「出せ」九条征哉がそう言うと日下部さんが頭を下げる。「すぐに」そう言って数人の部下が静かに入って来て、呻き泣いている多田を病室から引き摺り出し、日下部さんが一礼して扉を閉める。九条征哉が溜息を一つつき、言う。「美織……」そう言いながら私の前まで来て、私を抱き締める。「自分の命を粗末に扱うな……頼むからこれ以上傷を付けないでくれ……」そう言う九条征哉に私は笑う。「あんなに小さいナイフじゃ、死なないわ」実際に多田が持っていたナイフは小さい。あれが刺さったくらいでは命に危険は無い。まぁ、私はそのナイフを自分の首元へ突き付けさせた訳だけど。私を抱き締めている九条征哉が何を考えてそう言っているのかは分からない。せっかく手に入れた玩具を他人に傷付けられるのが嫌なのか……別の何かか。私に氷の契約を結ばせ、特別病棟に連れて来て入院させ、そしてこうして私を抱き締める九条征哉の考えている事は、きっと誰にも分からないだろう。過剰な程のこの対応には、きっと私が社会的にはもう死んでいるという事が大きく関わっているんだろうから。◇◇◇扉の前に立っていた護衛を多田は薬を使って静かに排除した。だから俺たちはその異変に気付けなかった。(美織の警備をもっと手厚くしなくてはいけないな)俺自身が狙われるならまだ、対処は出来る。だが美織が狙われる可能性については、正直、考えていなかった。何故なら、美織は一度、死んだことになっている人物だからだ。内側からの攻撃がある可能性について、考慮に入れていなかった自分に苛つく。まさか多田があんな暴挙に出るとは思っていなかったのだ。美織の傷付いた首と腕&hell
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