「一族の面汚しだ!」土砂降りの雨の中、私は泥の上へ叩き出される。雷鳴が鳴り響き、雷の光がお父様の背後のお屋敷を照らし出す。お父様は私を見下ろしながら私に何かを叩き付ける。「これは一体、どういう事だ!」私の頬に叩き付けられたもの、それは数枚の写真。私の頬に叩き付けられた写真が土砂降りの雨の中に散らばる。その写真には私が男に肩を抱かれホテルの部屋に入って行くところが写っている。しかも写真はそれだけにとどまらず、私とその男が半裸でベッドに居るところまで写っている。(どうしてこんな写真をお父様が持っているの……)そう思いながらその写真を手に取る。写真に写る男、それは我が一ノ瀬家の宿敵とも言える男――九条征哉――その人だった。そして。私の手の中にあるのは妊娠検査票。私は宿敵である九条征哉の子供を宿してしまっていた。妊娠検査票を握り締める。全ての発端はこの妊娠検査票だった。「お前のせいで! 高橋家との縁もご破算じゃないか!」高橋家、それは私の恋人であり婚約者の高橋翔太の家。私と翔太は順調にお付き合いを続けて、つい最近、婚約にまで至った。それがこの写真と妊娠検査票によって、打ち砕かれた。元々、我が一ノ瀬家は事業が暗礁に乗りかけていて、一縷の望みをかけての高橋家との婚約でもあったのだ。雨が私の体を打ち付けて行く。全身ずぶ濡れで体が冷えて行く。「お姉様……いくら遊び好きでも、こんなふうにスキャンダルを起こさなくても……」そう言ったのは私の義理の妹の瑛理香だ。彼女は私の義理の母にあたる華瑛さんの実子。可憐さを装ってそう言っている瑛理香はわざとハンカチを持ち、その瞳を拭ってみせながら、声を震わせ、その横に並んで立っている華瑛さんに寄り添っている。私が雨に打たれながらそんな瑛理香を見ると瑛理香は一瞬だけ、そのハンカチで口元を隠して笑ったのを私はしっかりと見た。
Last Updated : 2026-06-04 Read more