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22度目の離婚届に署名した私は、もう振り返らない
22度目の離婚届に署名した私は、もう振り返らない
Auteur: オーツ

第1話

Auteur: オーツ
結婚して六年。私は六年間ずっと、古賀慶介(こが けいすけ)の背中を追いかけ続けてきた。

今日は結婚記念日。この案件のために、私はクライアントの要望をまとめ、資料を集め、三日三晩ほとんど眠らず、食事すらまともに取っていなかった。

ようやく弁当のデリバリーが届き、空腹を満たそうとした、その時――

慶介が鼻を押さえながら冷たく言った。

「何を食べてるんだ?何度言えば分かる。事務所で食事をするな。万が一、クライアントの資料を汚したら責任を取れるのか?そんなに食い意地が張ってるのか?」

そう言いながら、彼は私の弁当をゴミ箱へ放り込んだ。

「もうすぐ退勤だろ。家に帰ってから食べればいい」

「事務所の外で食べるから」と言いかけた言葉を飲み込み、私は胃の痙攣に耐えながら水を一気に飲み干した。

その時、電話が鳴る。

慶介は一瞬で表情を変えた。

「もしもし。来るのか?ご飯は食べたか?まだなら注文しておくよ」

甘く優しい声だった。それが私に向かう途端、冷たい命令口調に一変する。

「旬彩庵に電話して、料理を注文してくれ」

何かを思い出したように電話を切ると、軽く咳払いをして言った。

「日奈子は胃が弱い。医者にも空腹は禁物だと言われてる。お前とは違う……早く行って」

彼は手を振り払い、私に注文の電話を入れるよう促した。

事務所の皆は集まって、今のやり取りを見ていた、私を気の毒そうに見つめている。

私は首を横に振った。けれど心は、とうに冷え切っていた。

古賀慶介にとって――

忘れられない初恋・渡辺日奈子(わたなべ ひなこ)が絡めば、私はいつだって譲る側。

でも彼は私も人間であるということを忘れている。私はお腹も空くし、痛みも感じる人間だ。そして、絶望もする。

やがて退勤時間。

慶介はグッチのバッグと白のジャケットを手にし、紳士ぶって事務所のドアを開けた。

私を見ると、意味深な視線を向ける。

「少し来てくれ。話がある」

事務所中が興味津々の目を向ける中、日奈子が目を赤くして私に頭を下げた。

「ごめんなさい」

その言葉に慶介は眉をひそめる。

「君が謝る必要はない」

そう言うなり、彼は私の腕を強く掴み、オフィスへ引きずり込んだ。

机の上には、離婚届が置かれていた。

「日奈子は最近精神的に不安定で、そばに誰かが必要なんだ。だから……しばらく離婚しよう。

前回と流れは変わらない。彼女の懐かしいあの日々に戻りたいっていう願いを叶えてやりたいだけなんだ。

安心しろ。彼女の気持ちが落ち着いたら、また復縁するから」

昔を語る彼の目元には、珍しく穏やかな笑みが浮かんでいる。

けれど私の心は寒かった。

体が震えるほどに。

日奈子が来るや否や、彼はすぐ仕事を理由に私を追い払い、彼女と二人きりになった。結局あの二人は懐かしい日々と私との離婚を話し合っていた。

結婚記念日に離婚を切り出し、その後また復縁するだなんて。

そんな身勝手な話、ありえない。

「署名してくれ。来週の月曜に役所へ行く。頼むから俺を困らせないでくれ」

そう言い残し、彼はペンを放り投げて上着を手に取り、足早に部屋を出た。

ドアの外では日奈子が待っている。

二人は目が合った瞬間、嬉しそうに微笑み合う。そして彼女は私に深々と頭を下げた。

「ごめんなさい。そして、ありがとうございます。安心してくださいね。慶介はちゃんとあなたに返しますからね」

結婚を遊びのように扱う男。人を物のように貸し借りする女。

私は二人の前で迷いなくペンを取り、離婚届に名前を書いた。

慶介は満足そうに頷き、日奈子の肩へ手を回す。二人はぴったりと寄り添い、人目などまるで気にしない。

まるで新婚夫婦だった。

昔の彼なら、こんなことは絶対にしなかった。

慶介にとって弁護士という職業は神聖で、常に厳かでなければならないから、人前でいちゃつくなど恥だと言っていた。

たとえ私が感情を抑えられず、「抱きしめて」と頼んでも断った。

今になって分かる。

彼が拒んでいたのは、私だけだったのだ。

事務所の人たちが帰った後、私はスマホを取り出し、恩師の木村先生へ電話をかけた。

「先生。先日お話しされていた国の研究開発プロジェクト、参加させてください」

電話の向こうは驚いたようにしばらく沈黙した。

「急にどうした?夫と離れたくないから断るって言ってたじゃないか。本当にいいんだね。一度参加したら、何年も会えなくなるぞ」

私は静かに答えた。

「離婚しました」

沈黙が流れ、やがて先生は穏やかな声で言った。

「彼よりも、国の方が君を必要としている」

三十分後、先生から送られてきた資料をタブレットで確認していると、慶介から数枚の写真が届いた。

そこにはあの二人が寄り添い、あからさまに親密な様子で写っている。

しかも、お揃いのパジャマを着た姿だった。

続いて音声メッセージが届く。

タップすると、スマホから聞こえてきたのは、日奈子の甘い吐息と艶めいた喘ぎ声だった。

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