玄関のドアを閉じると、未来はしばらく動けずにいた。 雨に濡れた身体で寄りかかった鉄の扉が、冷たく感じた。 ドア越しに、外の雨の音が聞こえる。 未来は、自分の手でもう一度左耳に触れた。 会議室での、ひやりとした指の温度を思い出した。 俯いて、唇を噛んだ。 どうして、今頃になって、あの人に遭うんだろう……。 -☂️- ——4年前未来は少しそわそわしていた。 銀のトレーを持って、お店の出入り口をずっと見ていた。 鈴の音と一緒に、古い木製の扉が開いた。 いつもの時間だった。 一人の男性が入ってくる。 金茶の髪。涼やかなグレーの瞳。端正な顔立ち。 男性は窓辺の席に座って、未来の方を見てくる。今日も、来てくれた。未来は早く鳴る鼓動を感じつつ、注文票を持ってテーブルに近づく。 「いらっしゃいませ。ご注文は——」 「いつものでいいよ」 テーブルに肘をつきながら、軽やかに言う。 -☂️- 未来は男の座るテーブルにブレンドコーヒーを置く。 「今日も、いい天気だね」 窓の外を見ながら、男は言う。 「そう、ですね」 そんな短いやりとりでも、未来にとっては嬉しかった。 「……あのさ、仕事上がりって何時かな?」 男は未来の方に向き直って言う。 「このあと、もしよかったら少し時間もらえる?」 「え、あの、お客様…!」 突然の台詞に未来は狼狽えた。 「——神城零。零って呼んでいいよ」 -☂️- 「零さん…。その、私…初めて、で……」 未来は、この後の事を考えると、恥ずかしすぎて思わず両手で顔を隠してしまう。 白い素肌がピンク色に染まっている。
Last Updated : 2026-07-02 Read more