Semua Bab 愛していると気づいたから、私はあなたを手放します: Bab 11 - Bab 20

63 Bab

第11話 お義母様とテラスで

結婚してから生活リズムが整い、とても充実した日々を送っている。 しかし、一つ問題がある。 ……ディートハルトが帰ってこない。 正確には、帰ってきてはいる。 結婚してから一応同じベッドで寝ているが、深夜にディートハルトが帰宅して朝早く出発してしまうのだ。 いまだ初夜は行われていない。 私は毎夜、カトレーヌに湯あみできれいにされて、透け感のあるナイトドレスを着せてもらっている。 週末の晩餐でお義母様から、「そろそろなんじゃないの?」という視線が刺さる……。 先に結婚したディートハルトの弟夫婦が妊娠したと、うれしそうに報告していた。 義両親も目を細め、義妹を気遣っていた。 ——今日は金曜日。 明日は私もディートハルトも仕事がお休み……。 今夜こそ初夜を決行しないと——私の立場が危うい。 今夜は寝ずに待っていよう。 私は大好きな月刊魔道具という雑誌を開いた。 月刊誌で、今一番熱い魔道具の紹介やレシピ、研究者の紹介などが書かれている。 私の愛読書で、いつか私もこの雑誌に載ることが夢なのだ。 キィ……と扉が開いた。 扉に目を向けると、瞳を大きく開いたディートハルトと目が合った。 「アーシュ、どうしたんだ?」 「おかえりなさい。いつも先に寝てしまうから、今日こそは起きて待っていようと思ったの……」 「そ、そうか……。ありがとう」 彼の視線が泳ぎ、目が合わなくなった。 「何か飲む?」 「あぁ、ありがとう」 カトレーヌが用意しておいてくれた、保温力抜群の魔道具ポットからお茶を入れる。 「疲れが取れる、ハーブティーよ」 「あ、ありがとう」 ディートハルトは形の良い唇で、ハーブティーを口に含んだ。 喉仏がゆっくりと上下し、私は目を離せなかった。 (なんだか、私より色気がある……) これから初夜のやり直しをすると思うと、心拍数が上がっていった。 ——でも、頑張らないと……。 私は早くなる鼓動を押さえて、立ち上がった。 「な、なんだか暑いわね……」 私は上に着ていた厚手のガウンを脱いだ。 薄手のナイトドレスは下着が透けていて、体のラインが良く見えるものだ。 チラリとディートハルトを見ると、こちらを見て口を結んだ。 (良かった……、効果はあった
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-06
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第12話 二人の誓い

「アーシュ、これからちょっと出かけない? 気分転換にさ」「あ、うん……。そうね、たまにはいいわね」 このまま屋敷にいて、またお義母様と顔を合わせるのも気まずい。 私たちは馬車に乗り込み、心地よい揺れの中、景色を楽しんだ。ディートハルトはいまだ無言だ。さっきのこと、まだ怒っているのかな……。私は隣に座るディートハルトの袖をつかんだ。「ん? どうした?」思いもよらず、彼の甘い声に頬が熱くなる。「あっ、さっきのこと……。大丈夫?」「あ……、うん。母さんがごめん……。アーシュに嫌な思いさせちゃったね」ディートハルトがそう言って、手を絡めてきた。私も素直に甘えることにした。「うん、少しね。でも、そういう約束ではあったから……。仕方ないよ……」私はディートハルトの肩に頭をのせた。細く華奢だった肩は、今では分厚く逞しい肩へと変わっていた。「ディーは本当に逞しくなっちゃったね。昔は私の方が大きかったのに」「ははは、いつの話をしてるんだよ」「出会った頃よ」「確かに、あの頃はアーシュの方が大きかったよね」「私のことを庭師の娘だと勘違いしてたし……」「あ、それは仕方ないだろう! 普通の令嬢はあんな格好もしないし、水やりもしないよ」私たちは目が合い、どちらからともなく笑った。こんなに、気兼ねなく話したのは——いつ以来だろうか……。そんなことを思っていると、馬車が止まった。「着いたみたいだね。じゃあ、降りようか」「ここは……」懐かしい景色……。「ずっと忙しくて来られなかっただろう?」「うん……」馬車を降りると、従者が花束を渡してくれた。「ありがとう」私は従者にお礼を言った。「行ってらっしゃいませ」従者が一礼した。私はディートハルトのエスコートで、目的の場所まで行った。広々とした貴族専用墓地には、季節の花々や草木が綺麗に手入れされていた。私は目の前の墓石に花束を置いた。墓石にはおじい様とおばあ様の名前が刻まれていた。おばあ様は私が生まれて間もなく亡くなり、おじい様の作業台には、いつもおばあ様の写真とお花が飾られていた。「おじい様、おばあ様、ご無沙汰しております。ご報告が遅くなりましたが、私ディートハルトと結婚しました。喜んでくれるかな? 私……、伯爵邸で大事にされているわ。おじい様の勤めていた、王宮の魔道具課
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-07
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第13話 カメリア治療院

 「はい、お義母様どうぞお入りください」お義母様が訪ねてくるなんて、初めてだった。「おはよう、アーシュレイ」「おはようございます、お義母様」私はお義母様に一礼した。「手短に話すわね。仕事帰りにここに寄ってほしいの」お義母様から一枚の封筒を渡された。「ここは王宮と我が家のちょうど中間地点だから、通いやすいはずよ。話は通してあるから……。では、忙しい時に悪かったわね」そういってお義母様は部屋を出ていった。なにかしら……。私は封筒を開けた。するとそこには不妊専門病院『カメリア治療院』と書かれた文字が目に飛び込んできた。「不妊治療……」不妊も何も、一度も……。私はため息をついて、その封筒を仕事用のバッグに入れた。◇◇◇  「アーシュレイ様ですね、お待ちしておりました。こちらにどうぞ……」今日は定時に上がり、お義母様に言われたとおりにカメリア治療院にやってきた。外観は治療院の看板もなく、淡いピンク色の可愛い建物だった。 伯爵家の馬車で連れていってもらえなかったら、まず見つけられないだろう。建物の内装も、白やピンクを基調としていて家具や調度品は落ち着いたものが多く、とても居心地が良い。完全個室で、この時間は他の患者さんはいないようだ。もしかして、貸し切りなのだろうか……。さすが、お義母様……。確かに嫡男の嫁が不妊症なんて、噂がたったら……。待合室で待っていると、診察室のドアが開き、優しそうな50代くらいの女医さんが迎えてくれた。「はじめまして、私はノエルと言います。今日は不妊のお悩みとお義母様から聞いていますが……」どうしよう……、なんて説明すれば良いのやら。ノエル先生は柔らかな笑みを浮かべた。「こういったことって、言いにくいですよね。うちは完全個室で、この時間はアーシュレイ様しかおりません。秘密も守りますので、どうぞ悩んでいることがあったら打ち明けてください。私で力になれることがあったら、お手伝いいたしします」先生がここまで言ってくれるなら……、正直に話しても良いよね。「実は……、お義母様には言えなかったのですが。その……、子作りを一度もしていないんです……」わたしは膝の上の拳をギュッと握った。「夫にはそれとなく言ってみたのですが、いつもはぐらかされてしまって……。ここに来る以前の問題ですよね」私は、乾い
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-07
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第14話 彼の気持ち

ディートハルトは私の肩をつかんだ。「ど、どこか悪いの?」彼の声が少し震えていた。「ううん、体は……大丈夫。お義母様の紹介で、不妊の……病院に行ってきたの」「不妊て……」「うん……。女医さんで、すごく優しく話を聞いてくれたの……。 なんかうれしくなっちゃって」「今日色々診てもらったけど、妊娠するには問題ない体だって……言われたよ」私はディートハルトの腕をつかみ、その美しい翡翠の瞳に問いかけた。「ディー、子供……作らない……?」言ったあと、体中の熱が顔に集まり、心臓の音がディートハルトに聞こえるんじゃないかと思った。彼をみると、翡翠の瞳が揺れていた。そして、視線を——外された。ドクン……。胸が重くなり、手で押さえた。私は、ガウンの紐を外しシースルーのナイトドレスになった。「私じゃ……ダメかな……。女性として——見られない?」ディートハルトをつかんでいる手が震えてきた。ガバッとディートハルトに強く抱きしめられた。「アーシュはどこから見ても、素敵だよ。そんなこと言わないで……」「うん……。じゃあ……」ディートハルトも同じ気持ちになってくれたのかな……?私はディートハルトの力強い腕や胸板にドキドキしていた。幼なじみの友人から、男性として……。「でも、子供はもう少し待ってほしい……」「もう少し……?」「あぁ、今はお互い若いし、仕事が楽しいだろ? だから、子供はもう少し落ち着いてからにしたいんだ。もちろん母さんに何か言われたら、俺がちゃんと言うから。もう少しだけ待ってほしい……」ディートハルトの真剣な気持ちが伝わってきて、私はうなずくことしかできなかった。拒否はされなかっただけ、良しと思わなきゃいけないのかな。「じゃあ、寝よ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-08
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第15話 手紙

「アーシュ、話がある」「うん、何?」いつもより早く帰宅したディートハルトが、私に話しかけてきた。イヴェッタの言っていたことかもしれない。「噂で聞いているかもしれないが、魔獣討伐部隊が組まれた。俺もその部隊に行くよう団長から言われた」「うん……」「断ることも出来るが、俺は行きたいと思っている。騎士団員として、成長できる良い機会だと思っているんだ」ベッドサイドに座っている私の前に、ディートハルトが跪いた。そして、冷たくなった私の手を両手で包み込んでくれた。——温かい。「アーシュを一人この家に残していくのは、本当に心苦しい……。でも、市民に危険が及んでいるんだ。どうか——分かってほしい」ディートハルトはおじい様との約束を果たしたいと思っている……。そんなの反対できるはずないじゃない……。「絶対にケガしないで……、無事に帰ってくるって約束して……」「ああ、もちろん約束する」私はディートハルトの顔を見ることが出来なかった。顔を見たら、情けなくすがりついてしまいそうだったから。涙ながらに訴えて、ディートハルトの意志を曲げてしまう。——それだけはしたくなかった。ディートハルトは私の一番の理解者で親友だ……。女性の身で、幼い頃から魔道具に没頭する私を、いつも見守りどんな時も理解してくれた。 私はディートハルトにとっても、そんな人になりたい。友人として……、愛のない夫婦だとしても……。――そして、ディートハルトは討伐部隊に参加し、遠征に出発した。◇◇◇「はぁ……」 「ちょっと、最近ため息ばかりじゃない……」 私のデスクを通りかかったイヴェッタが、私にそう声をかけてきた。「だって、来る日も来る日も同じ物ばか
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-08
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第16話 夢でも逢いたい

「とうとう、最後の山間部で無事に魔獣の討伐が終わったと知らせが届いた! 皆、今日まで本当にご苦労だった。特別休暇も出るからしっかり休んでくれ……」魔道具課の面々が歓喜の声を上げ、「家に帰れる」と抱き合って喜んでいる。よかった……。やっと終わったんだ……。私も息をはいて、デスクに伏せた。これで、ゆっくり眠れる……。そして、ディートハルトに会える……。また、妊活のことがあるけど、それは追々考えていこう……。今はとにかく眠りたい……。私は重くなったまぶたをそのまま閉じた。 もう一つの手紙を開けていないことに気づくのは、だいぶあとになってからのことだった。 ◇◇◇ あれ……?ずいぶん静かだなぁ……。確か……討伐が終わったって……。仕事中だったことを思い出し、目が覚めた。目に映ったのは、魔道具課の天井ではなく、なぜかいつも寝泊まりしている宿舎の天井だった。あ……、討伐が終わったって言うのは夢だったのね。そうよね、まだまだ時間がかかるわよね。じゃ、今は何時なんだろう……。全く時間の感覚がない……。相当疲れがたまってるわね。私は横向きになって、時計を見ようとした。そこに人の後ろ姿があった。その人は、ベッドサイドに座って船をこいでいた。この金色の髪の毛、知っている……。かなり伸びたようで、襟足で一つに結んでいた。これも夢なのだろうか……。だってまだ帰ってこられるはずないもの。私は恐る恐る手を伸ばした。柔らかく、ふわふわの金色の髪の毛の感触……。日焼けした首筋に、盛り上がった肩の筋肉も見える。髪の毛からそのまま、首に指
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-09
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第17話 その背中に傷に……

「アーシュは少し痩せた? なんか抱きかかえたとき、軽くなった気がした」 「あー……。うん、そうかも。なんせ、不眠不休だったから……。って、抱きかかえたときって……? それにどうやって帰ってきたの?」最後の討伐地は辺境の山間部だったはず。そこから、帰るには一か月はかかる。 「あー……、バーデン様が転移魔法で先に帰るって聞いて、便乗したんだ。それでその足で、魔道具課に行ったら、イヴェッタがアーシュが机で寝ちゃっているから、宿舎に持って帰れって。だから、そのまま抱えてここにきた……。アーシュよっぽど疲れていたんだね。全く起きなかったよ」「えっ……、ええっ!! そんな……」 きっと平日の昼間だったから、他の部署の職員にも見られている!しばらく、社員食堂に行きづらいな……。 「ディーも疲れてるのに、本当にごめんね! おかげで、良く眠れました……。イヴェッタのお兄様と仲が良かったの、知らなかったわ……」 「今回の討伐で、一緒に戦う機会が多くて、イヴェッタの同級生だよねって声をかけてくれたんだ。雲の上の存在だと思ったから、すごくうれしかったよ。バーデン様は多忙だから、転移魔法で魔法省に戻られるって聞いて、お願いしたら快諾してくれたんだよ」バーデン様の転移魔法!いいなぁ……。あんな豊富な魔力があったら、どんなにいい魔道具が作れるだろう。「他のメンバーも2~3日中には帰ってこられるだろうから」「え?そんなに早く?」「うん、イヴェッタがバーデン様と作っていた、転移魔道具が試験的に使われる事になったんだ」イヴェッタは大勢の人や、馬、馬車を転移魔法のように移動できないか、入職してからずっと研究していた。それがとうとう試験的に導入されたのか……!すごいなぁ……。私のつくるおもちゃのような魔道具とは大違いだ……。 それがとうとう使われるのかぁ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-09
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第18話 今夜こそ

私たちは離れていた時間を埋めるように、唇を重ねた。そして、私の体をそっとディートハルトが倒してきた。ディートハルトの体の重みを感じる。唇が顔から首へ降りていく。少し恥ずかしく、くすぐったかった。もしかして、今日こそ……。そんなことを思っていると、突然ディートハルトが起き上がった。「ごめん!」ディートハルトは、脱いだ上着を持ちそのまま部屋を出ていってしまった。え……?え……?なんで謝って……。何が起こったのか理解できず、ただぼんやりと彼が出ていった扉を見た。そしてゆっくりと乱れた衣服に視線が止まる。下着がチラリと見えていた。そう、色気もなくよれた下着が……。やってしまった……。仕事に行くことばかりに気を使って、女性としての身だしなみをおろそかにしていた……。こんな下着を見たから、ディートハルトは……。私は盛大にため息をつく。せっかく今までで一番進展していたのに……。なんてことを……。次、どんな顔して会えばいいのよ……。私はうつ伏せにベッドに顔を埋めて、足をバタバタとはしたなく動かした。◇◇◇ 翌日、出勤すると何となく視線を感じた。ああ、きっと昨日ディートハルトに抱っこされたのを見た人がいたのかもしれない……。疲れて帰ってきた騎士に、抱っこをさせる悪女……とでも言われているのだろうか……。昨日はあれから、眠れずけっきょく寝不足だ。魔道具課に入ると、出勤している人はまばらだった。イヴェッタはもう出勤していた。「イヴェッタ、おはよう!」「あら、お姫様、おはよう」イヴェッタはニヤニヤしながら、そう言った
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-10
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第19話 あなたの家族

「アーシュ、今帰り?」 「うん。ディーは?」 「俺は、アーシュを待ってた。一緒に帰ろう? 今日は家でいいんだよね?」 「うん……」 何となく、目を合わせられなくて、伏し目がちに答えた。 もう、特別勤務は終わったので、宿舎での寝泊まりは終わったのだ。 少し荷物が重かったので、馬車で助かった……。 でも、昨日のこともあって気まずい……。 馬車で帰ればそんなに時間はかからないが、無言の時間が時の流れをゆっくりに感じさせた。 伯爵邸に帰るのに、何か忘れてる気がした……。 なんだろう……。伯爵家で会う人……? あっ! お義母様からの手紙だ……。読んでいなかった……。 私はバッグを開けてゴソゴソと中を探った。 書類の中から、その手紙が出てきた。 窓の外の景色を見ると、まだ読むだけの時間はありそうだった。 さっそく手早く手紙を開封して、便箋を開いた。 『アーシュレイへ 最近顔を見ていませんが、元気にしていますか? 忙しくても、ちゃんと寝てご飯は食べてくださいね。 今は討伐のこともあって、忙しいのは理解しています。 討伐が終わったら、仕事中心から子作り優先にしてほしいの。 仕事を許可したけど、こんなに働いていいなんて……。 あなたたちは友人関係が長すぎました。 だから、期限を設けます。 ディートハルトが帰ってきて、一年しても子供ができなかったら、ディー
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-10
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第20話 警告

翌日、ディートハルトと義弟は二人で遠乗りに出かけてしまい、残った女性たちは義母が開くお茶会に参加することとなった。正確には女性たちとおいっ子のスティーブ君だ。義妹がスティーブ君をあやしながら、「お姉さんもだっこしますか?」と声をかけてくれた。「あ、ありがとう! でも、せっかくご機嫌なのに泣かせちゃったらかわいそうだから、遠慮しておくわ」私は笑顔の仮面を張り付け、返答した。ディートハルトが遠征に行っているとき、一度抱っこさせてもらったが、大泣きさせてしまった。義母にすぐにスティーブ君を抱き上げ、代わってくれた。『おばちゃんはだっこが下手でいやだったよね、ごめんね』義母はそう言ってあやした。それから、抱っこが怖くなってしまった。ご機嫌に遊んでいたスティーブ君が、突然泣きだした。 「あ、おむつがぬれてしまったようです。申し訳ありませんが、お部屋に戻らせていただきます」 「えぇ、かまわないわ。スティーブを優先にしてあげて」私には向けられることのない柔らかい表情で、義母はスティーブと義妹を見送った。義母の考えで、この伯爵家はできる限り子供の母親と義母で子育てをするという方針になっている。あれやこれやと口を出す義母にも、義妹はいつも笑顔で上手に返している。本当にすごいなと感心してしまう。 「手紙は読んだかしら?」義母からの声掛けに、現実に引き戻された。——二人きりのお茶会。 「はい、読ませていただきました」 「私は、本気ですからね」義母の鋭い視線が私を刺す。これは警告なんだと、その目がはっきり伝えてきた。 「はい、お義母様……。頑張ります……」 「できれば、最悪な事態は避けたいから、頑張ってちょうだいね。あの治療院にもまた通いなさい」 「はい……」
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-11
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