さすが湊、よく考えてくれている。琴音が選んだウェディングドレスのデザインに合わせて、上品で洗練された案を提案してくれた。以前に琴音が自分で現地で一番のウェディングドレスショップで選んだものも悪くなかったが、目の前にあるカタログに比べると、とても地味に見えた。お気に入りのデザインについて、湊と詳しく相談しようとした。するとその時、瑛介のために設定した特別な着信音が響き渡った。それは、二人が付き合い始めたばかりの特別な思い出だった。琴音がおねだりして、瑛介に録音してもらった声だ。「おーい。琴音が大好きな瑛介から電話だよ」琴音は、瑛介に関係するものはすべて処分したつもりだった。けれど、ここだけは完全に見落としていたのだ。「出ないのか?」顔を上げ、少し迷っている様子の琴音を見て、湊が声をかけた。琴音は首を振り、スマホの画面を消した。そして再び、ウェディングドレスについて話し始めた。「これがすごく好きです。でも、ここのデザインがちょっと……」琴音は紙を取り出してメモを始めた。もし今の彼女が顔を上げていたら、湊の視線が自分のスマホに釘付けになっていることに気がついたはずだ。瑛介。藤城家のあの男のことなのだろうか?……琴音は寝室に戻った。スマホを開いた瞬間、瑛介からメッセージが入った。【琴音、電話に出てくれよ。どうして連絡してくれないんだ?】琴音は深いため息をついた。瑛介のことは知っている。きちんと言い切らなければ、あきらめずに連絡し続けてくるだろう。彼に電話をかけるとすぐに、瑛介の切羽詰まった声が聞こえた。「琴音、警察はどういうことなんだ?前回は被害届を取り下げただろ?なのになんで、警察が沙耶を連れていくんだ?」少しの間を置いて、琴音は鼻で笑った。「私に話したかったのって、それだけ?」「頼むから怒らないでくれよ、琴音。俺は同級生のことを考えて言っているだけなんだ。沙耶は帰国したばかりで、ただでさえ生活が厳しいんだぞ。これで警察沙汰になったら、この先どうやって生活していけばいいんだ?話が違うんじゃないか?問題が片付いたら結婚する予定だったのに。俺とやり直したくはないのか?」瑛介の声はとことん優しかったが、今の琴音は笑い話を聞いているように感じた。「瑛介、どうして全然帰ってこないの?ずっと入江さんの
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