結婚してわずか3日目。ハネムーンが、必ずしも二人だけのものではないのだと、初めて知った。航空券は3ヶ月前、格安のセールで手に入れたもの。行き先は澄京、予約した席も、当然二人分だった。出発の前夜、夫の近藤誠司(こんどう せいじ)が言い出した。彼の母親・近藤和江(こんどう かずえ)が腰痛持ちだから温泉に連れていきたい、それから、仕事を辞めたばかりの妹・近藤千佳(こんどう ちか)も気晴らしに同行させたい、と。「いいよ、家族だもんね」と答えた。現地の温泉旅館に到着すると、ツインルームが一部屋しか空いていないとフロントに告げられた。てっきりエキストラベッドを追加するのだと思っていた。しかし、誠司は母親と妹に視線を走らせた後、こちらを振り返って平然と言い放った。「フロントでデイユースの部屋が空いてるか聞いて、そこでシャワーだけ浴びてきなよ。今夜はロビーのソファで適当に横になればいいから」その言葉と同時に、和江の荷物を甲斐甲斐しく運び始めた。スーツケースを手に廊下に立ち尽くしていると、部屋から千佳がひょっこりと顔を出した。「お義姉さーん、ついでに下に降りてミネラルウォーター買ってきてくれない?部屋のやつ、冷えてないんで」碧ノ湖の夜風が吹き抜けて、驚くほど頭が冷えていく。かつてないほど、思考がクリアになるのを感じる。ロビーへと降りて、その足で帰りの航空券について調べ始めた。私は、一人で帰るのだ。「フロントに聞いたら、こんな真夜中にデイユースは無理だって。トイレで顔でも洗って、ロビーのソファで一晩我慢してくれ」タクシーに乗り込んだ瞬間、誠司からボイスメッセージが届く。「明日の朝は、母さんを連れてあの話題の朝食専門店に行って、母さんは胃が弱いから、ネギは抜きにするよう店員に伝えておいて」「早く行って並んどけよ。母さんが起きたら腹が空くかも」耳元からスマホを離す。車内は静まり返っている。「お客さん、どちらまで?」バックミラー越しに運転手が尋ねてくる。「空港までお願いします」「便名は分かりますか?ターミナルを調べますよ」ハンドルを切りながら運転手が言う。「南城市行きの始発便です。着いてからチケットを買うので」少し驚いた様子を見せる運転手。「こんな真夜中に……もしかして、彼氏と喧嘩でもしちゃいました?」「喧嘩
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