All Chapters of 竜と鬼姫の末裔: Chapter 21 - Chapter 30

30 Chapters

第十六章 獣人族の大地 ベラリア 前編

船旅は実に優雅だった。誰にも追われることなくゆっくりできる。移動は、風魔法の力を込めた魔石を埋め込み「歯車」とそこに繋がっている「ぷろぺら」に風を送り込むだけである。「また便利なものを作りましたね。どこでこの知識を?」「母さんに小さい頃教えてもらった!」エルはテネレッツァと話しながら、彼女の話し方が少し年相応に戻っている気がした。「あと何日かな?」「もう一日ほどでしょうか。あっちでは私たちのことも指名手配されていないので、外していいですよ。」エルは仮面を外し、私に返してきた。「え、いいよ、持ってて。お守りみたいなものだから。」荷物にもならないので貰っておくことにした。さらに一日、だんだん大地が見えてきた。「スピードを落としてどこかに止めましょうか。」ゆっくりと浜辺に近づいてく。その時、エルはなにか違和感を覚えた。(ん?なにかに当たったような…)岸に着くと近くにあった木に紐を括り付けて、流れないようにした。「さて、まずは獣人族の方を探さないとね。エル、どこにいるか知らない?」「さあ、私も始めて来ましたので。まあ観光のつもりでゆっくり探しましょう。」そんな緩い感じで、ベラリアの旅が始まった。「母上!」
last updateLast Updated : 2026-08-24
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第十六章 獣人族の大地 ベラリア 後編

~夜~こんなにいたの?と目を疑うほどの人が集まって来て大規模な宴を催していた。私はエルが獣人族の犬人の人達に囲まれているのを羨ましそうに眺めながら、肉串を頬張っていた。もちろん、ばれないように仮面を少しずらしてだけど。「君は、いいのかい?」細々と食べていると、エルドが後ろから声をかけてきた。「いいんです。あんなにも嬉しそうなエルは初めて見たので。」エルは終始笑顔で、楽しそうに犬人達と話をしている。「テネレッツァさんは、「人を探しに来た」、と言っていましたが、誰をさがしているんです?」「母です。」その一言にエルドはどう声を掛けたらいいのか、分からなくなっていた。自分の母は寿命で亡くなったし、母が突然消えるなんてことはそうそうないから。「そう、ですか。見つかるといいですね。」「きっと、見つかると、そう信じてここまで来たので。」そこまで言うと残った肉を口の中に入れた。「ごちそうさまでした。では、私はいきますね。エルをあの人たちから奪い返してきます。」テネレッツァはエルのところまで行き、袖を引っ張った。「あら、どうしたのですか?」いきなり袖を引っ張られたことに驚きつつもテネレッツァの頭を撫でる。「おお?どうした?」「エルを俺らに取られてやきもちやいてるんじゃね?」酒の入った大人達が笑いなが
last updateLast Updated : 2026-08-28
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第十七章 大精霊祭

よろしいのですか?あのような者に精霊石を与えてしまって」次の日、ラードは私たちに申し訳なさそうに聞いてきた。「大丈夫です。精霊石なんてすぐに作れますし。」すると、エルが手のひらに魔力をこめ、精霊石を生成した。「はい、あげます。」「ありがとうございます。これで大精霊祭も成功するはずです。」「いいなぁ」その様子を見ていたテネレッツァは羨ましそうに石を眺めている。「どうしたのですか?もしかして、欲しいのですか?」テネレッツァには図星だったようで、少し恥ずかしそうに、上目遣いでおねだりして きた。「わ、私も欲しいなぁ。」「はあ、まあいいですけど。そんなに珍しいですか?」「ううん。きれいだから!」年相応らしい答えが返ってきた、と笑いながら、もう一つ作って渡してくれた。そんな和やかな雰囲気の中、エル一行はベラリア王国に着々と近づいていた。「そろそろですね。」窓から見える城壁が、だんだんと近づいているのが分かる。「さあ、私共は外におりますので、お召替えをお願いします。」ラードは馬車から出て御者台に乗り、その間にエルは正装に着替えていた。着替え終わったエルはいつもの雰囲気とは違い、いかにも、精霊である、というのが 感じ取れる。「きれい」思わず、声に出してしまった。その一言を聞いたエルは少し恥ずかしそうに「テネレッツァ様だって、こんな服を着れば可愛く見えますよ。」「ほんとに?」するとエルは、自身の体を魔力で包み、新しい服を作り出した。淡い桃色と白を主役とし金の刺繍が入った、可愛らしくも、美しい服だった。「テネレッツァ様もこれに着替えてください。私の愛しいたった一人の主なのですか ら。」気恥ずかしそうに受け取り、テネレッツァは着替えた。城壁はもうすぐそこまで迫っている。ここで、な
last updateLast Updated : 2026-08-31
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第十八章 エルバフィーアの過去

「次はあれにします?」エルが指さしたのは、たくさんの棒が立ててある出店だった。「姉さん。これってなあに?」私は、エルに手を繋がれながら犬族の姉さんに聞いた。「これはねー。この「わっか」を棒に投げ入れる遊びだよ。入った数で景品がもらえるの。やって見る?」せっかくなので、やってみることにした。「せえーい」狙って投げるが、意外と入らない。こういうのは、ムキになっても入らないと分かっているので、自分で自分を落ち着かせる。狙い定めて一発、「あ、入った」10個投げた中で一個だけ入った。「お、よかったねぇ。はいじゃあこれ。景品だよ~」渡されたのは、小さなぬいぐるみだった。なんとなく、エルに似ている気がする「それはね、毎年、担当の精霊様を模して作っているの」へえ、だからか、と自分で納得しぬいぐるみ抱きしめる。「じゃあ、祭りを楽しんでね」出店を離れ、街が一望できる場所まで歩いてきた。流石にここまでくると人がほとんどいない。ふたりで柵から賑やかな城下を眺めていると、エルが口を開いた。「テネレッツァ様、お話したいことがございます。」「どうしたの。急に」「今日の、皆様への挨拶を通して決心がつきました。あなたに私の過去を話すべきだと」私は不思議でならない。普段は自分のことを全く喋らないエルが、いきなり自分の過去について語る、と言い出すのだから。「あれは今から30年前のこと。私がヴィゴーレ様と初めて出会った日、そして姉を亡くした日のことです」 ~エルの過去 30年前~「姉さま、待ってください~」「ほらほら―、ついておいで―」エルとその姉、ミリアフィーアは、今日も今日とて神世の樹の麓 エルフの村の近くで遊んでいた。ふたりはエルフの里の精霊。エルフ族からも慕われ、楽しく幸せな日々を過ごしていた。
last updateLast Updated : 2026-09-04
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第二十一章 テネレッツァと呼ばれた少女

「いま、なんと?」「ですから、真実の秘宝を私にください」ティグニスはテネレッツァのいきなりの一言に驚いている。「では、一つだけ、質問してもよろしいでしょうか」「なんでしょう」「なんのために、あれを使うのですか?」ティグニスははっきりと、テネレッツァに言ってきた。その一言を言われたテネレッツァは少し戸惑っている。そして、「私は、私が何なのか。誰の子なのか。それが知りたいだけです」その真剣な眼差しを見た、ティグニスはついに折れた。「分かりました。では、案内いたしましょう」 王城の地下。王族でも王しか入ることを許されない場所にテネレッツァは今、踏み入っている。「これが、その「真実の秘宝」です」見せられたのは、手のひらサイズの小さな宝玉だった。テネレッツァが、触れようとした瞬間眩い光が放たれ、テネレッツァは吹き飛ばされた。光が収まったと思ったら、宝玉から一匹の獣が出てきていた。「我は、神獣 麒麟。汝は何がために我の力を欲する」「私は、私について知りたい」「そのために、我の力を欲するというのか」麒麟は、やや呆れているようである。「麒麟様、私からもお願いでございます。どうか、この者の願いを聞き入れてくれないでしょうか」「王の頼みならば、仕方があるまい。だが!この場に残っていいのはテネレッツァ、そなたのみだ。他の者は外で待たれよ」麒麟の命に従い、他の者は出ていき、この場には麒麟と、テネレッツァだけが残っていた。「では、話をしようかの。テネレッツァいやアイリアよ」  「一人で大丈夫でしょうか」「麒麟様だから、変なことはしないでしょうが」「やっぱり不安ですね」「二人とも、そんなに心配しなくてもいいでしょう?」二人が振り向くと、そこ
last updateLast Updated : 2026-09-18
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第二十二章 深淵の復活

「どうしたのですか?そんなに慌てて」「どうしたもこうしたもないよ!本大陸が、トーラント共和国がバングラス帝国に落とされた!そして、深淵が復活してしまった!」「え?」テネレッツァは、もう何が何だか分からなくなってきていた。(さっきから、情報量が多すぎるよ!)そういえば、今日は朝から、本大陸の方の天気がとても不安定そうだった。まさか、これの前ぶれだったの?「テネレッツァ様、どうかされましたか?」その様子を見かねたのか、エルが心配そうな表情でテネレッツァに聞いてきた。そこで、テネレッツァはティグニスとオーロラ、エルに今日あったことをすべて話すことにした。 「そうでしたか。それで、あの時、無意識にあの姿になっていたのですね」エルも納得していたようだった。ただ、あの時、というのをテネレッツァは分かっていなかった。「それよりも気がかりなのはトーラント共和国が落とされたのと、深淵がついに復活したことですね」「一体、どうやってそんなにも早く深淵を復活させたのでしょう」ティグニスは疑問の表情を浮かべていた「本当にそうですね。あれは精霊石がないとこんなにも早く復活させることはできないはずですが」「「あっ」」「どうかいたしました?」テネレッツァとエルはその一言に心当たりがあった。というか、それしか考えられなかった。「あの時、精霊石を投げた相手が魔族だったのですね」「どういたしましょう。今から、本大陸に戻られますか?」「いいえ、明日行われる祈りの儀だけは務めさせていただきます」テネレッツァは意外に思っていた。エルが、自分の意見をここまで主張することはそうそうあることではないから「エルって変わったよね。ほんとに」「私は変わったつもりはないのですが」ご飯を食べ終わった後、エルはそのまま明日の準備をするために、ティグニスと出かけ
last updateLast Updated : 2026-09-21
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第二十三章 戦場へ

私達は、獣人族の人たちに見送られながら、獣人族の大地を出発した。「テネレッツァ様、まずどこに行きますか?」「うーん。着く場所にもよるけど、ルミエール教国かな」船はベラリアに行った時と同じで、すごい速度で進んでいく。海上で四日ほど過ごしていると、段々と陸地が見えてきた。「不思議なこともあるもんだね。あそこ、私たちが出発したとこじゃない?」「確かに、そうかもしれませんね」ゆっくりと速度を落とし、岸に船をつけた。「で、ここからどっちに行けばいいんだろ」テネレッツァは、きょろきょろ周りを見渡していた。すると、「ガアア!!」近くの木々から、オーガと思われる魔物と、それを守るようにゴブリンが現れた。「あちゃー。ばれちったか。仕方ない、エル!やるよ!」「承知いたしました」なぜ、ゴブリンがオーガっぽい魔物を守っているのかテネレッツァ達は見当がついていなかったが、とりあえず倒すことにした。「ウィンド 5連」エルの魔法でゴブリンが吹き飛び「プーラ・エルドゥーラ 貫通弾」テネレッツァによってオーガっぽい魔物の腹に風穴が開き、そのまま倒れた。「いやあ、手厚い歓迎だねー」「ある意味そうですけど」試しに周囲を探査してみると、見覚えのある反応があった・「テネレッツァ様、何かありましたか?」てくてく歩いていくと、古ぼけた焚火後があった。「間違いなくここは、私達の出発したばしょですね」エルもこれを見て確信したようだった。再度周囲を見渡すと、あたりが出発した時よりも、荒れ果てているように見えた。「なんか、廃れていない?」「あら、奇遇ですね。私も思いました」エルは風魔法を使い、周囲の草を切り飛ばした。「では、ルミエール教国へ行きましょう」テネレッツァは、半分あきれ顔で
last updateLast Updated : 2026-09-25
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