結婚してから生活リズムが整い、とても充実した日々を送っている。しかし、一つ問題がある。……ディートハルトが帰ってこない。正確には、帰ってきてはいる。結婚してから一応同じベッドで寝ているが、深夜にディートハルトが帰宅して朝早く出発してしまうのだ。いまだ初夜は行われていない。私は毎夜、カトレーヌに湯あみできれいにされて、透け感のあるナイトドレスを着せてもらっている。週末の晩餐でお義母様から、「そろそろなんじゃないの?」という視線が刺さる……。先に結婚したディートハルトの弟夫婦が妊娠したと、うれしそうに報告していた。義両親も目を細め、義妹を気遣っていた。——今日は金曜日。明日は私もディートハルトも仕事がお休み……。今夜こそ初夜を決行しないと——私の立場が危うい。今夜は寝ずに待っていよう。私は大好きな月刊魔道具という雑誌を開いた。月刊誌で、今一番熱い魔道具の紹介やレシピ、研究者の紹介などが書かれている。私の愛読書で、いつか私もこの雑誌に載ることが夢なのだ。キィ……と扉が開いた。扉に目を向けると、瞳を大きく開いたディートハルトと目が合った。「アーシュ、どうしたんだ?」「おかえりなさい。いつも先に寝てしまうから、今日こそは起きて待っていようと思ったの……」 「そ、そうか……。ありがとう」彼の視線が泳ぎ、目が合わなくなった。 「何か飲む?」 「あぁ、ありがとう」カトレーヌが用意しておいてくれた、保温力抜群の魔道具ポットからお茶を入れる。 「疲れが取れる、ハーブティーよ」 「あ、ありがとう」ディートハルトは形の良い唇で、ハーブティーを口に含んだ。喉仏がゆっくりと上下し、私は目を離せなかった。
Last Updated : 2026-07-06 Read more