LOGIN宇宙からある日突然、「天使(セラフィム)」を名乗る二柱の巨人が地上に舞い降りた。 その姿はとても神々しかったが、彼らが告げた言葉の内容は、人類にとっては死の宣告───「審判(ジャッジ)」だった。 しかし「天使(セラフィム)」は冷酷ではなかった。 人類に滅亡を免れるチャンスを与えてくれたのだ。 「今から人類を全員、異世界に転移させる」 「そこで世界の果てにあるという「至宝(シジル)」を見つけることができれば、人類を滅ぼすことをやめましょう」 こうしてフィギュアオタクで手にした物をなんでもすぐ壊す(=分解してしまう)僕も、異世界で人類の滅亡を回避すべく、全民ロードサバイバルの旅に出ることになってしまった。
View More僕は夢を視ているようだ。
様々な場面が浮かんでは消え、近づいては遠ざかる。 とても目まぐるしい。「それともこれは過去の記憶かな……?」
僕は夢と現実の区別がつかない状態になっていた。
「お前の「改装」スキルは本当に凄いな。どんなスクラップも新品同様に作り直せるんだから」
誰かが僕にこう言った。
そう言われた事を、はっきりと覚えている。とても懐かしい。「でも僕にこう言ったのは誰だっけ……?」
名前を思い出せない。でも僕にとって「友人」で、ビジネスパートナーであった事だけは覚えている。
僕のスキルは「改装」で、壊れた機械を直したり、改造したりすることができる。 でも逆に云うとそれしかできない。「改装」は後方支援系のDランクスキルだった。 僕は冒険者になるべく、冒険者ギルドに登録したが、結局、誰も僕をパーティーに加えてはくれなかった。そして僕は役立たずの烙印を押され、路頭に迷った。そんな僕を救ってくれたのが、この「友人」だった。
友人はAランクの冒険者で腕っぷしが強く、ダンジョンの奥深くまで潜って様々なスクラップを集めてくることができた。
そしてそのスクラップを僕が「改装」し、人々の役立つ「製品」にして売り出した。 すると商品はたちまち大人気となり、飛ぶように売れた。 商売は順調だった。僕は飢え死にせずに済むようになった。そんな僕には恋人がいた。
彼女は僕の幼馴染で、どんな時も一緒にいてくれて、誰よりも僕の成功を喜んでくれた。「苦労をかけた彼女をやっと笑顔にすることができて嬉しかったな……」
しかし生活が安定すればする程、彼女の心が僕から離れて行く「溝」を感じた。
そしてそれは危惧ではなかった。現実だった。彼女の心は「友人」に傾いていた。 僕は、僕を欺き、僕に内緒で逢瀬を重ねる二人を問い詰めた。 そして決定的な現場を抑え、言い逃れができない状況に二人を追い込んだが、二人が諦め、僕に謝罪するかと思いきや、二人の取った行動は僕の想像とは全く違っていた。二人は開き直り、僕にこう言い放ったのだ。
まず彼女は「壊れた機械を直す事しかできないあなたじゃ、私の欲しい人生はくれないのよ」と僕を蔑んだ。
彼女の言葉は鋭いナイフとなって僕の胸を貫いた。とても衝撃的で痛かった。 そして友人は「もうお前は十分役に立ってくれた。俺たちはすでに大金を稼いだ。これ以上は必要ない」と僕を切り捨てた。「大金を稼いだ? そんな馬鹿な! 僕の改装したスクラップは売れるには売れたが、大儲けとはいえない程度だ! 一体いつそんな大金を稼いだっていうんだ……!?」
そこまで口にして僕は気づく。
「そうか……。本当は僕の改装したスクラップは高値で売れていたんだ……。でも友人は必要最低限の報酬しか僕に支払わず、残りの大金を独り占めしていたんだ……」
僕は騙されていた事に気づき、両膝をつく。
「これでお別れだ」
友人は指を鳴らして合図を送った。
Aランク冒険者の友人には手下が大勢いた。その手下が僕を取り囲む。 僕に成す術はない。僕は「改装」しかできないのだから。 そして僕は友人も恋人も、成功も、そして命も奪われた。「短く、そして虚しい人生だった」
ポツリと呟き、僕は目を覚ます。
「あれ……? 僕は殺されたんじゃ……?」
その瞬間、僕の脳内に大量の記憶が流れ込む。
僕は「今のは僕の前世の記憶……?
どちらにせよ、情報の大波に呑まれた僕は、激しい頭痛と眩暈に苦しめられる。
「でもどうして「
僕はようやく痛みと眩暈から解放され、頭を抱えながらベッドを降りる。
「いや、逆かな……。「
僕は鏡の前に立ち、まるで今日初めて見る顔であるかのように確認する。
「起きているか、
母が心配して僕の部屋のドアをノックし、ドア越しに声を掛けてくれる。
「
キッチンで僕の朝食を用意してくれている父も僕を呼ぶ。
「わかった。すぐに行くよ」
僕は返事をして両親を安心させると、「《
次々とこの場から車が逃げ出し、その数をみるみる減らしていった。 どうやら僕と軍毅、それに詩華は、他の「戦友」に比べ、車の発見が遅かったようだ。「急げッ! あの車だッ!」 それでも軍毅は残った車に乗り込もうと躍起になるが、その度に、目の前で別の戦友に車を奪われ、なかなか車を獲得する事ができずにいた。 そうしている間にも車は、みるみる戦友に奪われ、数を減らしていく。「くそッ……! このままじゃ……ッ!」 軍機が焦る。「どこかに……、どこかに車は残っていないの……」 詩華は急速に数を減らす車を成す術もなく見送るしかできずにいた。 せっかく多くの車を見つけ、脱出の糸口を見つけたと思った直後だっただけに、落胆も大きいようだった。 しかし、そんな二人に比べて、僕は余裕があった。 何故なら───。 僕は「ある場所」をライトで照らす。 そこは、雑草が生い茂り、茂みになっている場所だった。 そしてそこには僕の「目当ての物」があった。「やっぱり今回の《天使》の《審判》でも、ここにあってくれたんだね」 茂みの中にあったもの。 それは一見すると車とは思えないガラクタの山のようだったが、よく見ると古びた小型のトラックだった。「前回の《天使》の《審判》で僕が乗り込んだトラック。嬉しいな。まるで長い付き合いの相棒に再会したようだよ」 僕は、僕の相棒だったトラックが、今回も前回同様、茂みの中にあってくれて喜んだ。「軍毅、それに詩華。あそこにまだトラックがあるよ。あのトラックに乗り込もう」 僕は軍毅と詩華を誘う。 前回の《天使》の《審判》で、僕は軍毅に四人パーティーモードに誘われたが、その申し出を断り、単独挑戦モードを選んだ。 しかし、今回はそうするつもりはなかった。 その理由は、まず、《天使》の《審判》ではゴール地点にドラゴンがいて、最低でも十六人の戦友がいないと、そのドラゴンを倒せず、最初のゴール地点に到達することができない。その為、仲間が多い方が良いという事を僕が学んでいたからというのが一点目の理由。 もう一点の理由は、僕は別世界の事ではあるが、詩華に異世界で
僕は頭で考えるより先に、身体が動く。 そしてマグライトと「合体」させた銃を構えると、至近距離からゴブリンの目に向けて引き金を引いた。「ギャッウッギャウギャーッ!」 ゴブリンの目玉が弾け飛び、弾丸は眼窩を通って頭蓋骨をすり抜け、脳に達したようだった。 糸が切れた操り人形の様に力を失うと、ゴブリンはバッタリと倒れ、動かなくなった。 僕と詩華と軍毅の三人は、こうして辛うじて一匹のゴブリンを倒す事に成功した。 しかし、周囲を見渡すと、そんなゴブリンがまだ何百と飛び跳ねていた。「に、逃げましょう……ッ!」 詩華が悲鳴をあげるかの如く、提案をする。「逃げるといったって、どこに逃げるんだよッ!」 軍毅は周囲の至る所にゴブリンがいる状況に、逃げ道を見いだせなかった。「見てッ! あそこに車があるッ! あの車を使って逃げましょうッ!」 逃げ道を探して周囲を照らしていた詩華のマグライトが、一台の車を照らし出した。「こんな所(=異世界)に車があるなんて……!」「マジかよ……! なんで異世界に車が? しかし、これはラッキーだぜ!」 詩華と軍毅は異世界に車があることに驚いていた。「そうか。二人は僕と違って、まだ異世界で《天使》の《審判》を経験していないから、最初の試練が、車に乗って、七日以内に二千四百km先の補給地点へ辿り着く事だと知らないんだ」 僕は異世界に車がある事に慣れっこだったが、二人はそうではないという「経験の差」に驚く。 そこには、少しの優越感もあったが、しかし、そんな優越感に浸ってばかりもいられなかった。 その間にも、周囲ではゴブリンが戦友を殺戮しているのだ。「早く乗り込むぞッ!」 軍毅が僕と詩華を率いて車に走る。 軍毅と、そして僕と詩華は車に乗り込もうと一直線に走るが───。「どけッー!!」「なにッ!?」 軍毅が突き飛ばされる。 そして軍毅より一瞬早く、僕たちとは別の───僕たちと同じく、今回の《天使》の「《審判》」で異世界に送り込まれた「《十六世代》」の数名が車に乗り込んだ。「何をするんだ、お前らッ!」 不意を突かれ、突き
僕は尚も銃のトリガーを引く。 しかし、何度、トリガーを引いても弾は発射されなかった。「あ、あれ……? どうして?」 僕は戸惑う。 そうして僕がもたついている間に、その隙を好機と捉えたゴブリンが再び襲い掛かってきた。「何をやっているんだッ! 安全装置を解除しろッ! 訓練で散々習っただろうッ!」 僕は声の主に突き飛ばされる。そして地面に倒れ込むが、そのおかげでゴブリンの凶悪なこん棒の一撃を喰らわずに済んだ。 僕を突き飛ばしたのは軍毅だった。 軍毅は、自分が持つ銃でゴブリンを撃つ。 しかし、縦横無尽に飛び跳ねる身軽なゴブリンに命中させることはできなかった。「くそッ!」 ゴブリンが軍毅に飛びかかる。 軍毅は自分に噛みつこうとするゴブリンをマグライトを盾にして防いだが、両手がふさがり、反撃ができない状態になってしまった。「撃てッ! 早くコイツを撃つんだッ!」 軍毅の悲鳴のような命令に衝き動かされ、僕は銃の安全装置を外すとゴブリンに向けて弾を発射した。 幸い、弾はゴブリンに命中した。 しかし───。 ゴブリンは短く「ギャッ!」と叫び声をあげて軍毅から離れたが、銃で撃たれた肩に傷は負っていなかった。 銃の弾は、まるでぶ厚いゴムタイヤにでも当たったかのように弾かれてしまったのだ。「そ、そんな……! 銃が効かないなんて……!」 それは信じられない光景だった。 僕は前回の異世界でも銃を獲得していた。 銃を手にすると、とても頼もしかった。 そして銃があればゴブリンくらい、簡単に倒せると思っていた。 すぐにでもゴブリンを見つけ、ゴブリンに向かって銃の威力を確かめたいと思っていたが、折悪しく、僕が銃を手にしてから、なかなかゴブリンと戦闘する機会がなく、銃の威力を確かめられずにいたが、あの時、僕がゴブリンと戦闘しなかったことは、幸運だったのかもしれない。 僕は思い違いをしていた。 銃はゴブリンに通用しない。 ゴブリンの皮膚はぶ厚いゴムタイヤのように頑丈で、銃の弾で貫通することはできないようだった。 ゴブリンは今度は僕に襲い掛かってきた。 銃は効かなかったが、弾丸で撃たれたこと自体は痛かったらしく、ゴ
悲鳴が聞こえる。 僕は飛び起きた。 ここは草原。 辺りは真っ暗だ。「ここが異世界……? 天国じゃなくて?」 状況がわからず僕は狼狽える。 その間にも周囲からは次々と悲鳴が沸き上がった。 詳しい状況はわからないが、僕と同じく、「《穴》」に全身を蝕まれ、消失したと思われた戦友が、周囲にたくさんいるようだった。 そしてあちこちからあがる悲鳴。 どうやら戦友たちは何かに襲われ、何が起っているのかわからないが、相当数の「犠牲者」が出ているようだ。「《天使》の「《審判》」が、始まっている。ここは異世界なんだ。でも前回は一日の「初心者保護期間」があったはず。今回はその猶予がないのか?」 僕は前回と違う様子に困惑する。 しかし、僕はすぐに今回、どうして前回と様子が違うのかの答えに思い当たった。「《天使》を怒らせたからだ。《天使》専任のリポーターが、実は《戦争》の《派閥》で、正体を隠して《天使》に核ミサイルを撃ち込もうとしたから、その罰で僕たちは「初心者保護期間」なしで異世界に転移させられたんだ……」 僕は状況がわかったが、呆然としてしまう。 前回、僕は異世界でスライムやゴブリンと戦った。 ゲームでは、簡単に倒せる雑魚モンスターとして登場するスライムやゴブリンだったが、実際はとても強く、異世界に転移してすぐの自分たちでは太刀打ちできない相手だった。 暗くて見えないが、恐らく、僕たちは今、そのモンスターたちに襲われている。 次々と沸き上がる悲鳴。 その悲鳴の一つ一つが戦友の断末魔なのだ。「ライトだッ! ライトを点けろッ!」 誰かが叫ぶ。 その声は悲鳴のようだったが、やがてすぐに本当の悲鳴に変わった。 それは断末魔でもあり、彼も「犠牲」になったようだ。 僕は彼の死を無駄にしない為にも、大急ぎで自分の身体を確かめる。 すると───。「あ……! 僕が改造したマグライト照明付きハンドガンだ!」 僕は自分のポケットに、頼もしい「相棒」があることに気付く。 僕はすぐにマグライトのスイッチを入れた。 暗闇を切り裂くように、マグライトの力強い光