結婚して六年。私は六年間ずっと、古賀慶介(こが けいすけ)の背中を追いかけ続けてきた。今日は結婚記念日。この案件のために、私はクライアントの要望をまとめ、資料を集め、三日三晩ほとんど眠らず、食事すらまともに取っていなかった。ようやく弁当のデリバリーが届き、空腹を満たそうとした、その時――慶介が鼻を押さえながら冷たく言った。「何を食べてるんだ?何度言えば分かる。事務所で食事をするな。万が一、クライアントの資料を汚したら責任を取れるのか?そんなに食い意地が張ってるのか?」そう言いながら、彼は私の弁当をゴミ箱へ放り込んだ。「もうすぐ退勤だろ。家に帰ってから食べればいい」「事務所の外で食べるから」と言いかけた言葉を飲み込み、私は胃の痙攣に耐えながら水を一気に飲み干した。その時、電話が鳴る。慶介は一瞬で表情を変えた。「もしもし。来るのか?ご飯は食べたか?まだなら注文しておくよ」甘く優しい声だった。それが私に向かう途端、冷たい命令口調に一変する。「旬彩庵に電話して、料理を注文してくれ」何かを思い出したように電話を切ると、軽く咳払いをして言った。「日奈子は胃が弱い。医者にも空腹は禁物だと言われてる。お前とは違う……早く行って」彼は手を振り払い、私に注文の電話を入れるよう促した。事務所の皆は集まって、今のやり取りを見ていた、私を気の毒そうに見つめている。私は首を横に振った。けれど心は、とうに冷え切っていた。古賀慶介にとって――忘れられない初恋・渡辺日奈子(わたなべ ひなこ)が絡めば、私はいつだって譲る側。でも彼は私も人間であるということを忘れている。私はお腹も空くし、痛みも感じる人間だ。そして、絶望もする。やがて退勤時間。慶介はグッチのバッグと白のジャケットを手にし、紳士ぶって事務所のドアを開けた。私を見ると、意味深な視線を向ける。「少し来てくれ。話がある」事務所中が興味津々の目を向ける中、日奈子が目を赤くして私に頭を下げた。「ごめんなさい」その言葉に慶介は眉をひそめる。「君が謝る必要はない」そう言うなり、彼は私の腕を強く掴み、オフィスへ引きずり込んだ。机の上には、離婚届が置かれていた。「日奈子は最近精神的に不安定で、そばに誰かが必要なんだ。だから……しばらく
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