焚き火の爆ぜる音だけが響く。 山中の道無き道を、どれほど歩いただろうか。もう、何日も彷徨っているような感覚さえ覚えた。 レイナとロアは、森の中のわずかに開けた場所を見つけ、そこで小休止することにした。 ロアはともかく、レイナはどうしても体力が続かない。一晩中、山道を休みなく歩くことは難しかった。 真夜中の森の中に、火を挟んで座る2人。 青髪の騎士は、その目を伏せてじっとしている。眠っているように見えるが、目や身体を休めつつ、周囲への警戒は怠っていない。 レイナ自身、疲れてはいたが、眠れる気は全くしなかった。あの狂気の魔術師が追ってくるかもしれないと思うと、気が休まらない。「あの...ロア...さん」 だから、先ほどから疑問に思っていたこのを口にしてみることにした。「そのサークレット...神官ではないなら、なぜ...?」「......」 目を開けたロアは、視線だけレイナに移す。 戦士が頭の保護のために、鉢金等を身に着けること自体はごく普通のこと。しかし、ロアが額に装着したサークレットは、その意匠から、主に神官が使うものと思われた。仲間のエルフが着けていた額当てを、レイナは思い出す。 それを身に着けていながら、ロアは神官ではないと語っていた。いったいどういうことなのか、レイナには疑問だった。「...お前には、関係のないことだ」 それだけ言ってロアはまた目を伏せてしまう。 いつぞやの時と同じような、何人《なんびと》も寄せ付けない拒絶の言葉。全身から、それ以上話すことはないと言わんばかりの空気を醸し出していた。 だが、あの時とは違い、レイナは引き下がらなかった。「貴方は、私のことをよく知っていました」 再び、ロアが目を開ける。「でも私は、貴方のことを何も知りません」 目を合わせようとしない彼に、レイナはその黄金色の瞳を真っ直ぐに向けていた。「それは少し、不公平じゃないですか?」
Last Updated : 2026-09-04 Read more