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Lahat ng Kabanata ng ひとすじの想い: Kabanata 21 - Kabanata 30

45 Kabanata

第四章 第一話

 ある日、午後の稽古が終わり片付けをしていると「桐崎殿」という言葉が聞こえてきた。 門弟達は桐崎のことは師匠と呼ぶから桐崎殿というのは流のことだ。 どうやら流の話をしているらしい。「山崎殿、桐崎殿には水緒さんという許嫁が……」「ちょっと遊ぶくらいで大袈裟な」 山崎と呼ばれた男は小森の言葉を遮ってそう言うと流の方へやってきた。「桐崎殿、これから皆で深川の見世へ繰り出すのだが一緒に行かないか?」「店? 何の?」「岡場所です」 小森が囁いた。「水緒と何か関係あるのか?」「普通の女性はそう言うのを嫌がりますから、水緒さんもそうではないかと……」「俺は水緒の迎えがあるから」 流はそう言って道場を後にした。「今から水緒殿の尻に敷かれてるようでは……」 山崎が小声で仲間に囁いた。 流は人間には聞こえない音でも聞こえるから山崎の言葉も耳に届いていたが、別に他人に何を言われようと気にならない。 水茶屋へ向かっていると途中にあの鬼の女が立っていた。 確か、つねとか名乗っていたような気がする。 流が無視して通り過ぎると並んで歩き出した。「消えろと言ったはずだ」「だからあの時ちゃんと消えたじゃないか。ずっと消えてろとは言われなかったからね」「じゃあ、ずっと消えてろ」「もう礼はした。あんたの指図は受けないよ。ねぇ、あんたの名前は?」 流はそれ以上何も言わずに足を早めた。 つねが足早に随いてくる。「あの女……」 つねが言いかけた途端、流は足を止めて振り返った。「水緒に手を出したらお前を殺す」 流の殺気立った様子に、つねが思わず後ろに後退った。「べ、別に、手を出すとは言ってないだろ。ただなんで人間なんかと連んでんのかと思ってさ」「
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第四章 第二話

 その日は珍しく流の迎えが遅くなり、水緒と二人、逢魔が時の帰り道を歩いていた。「うぅ……」 流は呻き声を聞いた。 声の方を振り返ると水緒もそちらを見た。 道端に何かが蹲っている。 妖だった。 名前は知らないが異形の者だ。 小さな子供くらいの大きさだった。「大変! ケガしてる! 早く手当てしないと!」 水緒は流が止める間もなく妖に駆け寄った。「水緒! そいつは妖だ! 化物だぞ!」「でも、ケガしてるよ」 水緒は妖の前に膝を突くと手拭いを裂いて傷に巻こうとした。 その手を妖が払う。「人間、触るな……儂は妖だ」「水緒、聞いただろ。そいつは化物だ。放っておけ」「でも、ケガしてるんだよ。放っておけないよ」 そう言うと裂いた手拭いを妖の傷に巻いていった。「大丈夫?」 水緒が妖を覗き込んだ。「う……」「ここにいたら誰かに殺されちゃうね。流ちゃん手伝って」 水緒がそう言って妖を持ち上げようとした。 流は渋々水緒に手を貸して妖を持ち上げると、側にあった小さな稲荷の祠の裏に運んだ。「治るまでじっとしてて。ここなら見付からないと思うから」「水緒、早く帰ろう」「うん」 水緒は何度か心配そうに稲荷を振り返りながら帰路に就いた。 翌朝、流が素振りをしていると、水緒が辺りを見回しながら、こそこそと出てきた。「水緒、どうした」「きゃ! あ、流ちゃん」 水緒は手拭いに包んだものを抱えていた。 匂いで握り飯だと分かった。「それ、あいつに持ってくのか?」「うん、ご飯食べないとケガが治らないでしょ。流ちゃん、おじ様には内緒にしておいて」「分かった。気を付けろよ」「うん、ありがと」 水
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第四章 第三話

 水茶屋に向かっていると、つねがやってきた。 いつも通り無視して通り過ぎた時、桐崎に言われたことが脳裏を過った。 水緒がいなくなった後のことを考えておけと言われたが、想像しただけで息が苦しくなる。 他の誰かと親しくしたいとは思わない。 保科ですら信用はしたものの離れたくないとは思わなかった。 水緒のいない世界で生きていくくらいなら死んだ方がマシだ。 流は不死身ではないはずだ。 死なない者をわざわざ殺しに来るはずがない。 鬼達が殺しに来るという事は死ぬという事だ。 それなら水緒を失った後、もし自分で死ぬことが出来なかったら鬼が殺しに来たとき抵抗しなければ死ねるだろう。 だから水緒がいなくなった後のことなど心配する必要はない。 流はそれ以上考えないことにした。 金のない門弟達ですら誰もが持っているくらい錦絵が売れているのだから、当然水緒が働いている水茶屋は日が経つごとに客が増えていっている。 店内に入りきれない客達が店の外から一目水緒の姿を見ようと中を覗いていた。 辺りを探ってみたが妖の気配はしない。 とはいえ水緒の場合、人間の男も脅威になり得るのは奥田で証明済みだ。 ただでさえ江戸は男の方が多くて女が少ない。 早く別の錦絵を出して男共にはそちらへ行って欲しいのだが売れている最中に次は出さないだろう。 何より錦絵というのは絵を元に複数の版木を彫って様々な色を重ねていくことで多彩な色使いの絵にしているのだ。 絵師が絵を描いて、それを元に版木を彫って、紙に色を載せて、という手順が必要なのだからそう簡単に次から次へとは出せない。 それ以前に錦絵に描いて売れるような綺麗な娘を見付け出してこないといけないというのもある。 いつものようにつねは路地から出てくると流に向かって何やら話をしていた。 流は無視したまま歩き続ける。「実は次はあたしを錦絵に描きたいって言われたんだけどさ。断っ……」 つねの言葉に流は顔を
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第四章 第四話

 ある日、路地から出てきたつねが浮かれた様子で近付いてきた。 いつもと同じく無視して通り過ぎる。「待ちなよ」 つねはそう言ったが流はそのまま水茶屋へ向かう。「待ってってば」 小走りに追い掛けてきてつねは流の前に紙を突き出した。 流が歩きながら紙を一瞥する。 つねを描いた錦絵だった。「ほら、やるよ」「いらん」「なんでさ。買わないって言ったのは金がなくて買えないからだろ」「欲しくないからだ」 見向きもせずに答えた流につねは言葉を失ったらしく足が止まった。 流はそのまま先を急ぐ。 つねはすぐに追い掛けてくると、「やるって言ってんだから受け取りなよ」 と流の前に錦絵を突き出した。「ねぇ、ほら」 受け取るまで付き纏ってきそうな勢いだ。 流は溜息を吐いた。「本当に受け取るだけで良いのか?」「ああ」 つねの言葉に流は紙を受け取った。 そのまま錦絵を道に捨てる。 錦絵が風で飛ばされていく。 つねが息を飲んだ。「な、なんてことするのさ!」「受け取るだけで良いと言ったから受け取っただけだ。ずっと持ってるとは言ってない」「だ、だからって……」「欲しくないと言ったはずだ」 その答えにつねは唖然とした様子で流を見ていた。 数日後、流が水茶屋に向かっているとつねが男達に囲まれていた。「あ、ちょうど良かった。助けとくれよ」 つねの言葉を無視して通り過ぎる。「ちょ、ちょっと! 助けてって言ってるだろ」「へっ、腰抜けめ」「残念だったな」 男達が口々に言ったがそのまま素通りした。 他人に何を言われようが気にならない。 関係のないことに首を突っ込む気はない。「ま、待ちなよ」 流に追い付いてきたつねが言った。 どうやら自分で男達を倒して
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第四章 第五話

「水緒! 言え!」 その言葉に水緒が視線を向けてきた。「流ちゃん、逃げて……」 水緒が掠れた声で言った。 これ以上耐えきれずに祟名を言ってしまう前に……。 水緒の目がそう言っていた。 最後まで耐える気だ……。 水緒はきっと口が裂けても言わない。 万が一に備えて逃げろと言っているだけで、例え殺されても言う気はないのだ。 鬼が手を振り上げる。 これ以上は水緒の体が保たない。 こいつらを全員始末する以外、水緒を助ける道はない。 流は鯉口を切って抜刀した。 鬼が水緒に爪を突き付けたが無視した。 どの道これ以上殴れたら死んでしまう。 流が近くにいた鬼を斬り倒すと、他の鬼達が一斉に襲い掛かってきた。「早く言え!」 と言う声と共に鈍い音が聞こえた。「っ!?」 水緒が短い悲鳴を上げる。「水緒!」 流は焦ったが鬼達が多すぎて中々水緒に近付けない。 こんなことならもっと早くこうすべきだった。 流は悔やんだ。 水緒の着物はもう血塗れだ。 顔は腫れ、痣だらけで見る影もない。 それでも水緒は必死で耐えている。「どけ!」 最後の一体を倒して水音を掴んでいる鬼に駆け寄る。 鬼は舌打ちすると水緒を放り投げて流に襲い掛かってきた。 流が持っていた刀を投げ付ける。 鬼がそれを上に弾く。 その隙に懐に飛び込むと脇差を抜刀して斬り上げた。「ーーーーー!」 鬼が叫び声を上げる。 そのまま脇差しを横に払って鬼の首を刎ねる。 流は水緒に駆け寄ると抱き起こした。 辛うじて生きているがもう虫の息だ。「水緒!」 このままでは水緒が死んでしまう。 どうしたらいいのか分からな
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第五章 第一話

「物忘れ!?」 桐崎という男が目を剥いた。 水緒に連れてこられたのはこの男の家で、名前は桐崎というのだと水緒が教えてくれた。 水緒の話によると、水緒が鬼に捕まってしまい流が助けに行ったらしい。 流が駆け付けた後、水緒は鬼に殴られて意識を失い、目が覚めたら流や鬼達が倒れていたというのだ。 流が気付いたとき周囲には鬼の死体が転がっていた。 水緒に鬼が倒せるとは思えないから流が戦って倒したのは間違いないだろう。「水緒はケガしてないが、あの血の付き方は返り血とは思えないから鬼に傷付けられたのは事実だろうな。なぜ傷がないのかは謎だが」 桐崎が考え込むように言った。「とりあえず明日、小川に見てもらって思い出す方法がないか探してみよう」 桐崎はそう言ってから、「流、何故水緒のところに行く前に、それがしに伝え……」 叱ろうとして、「覚えてないのでは言っても仕方ないな。説教は思い出してからだ」 と言った。 水緒は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。 家に着いた時、まず着替えを出してくれた。 流の着ていた物は血で汚れていたからだ。 夕餉だと言って出してくれた飯は旨かった。 母と暮らしていた頃はこういう飯を食っていたのかもしれないが、流が覚えているのは山の中で捕まえた雉や兎を生で食っていたことだけだ。 炊いた米や火を通した料理など初めてだった。 水緒や桐崎によると五年前からこういう飯を食っていたらしい。 その後、水緒が流の自室だという部屋に案内してくれて布団の引き方などを教えてくれた。 水緒が出て言った後、流は部屋の中を見回した。 部屋の隅に低い台が置いてある。 台の下に積まれていた本を取り出すと奥に小さな箱があった。 開けてみると中に小さな袋が入っている。 手に取るとかなり重い。 石でも入っているのかと思って開いてみると銀色の粒が入っている。 何故こんな
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第五章 第二話

「お前には酷だが流にとっては良かったのではないか? 今の流には大切な相手がいない。それなら誰に祟名を呼ばれたところで死ぬ心配がない」 確かにその通りだ。「流がまたお前に惚れたりしないようにこのまま離れた方がいいのではないか?」 桐崎の言葉に水緒が黙り込んだ。「どうした」「流ちゃんは私のこと、そこまで好きなわけではなかったのかもしれません」「そんなはずなかろう」 桐崎がバカバカしいという口調で言った。「でも……」「どうした」「私、呼んだことがあるんです」「え?」「昔、鬼に捕まって言うように迫られて……」 水緒が流と出会ったばかりの頃の話をした。 人間には見えないはずの祟名を水緒が知っていたのも鬼に言えと迫られたことがあったかららしい。「水緒が呼んだのに何事も無かった?」 桐崎が怪訝そうな声で言った。「あの時は知り合ったばかりだったからかもしれません」「今回は? 呼んだのか?」「分かりません。言うようにって何度も殴られているうちに気を失ってしまって……」「それで大量に血を吐いたのか。お前、本当に身体は大丈夫なのか? 痛みを我慢しているのではなかろうな」 その問いに水緒は首を振ったのだろう。 だが桐崎は心配しているような気配を感じる。「私、意識が朦朧としている時に言ってしまったのかもしれません」 初めて水緒を見た時、見えている場所には傷一つなかったが着物は全身血塗れでところどころ破けていた。 呼んでしまったとしても散々痛め付けられた末のことだ。 そこまで祟名というものを呼ぶのを拒んだのだとしたら水緒は相当流のことを想ってくれているのだろう。「もし言ってしまったのなら流ちゃんが無事なのは私のことが大切ではないからかもしれません。それで記憶を失うだけで済んだのかも……」 水緒
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第五章 第三話

 朝は夜明けに起こされた。 桐崎から木刀の持ち方から教わったが、剣術はすぐに出来るようになった。「身体の方は覚えているようだな」 桐崎が言った。 型を教わっただけで打ち込まれた時、どう動けば良いかは聞かなくても分かった。 これは流が五年間掛けて稽古してきた成果で、習い始めたばかりの頃にはこんなに上手く出来なかったらしい。「となると、やはり頭の中の記憶だけが無くなったのだな」 桐崎が考え込むように言った時、水緒がやってきた。 目が赤い。 だが、桐崎はそれを見ても何も言わなかった。 夕辺はかなり水緒の身体を心配していたような感じだった。 だとすると目が赤いのは体調とは関係ないのだろうか。 記憶を失う前は人間と関わったことが無かったから判断が付かない。「おじ様、流ちゃん、朝餉の仕度が出来ました」 水緒はそう言うとすぐに俯いて母屋に戻ってしまった。「よし、流、飯にするぞ」 桐崎に言われて稽古場に木刀を置きに行くと母屋に向かった。 やがて水緒と加代が朝餉の膳を持ってきた。 朝餉が終わると桐崎に言われて庭で素振りをしていると水緒がやってきた。「流ちゃん、そろそろお稽古の時間だよ」 と言って手拭いを差し出した。 流が受け取ると水緒は何も言わずに戻っていった。 稽古場に入ると桐崎に呼ばれた。「お前と水緒は許嫁という事にしてあるから誰かに聞かれたら話を合わせろよ」 と桐崎に言われた。「許嫁ってなんだ?」「将来夫婦になるという約束をしたものと言うことだ。だがそれは縁談を断るための口実だからな」「なんで断るのに理由が必要なんだ?」「承諾出来ないのはお前が鬼だからだ。向こうはお前を人間だと思って申し込んできてるんだからな」 鬼だとバレてしまったら街では暮らしていけなくなる。 人間の中で生きていくには鬼だということは隠しておかなければならない。 鬼は人間より寿
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第五章 第四話

 その五年間に何があったのか気になる。 屋敷の外に見える山は遥か彼方だ。 流がいたのがここから見えている山だとしても相当離れている。 あの山の更に向こうの山だとすれば何日も掛けてここまでやってきたと言う事だ。 江戸という名前など聞いたことすらない街まで何日も掛けて旅してくることになったのは何故なのか知りたかった。 何から聞こうか考えあぐねていると、「それじゃ、私は出掛けるね」 水緒がそう言って立ち上がった。「そうか」 流が頷くと一瞬、悲しげな表情を浮かべた。 水緒はすぐに顔を逸らすと部屋から出て言った。 水緒が帰ってきたのは夕方だった。 それから夕餉の仕度を始めた。 次の日の朝、桐崎が流の世話をするという人間を連れてきたが知らない者を近付けたくないし、今のところ特に困ってはいないから断った。 昼頃、水緒はどこかへ出掛けていった。 その次の日もやはり午後はいなかった。 聞きたいことがあるのだが毎日行き違いになってしまって話をする時間がない。「水緒」 家を出ようとしていた水緒に流が声を掛けた。「どうしたの?」「いや、いつもどこへ行ってるんだ?」「水茶屋だよ。私はそこで働いてるの」「働く?」「お仕事をしてお金をもらうことだよ」「なら行かないといけないって事か?」「うん」「じゃあ、随いていっていいか?」「私は構わないけど……」 桐崎が良い顔をしないから躊躇っているのだろう。「聞きたいことがあるんだ。行かないといけないなら歩きながら話すしかないだろ」「そう言うことなら」 水緒がそう答えると二人は並んで歩き出した。 水緒は後ろに下がろうとするから流が隣に並ぼうとすると、女は後ろに随いていないといけないからと言われてしまった。 一々振り返って話すのは面倒なのだが人間の決まりは守れと言われてい
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第五章 第五話

 流は女を探るように見た。 女の方も怪訝そうな表情で流を見返している。 話し方は馴れ馴れしいが警戒している素振りが見え隠れしている。 水緒はもちろん、桐崎や小川もこういう態度は取らなかった。 つまりこの女は流を身方だと思っていないのだ。 この女は鬼だ。 それも最可族とやらの。 まだ水緒の話を全て聞いたわけではないが、今までに聞いたことを考え合わせると流は鬼の中でも特に最可族に狙われているらしい。 だとしたら物忘れのことは知られない方が賢明だろう。 流が歩き始めても女はそこに突っ立ったまま様子を窺っていた。 水緒と人通りの多いところ――盛り場と言うらしい――を歩いていると男とすれ違った。 その瞬間、男が水緒の懐から何かを抜き取る。 流が即座に腕を掴んで捻り上げた。「いででで……」 男の手から小さな袋が落ちて鈴の音がした。 地面に目を落とすと袋には小さな青い鳥のようなものと鈴が付いている。 あれは……。「あ、私のお財布」 水緒が自分の懐に手をやって無くなっているのを確認すると財布を拾い上げる。「こいつはどうすればいいんだ?」 流の質問に水緒が答える前に別の男が駆け寄ってきた。「あんちゃん、お手柄だったな」 男がそう言って財布を盗ろうとした男のもう一方の腕を掴む。 流が訊ねるように水緒に視線を向けると、水緒が頷いたので手を放した。 男が男を連れていく。「流ちゃん、ありがと」「今のは?」「え、ああ」 流が捕まえたのが掏摸、それを連行したのは御用聞きという罪を犯した人間を取り締まる役目の者だと教えてくれた。 掏摸は人の財布を盗むという罪を犯したから御用聞きに掴まったと言う事らしい。 家に戻ると台所に行く前に自分の部屋に戻った。 机の上の財布を手に取る。 中に入っているのは以前、水緒が教え
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