「結婚しろ、結婚しろ……」俺・瀬尾颯真(せお そうま)は人だかりの真ん中に跪き、彼女の返事を待っていた。友人たちが興奮した様子で声を上げ、その歓声が広場中に響き渡る。「もういい。しつこいのよ」プロポーズされた当の藤崎莉央(ふじさき りお)は、地面に置いてあった花束をつかみ上げると、俺に向かって叩きつけた。その顔には、隠しようのない怒りが浮かんでいた。「どうしてそんなに自分勝手なの?結婚を迫ること以外に、あなたにはできることがないわけ?何度も言ったでしょう。今は結婚できないの」結婚できないのか。それとも、結婚したくないだけなのか。喉の奥が詰まり、苦しくて声が出なかった。こういう場面は初めてではない。けれど、ここまで惨めな思いをしたのは初めてだった。八年付き合って、十八回プロポーズして、そのたびに断られた。ここまでくると、もはや笑い話にもならない。プロポーズするだけで、ここまで何度も惨めな思いをする人間なんて、俺くらいのものだろう。しばらくして、どうにか気持ちを落ち着かせた俺は、指輪を差し出したまま彼女に近づいた。情けないほど恐る恐る、縋るような気持ちで彼女に近づいた。「莉央、冗談はやめてくれ。友達も親戚も来てるんだ。早く指輪をつけてくれ」彼女にこの場を丸く収めてほしかった。これだけ多くの人が準備のために力を貸してくれたのだから、そのためにも、もう断らないでほしかった。けれど、その言葉は莉央の怒りに火をつけただけだった。彼女は俺の頬を思いきり平手で打ち、鋭い目で睨みつけてきた。周囲の人々が一斉に静まり返った。「冗談?一番笑えないのはあなたのほうよ。気持ち悪い。そうやって私に罪悪感を押しつけるつもり?蓮がうつ病だって知らないの?そんなに結婚したいの?彼を追い詰めて死なせたら満足なわけ?」罪悪感を押しつけているのは、むしろ彼女のほうだった。好きではないと言われてもよかった。もう愛していないと言われてもよかった。俺とは一緒にやっていけないと言われてもよかった。なのに、彼女が断る理由は別の男だった。彼女の幼なじみの男・朝倉蓮(あさくら れん)だった。蓮がうつ病だから、彼女は見捨てられない。では、俺はどうなる。自分の恋人が他の男ばかり気にかけているのを、俺は黙って受け入れなければならないの
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