天使》が直接語りかけ、ついに「《審判》」のルールが告げられた。「若者諸君。異世界へようこそ」「早速、今回の「《審判》」のルールを説明します」「今回の「《審判》」は「草原サバイバル」だ」「アナタたちは車で七日以内に二千四百km先の補給地点に辿り着きなさい」「健闘を祈る。君たちが「《至宝》」を見つけられんことを」 説明はそれだけだった。 そして次の瞬間、僕たちは全員、自分の「ステータスウィンドウ」が強制的に開かれる。 そこにはシステムメッセージで次の選択肢が表示されていた。『《審判》に挑むモードを 選んで
last updateLast Updated : 2026-06-03
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第005話 壊れかけのサバイバル車両とたった一日の初心者保護期間(改稿)
 周囲はすぐに騒がしくなった。 僕と同じく「《天使》」の「《審判》」に挑む「戦友」たちは、ほぼ全員が「四人チームモード」を選び、協力して車の奪い合いを始めたのだ。「どけッ! この車は俺たちが最初に見つけたんだッ! この車は俺たちのものだッ!」「そうはさせないぞッ! これは有名なスポーツカーだッ! こんな高級車を易々渡したりするものかッ!」 全員が少しでも性能の良さそうな車に乗ろうと殺し合いでも始めそうな勢いだったが、ここで《天使》の科した「初心者保護期間」が、それを阻止した。 初心者保護期間。それは《審判》開始から一日は、僕たちはモンスターから襲われず、命も奪われないというものだった。「このルールは「戦友」同士にも当てはまるんだね。お互いに相手を攻撃できないから殺し合いに発展しなくて良かったよ」 僕は車を巡って醜く争う「戦友」を、どこか冷ややかな目で眺めた。「な、なんだよ、この初期資源の少なさは……。四人チームモードは資源が少ないって云うけど、これは少なすぎだろう……」「こんな資源量じゃ、すぐに飢え死にしてしまうぞ……」 別の場所では「初期資源」について嘆く「戦友」が多くいた。「四人チームモードは仲間と協力できるメリットがある一方、初期資源が少ないというデメリットがあったけど、そんなに少ないのか……」 僕はがっかりしている「戦友」を見て「四人チームモード」を選ばなくて良かったと胸を撫で下したが、自分の初期資源がどれくらいあるのか心配になり、ステータスウィンドウを開いて在庫を確認した。「二日分の食料。それに500mlのペットボトル飲料水が六本か。他には基本装備にライトやライター、ロープなどのサバイバルグッズ、それにルール説明書。そしてこれは「魔力石」かな? 一個しかないからとても貴重なアイテムなんだろうな。大切にしよう」 単独挑戦モードは資源が多いとのことだったが、水や食料が二日分しかなく、とても多いとは思えなかった。「これで「多い」となると、資源が「少ない」四人パーティーモードの初期資源って……」 僕は四人チームモードを選んだ「戦友」が心配になったが、他人に気をかけている場合ではなかった。 周囲は大混乱状態といった様相だったが、それでも「戦友」は次々と車に乗り込み、目的地
last updateLast Updated : 2026-06-03
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第006話 最初の宝箱とD級スキル①
 僕は順調に車を走らせ、目的地へ向かう。  その一方で、ステータスウィンドウを開き、システムの確認も行った。「このステータスウィンドウは自分の状態やスキルを確認する以外にも機能がたくさんあるぞ……」 その事に気づいた僕は一つ一つ、機能を確認していく。「MCC(マップチャンネルチャット)は同一マップにいる「戦友」とチャットで会話ができるのか。でもそれには「魔力石」が必要なんだね。え? でもちょっとまって。この魔力石の消費数は本当に合っているの? とても多くの魔力石が必要なんだけど……」 MCCでは会話をする為に、まずは相手を「フレンド登録」しないといけないようだったが、その登録に魔力石が三個必要とのことだった。  僕は自分が持つ、一つだけの魔力石に目を落とし、少し惨めな気持ちになる。「他には「取引システム」か。取引を安全かつ誠実に行う為に、合意した内容を確実に履行させるシステムだね。これは僕のように戦闘に不向きな者にはありがたいシステムだぞ」 僕は取引と聞いて、相手と合意したとしても、直前になって相手が取引を反故にしたり、力づくで物資を奪おうとしてくることを心配していたが、このシステムがあれば安心だった。「マップには目的地の方角と距離だけが表示されるのか。どうやって目的に到達するか、目的地までに何があるかは自分の目で見ないといけないということだね」 僕はマップはあっても、全ての情報が親切に表示されているわけではないことを知って、これが「《天使》」が人類に科した「《審判》」であることを改めて痛感する。 僕はマップに表示された目的地の方向を示す矢印を頼りにトラックを走らせるが、少し走行すると、すぐ「ある物」を見つけた。 それは「宝箱」だった。 そしてよくよく辺りを注意深く見渡してみると、他にも幾つかの宝箱が、まばらではあるが点在していることに気が付いた。「周囲に宝箱があるのか……。なるほど、そうか。これらの宝箱を開けて物資を獲得しながら目的地に向かうという事だね」 僕はシステムを理解
last updateLast Updated : 2026-07-21
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第007話 最初の宝箱とD級スキル②
「やーい! ゴブリンどもー! これでも喰らえー!」 僕は努めて大声でゴブリンを挑発し、石を投げつける。  ゴブリンは大声をあげて走ってくる僕を見て「なんだアイツは?」という顔をしていたが、僕が投げた石の一つがコツンと頭に当たると、ダメージや痛みは全くないようだったが「ギャギャッ! ギャギャギャギャァーッ!」と怒りだし、叫びながら僕を追いかけてきた。「うわー! ゴブリンが来た! でも成功だ!」 僕はゴブリンへの挑発が成功した事を喜びつつも、こん棒を振り上げ、飛び跳ねるように僕に向かってくるゴブリンに恐れ戦き、回れ右をすると、自分で作った「罠」を飛び越え、慌てて車に逃げ帰る。  そしてトラックのドアを開けて、車内に逃げ込もうとするが───。「あ、あれ? なんでだ? ドアが開かないぞ?」 僕はトラックのドアに手を掛けるが、レバーを何度引いてもドアは開いてくれなかった。「くそー! このオンボロトラックめ! 整備不良でドアの調子が悪くなっていたのか! しかしこんな時にドアが開かないなんて!」 僕が振り返ると、もうすぐ近くまでゴブリンが迫っていた。  僕は慌ててトラックの荷台に登ると、スライド式のリアウィンドウを開ける。  といってもリアウィンドウは一枚が欠損し、すでに片面が開いている状態だったが、僕が身体を滑り込ませるには狭かったので、僕はリアウィンドウをスライドさせたのだ。  何とか運転席に逃げ込んだ僕はゴブリンを確認する。ゴブリンはトラックの目の前まで迫っていて、今まさに手が届く距離だった。「うわー! 頼む! 罠が上手くいってくれ!」 僕は祈るように叫ぶが、その叫びがどうやら届いたようだった。「ギャッ!?」「ギャウギャギャッ!?」「ギャウゥーッ!」 突然、ゴブリンたちがその場に倒れ込む。  ゴブリンたちは何事かと思ったようだが、自分達の足に絡まる僕の「罠」を見て事態を理解したようだった。「どうだ! 僕の「罠」は! 単純だけど「草原」というこの場所だと、効果抜群だろう!」 僕は「罠」が上手くいって胸を撫で下ろすと共に、悪戯が上手くいった子供のように喜びをあらわにする。  実際、僕の作った「罠」は「子供の悪戯」と同じだった。  草原の草同士を結び、アーチ状の「足引っ掻け」をそこら中に仕込んだのだ。  ゴブリンたち
last updateLast Updated : 2026-07-22
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第008話 スキルの開花・D級の使い道
 僕は意気揚々としていた。「まさかこんなにうまく黒鉄宝箱を獲得できるなんて」 罠に掛かった時のゴブリンのあの驚いた顔。そして宝箱を奪われた事に怒り、僕を追いかけてくるあの必死の形相。  僕はゴブリンの悔しがる様子を思い返し、「してやったり!」という勝利の喜びを噛みしめた。「さあ、宝箱には何が入っているかな?」 僕は落ち着いた場所まで移動すると、早速、宝箱の中身を確認する。「お。飲料水のペットボトルが一本に、圧縮ビスケットが二個あるぞ。四人チームを組んだ他の「戦友」は食料と水不足に喘いでいたし、こうした物資が入っていることはありがたいな」 僕は貴重な水と食料をカバンにしまう。  そしてさらに宝箱に入っている物資を確認するが───。「なんだこれ……。錆びたボトル? 摩耗したナット? ヨレヨレの金属板に汚れたゴムホース。それに割れた歯車に壊れているベアリング……。ガラクタばかりじゃないか……」 僕はその場に膝をつき、ワナワナと震える。  でもそれは宝箱の中身がガラクタばかりだったことにがっかりしたからじゃない。  むしろその逆だった。「す、凄いぞ! 魔力石こそ入っていなかったけど、宝箱の中身は僕にとって「使える物資」ばかりじゃないか!」 僕は喜びに目を輝かせ、宝石でもすくい上げるかのようにガラクタを手にする。  実際、今の僕にとって、これらの部品は宝石より価値のある貴重な品だった。「他の人にとっては廃材だろうけど、修理や改造が得意な僕から見れば、これらは貴重な資源だよ」 僕は早速、宝箱から獲得した「物資」を持って、トラックに向かう。「これだけ材料があれば、トラックの修理がかなりできるぞ。まずはさっき開かなかったドアからだ」 僕は壊れたドアのレバーを取り外し、不具合を補修する。  この補修には壊れたベアリングから取り出した「転動体」と呼ばれる小さなボールが役に立った。  そしてレバーを元通りドアに戻すと、スムーズに車のドアが開閉することを確認した。「よし。次は開けっぱなしのリアウィンドウを塞いでおくか」 さらに僕はヨレヨレの金属板を石で叩き、形を整えると、リアウィンドウを塞ぐ。「むしろ劣化気味の金属板だったから簡単に整形できて良かったよ」 僕はその事を「好都合だった」と前向きに捉える。  他
last updateLast Updated : 2026-07-23
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第009話 ガラクタ漁り
 僕は同様の方法で、次々と黒鉄宝箱を獲得していく。  そして取引用に、飲料水のペットボトルを十二本、圧縮ビスケットを二十四個も揃える事ができた。「よし。これだけあれば十分、取引ができるぞ」 僕は満足げに戦利品を眺める。 次に開けた黒鉄宝箱には飲料水のペットボトルや圧縮ビスケットは入っていなかったが、木製の野球用バットが入っていた。  少し古びてはいるが、プロの野球選手が使うバットのようで、手にした重厚感は「本物」の貫禄があった。「このバットは本来の用途とは違うけど、打撃用の武器として使えるぞ」 そう思った僕はバットに、さらに釘やナットを埋め込んで殺傷能力を高めた。  出来上がった武器をさっそく振ってみると、何も武器を持たず、素手だった時に比べ、格段に心強い気持ちが高まった。「前の宝箱には工事現場で使うヘルメットが入っていた。顎紐が切れていたから革ベルトで修理したけど、他にも身体や腕、それに脚を守る防具があれば、僕も少しは戦闘ができるかもしれないんだけど……」 武器を装備した僕は、次に防具が欲しくなり、またさらに黒鉄宝箱を開けたが、なかなかそうした防具は手に入らなかった。「そうか。宝箱から防具が手に入らないなら、自分で作ればいいんだ」 その事を失念していた自分を反省しつつ、僕はゴムタイヤを切って肩当てや肘、膝当てを作ったり、鉄板や木の板で胸当てを作るなどして装備を整える。「見た目は良くないけど、だんだんと異世界で戦う冒険者のように装備が整ってきたぞ。これなら僕も少しは戦闘が出来るかもしれない」 そう自信がついた僕は、何回か釘バットを素振りしてみる。  すると僕のステータスウィンドウが飛び出すように開き、通知を表示した。『おめでとうございます。あなたはスキルを獲得しました。 スキル名:【棒術】(D級スキル)  棒状の武器を使用する入門レベルのスキル。  基礎を磨き、さらに上位のスキルの獲得を目指そう』「異世界では行動するとスキルを獲得できるけど、これだけ素振りをしてやっと入
last updateLast Updated : 2026-07-24
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第010話 取引開始①
 「同級審判全体チャンネル(=ワールドチャット:今回の「《審判》」に挑む戦友たちの「呟き」が次々と表示され、ログとして流れる)」を眺めると、戦友たちは宝箱を守るモンスターを何とか倒そうと、四苦八苦しているようだった。「モンスターを倒さないと宝箱を獲得できないというルールじゃないから、無理に戦闘をしない方がいいのに……」 僕はそう思ったが、しかし、戦友がそうしてしまうことも致し方ないと思っていた。「宝箱の前にモンスターがいたら「倒さないと!」と思ってしまうよね……」 ある意味で「ゲーム慣れ」してしまっている我々十六歳世代の弊害とも言えた。「僕は最初の「《審判》」で異世界から生還した両親に、事細かに異世界で生き残る方法を教えてもらえたけど、そうでない戦友たちは限界があるからな……」 僕のように「《審判》」の経験者が身近にいない戦友は、異世界での生き残り戦術は、政府が用意した施設で授業形式で行われる座学が中心だったが、そうした授業を真面目に受けず、居眠りしている戦友も多かった。「自業自得とはいえ、少し哀れに思う。僕がアドバイスをしようかな……」 僕は「同級審判全体チャンネル」に「モンスターは必ず倒さなくてもいい! 上手く躱して宝箱だけ奪い取るんだ!」とアドバイスを送ろうかと思ったが、その瞬間───。「───うッ! ぐッ! くぅぅ……ッ!」 僕の脳内に別世界での自分の記憶が流れ込む。  この世界には同時多発的に多元宇宙が存在している。  それは僕たちの何気ない選択肢の数だけ広がり、今も無限に増え続けている。  その内の一つ。  別世界での僕は最初こそ戦友から「役に立つ」と重宝され、笑顔で迎えられていたが、やがて戦友たちは自分達が異世界で生き残る術が充実してくると、もう僕の助けを必要としなくなり、ついには僕を「役立たず」「ガラクタ」として捨て去った。 それは現実の───今の僕自身の身に起こった事ではない。  しかし、僕はそうして僕を利用し、僕を見捨てていった戦友たちに腹立たしい思いが沸き上が
last updateLast Updated : 2026-07-25
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