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第11章

ある深夜、携帯電話が鳴った。洸星からの電話だった。「ん?誰?」隣で寝ている夫の沢真が目を覚ました。「洸星からだ」沢真は一瞬驚いたが、出ていいと言った。「出なよ、何か急用かもしれないし」私は電話に出た。「美雲?」「私よ、何か用?」「美雲、もう疲れきっちゃったんだ」洸星の声はかすれていて、まるで長い間話し方すら忘れたような声だった。沢真が時音の動画を開いた。画面には、時音が再び発狂し、自分の首にナイフを突きつけて洸星を脅している様子が映っていた。背景は、S市にある彼らの家だった。部屋にある物はめちゃくちゃに散らばっていて、明らかに激しい喧嘩が繰り広げられた後だった。「美雲、俺は後悔している」「遅いし、もう寝なさい」「美雲、結婚の日、君を去ったのは、時音のことが好きだったからじゃない。ただの自己満足だった。彼女に、俺がどれほど素晴らしい人間なのかをアピールしたかった。でも、間違っていた。君を失うことになるとは思わなかった」「もう昔のことよ。時音にあなたが必要なんだから」「俺にはもう何も残っていない。何も残っていないんだ」電話の向こうで、彼の泣き声が長く響いていた。沢真が電話を受け取った。「千葉さん、俺の妻にまとわりつくのはやめてください」電話の向こうの泣き声は、たちまち止んだ。「美雲、結婚したのか?」「ええ、2年前です。子供も一人いて、とても幸せです。千葉さん、妻がいい人なのは分かっています。でも、それがあなたがまとわりつく理由にはなりません。これからは、もう電話をかけてこないでください」……半月後、時音のVlogに最後の投稿が掲載された。それは訃報だった。時音は臓器移植の適合が見られず、亡くなった。彼女の葬儀は、洸星が執り行った。彼女の夫という立場で。人前に現れた洸星の顔には悲しみはなく、重病患者の世話による辛労に蝕まれて疲れ果てた後の諦めだけが漂っていた。彼は静かに壇上に立ち、少し変な訃報を読み上げた。「俺は千葉洸星、時音の夫です。妻の葬儀にご参列いただいた皆様に感謝申し上げます。彼女は俺を愛していなかったし、俺も彼女を愛していなかった。彼女はただ俺という役を必要としていただけで、世話をしてくれる人を探していただけだっ
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