Todos los capítulos de 舞いし炎。飛ぶは空。: Capítulo 11 - Capítulo 20

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眠らぬ都とマフィティスア

ロシェとカタリナは、グレートニールへと向かっていた。アクアリングの効力のおかげで激戦の傷は癒えてはいるのだが、疲労感までは拭うことができないようで、ほとんど会話もないままに静かな時間が二人を包み込んでいた。「あ。あそこに洞窟がある。今日はこの辺で休まないか?」 ロシェは入り組んだ山道の中の小さなトンネル道を指差してそう言った。「そうね。」 カタリナは周囲に誰もいないことを確認した後に、そう答えた。トンネル道の中へ入ってみると、どうやら工事途中で放棄された物のようで、少し進んだだけで行き止まりになっていた。「あとどのくらいなんだ?」 ロシェはそう尋ねながら、行き止まり付近に捨ててあった職人用のパイプ椅子に腰をかけた。「山を降り始めて随分になるから、もう間も無く街に着く頃だと思うわ。」 カタリナはそう答えたあと、もう一つ置いてあったパイプ椅子に腰掛けた。「かなり歩いたからさすがに疲れた。」 ここに来るまでにすでに十五日ほどが経過している。「そうね。」「明日中には着くといいんだけど。」「それはどうかしら。私も歩いて行くのは初めてだから。はっきりとは分からないわ。」 二人が歩いて移動しているのは理由がある。この国には機械による様々な移動手段が設けられているのだが、その理由のために二人は歩いての移動を余儀なくされているのだ。一つ目の理由は、震災によって国の大半が崩壊していること。二つ目の理由は、二人が特殊警察と呼ばれる人型機械を葬ってしまったこと。これよって言わば二人は指名手配犯のようなものだ。呑気に公共の機関を使うわけにはいかなくなっている。「カタリナは大丈夫か?アクアリングで癒えたとはいえ、あれだけの傷を負っていたんだから。苦しかったらいつでも言うんだぞ。」「私は平気よ。ロシェもね。」 カタリナはそう答えた。カタリナからすればロシェの方がよほど不安が大きい。あまり表に出さないタイプのようで伝わりにくいが、内心はとても焦っているように感じる。その焦りは、万が一戦闘になった時に悪い方向にしか働かないことを、カルトゥナとの戦いで痛いほどに知らされた。「僕は気を失って倒れていただけだから。」「私が最初にそうなった時。ロシェは一人で戦ってくれたじゃない。」「そうだけど。結局何もできなかった。僕も君の奥義が見たかった。」 ロシェがそんなこと
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眠らぬ都とマフィティスアⅡ

グレートニールという街は、国内随一の繁華街である。先のロギレンスの丘が、機械が作り出した工業都市だとすると、ここは人が作り出した人情味溢れる街だ。人々は店を持ち商売を生業としている。国内外からの観光客も多く、世界的な観光名所なのだ。街に入れば、飲食店や土産物屋、遊郭なんかも備えられており、昼夜問わずに人の活気が溢れている。と言っても太陽の沈まないこの国に昼夜はそもそも存在しないようなものなのだが。とにかくその街の性質から通称【眠らぬ都】とも呼ばれている。 二人はようやく街へと足を踏み入れた。どうやらここは震災の被害はなかったようで、威勢のいい街柄が二人を温かく包み込んだ。辺りをこだまする人々の声に、少しばかり心を癒された気分になる。人間という生き物は、やはり人間によって癒されるものなのだと思う。「ねぇロシェ。仕組まれた地震だと仮定して、選定された街の共通性が私には分からないのだけれど。」 カタリナがそう言うと、ロシェは少し考えてから答えた。「仕組まれた地震というのが間違っているのかもしれないな。」「でもどう考えても、何者かが部分的に破壊したとしか考えられないのだけれど?」 カタリナには地震を発生させた意図が分からなかった。これだけのことができる存在は限られる。国の中枢。つまりは王だろう。それは無傷のサウンズロッドからも想像がつく。しかし客観的に考えて、誰も得をしない。アクアストールにしてもロギレンスの丘にしても国にとって重要な場所だ。そこがなくなれば苦しむのは王自身だろう。国力低下は権力低下に直結する。その先に待っているのは国の崩壊だ。「一つ思ったことがあるんだ。」 ロシェは改まった表情でそう言った。「なに?」「あくまでも可能性の話だけれど。」「いいわ。聞かせて。」 カタリナがそう言うと、ロシェは一つの仮説を語り始めた。「カタリナは王やそれに準ずる何者かの仕業だと考えているんだろ?」「えぇ。そうよ。」「この震災。王も予期せぬ出来事だったとしたらどうだろうか?」「だとしたらサウンズロッドが無事な理由はどう説明するの?」 カタリナにとってはそこが一番の謎だ。アクアストールはサウンズロッドのみを残して跡形もなく消え去った。その不可解さを見逃すわけにはいかない。「最初から備えていたとすれば。こうなる可能性を見越して、サウンズロッドだけは
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機械仕掛けの亡霊

グレートニールを出てから、もう十日ほどが経っただろうか。この日は森の中で野営をすることにした。 「静かなところだな。」 ロシェは辺りを見渡しながらそう言った。 「ここなら誰とも会わずにグレリレンズ闘技場まで行けるはずよ。」 二人がいる場所は、グレートニールからグレリレンズ闘技場付近まで広がっている密林地帯の真ん中辺りだ。 「無駄な争いは避けたいからな。」 「でもこの辺りにはとある噂があるの。」 カタリナがそう言うと、ロシェは不思議そうに尋ねた。 「どんな噂?」 「私も聞いただけで見たことはないのだけれど。なんでも死を司る亡霊がいるとか。」 「亡霊?」 「そう。その噂があるから誰も寄りつかないのよ。」 「じゃあ誰も見たことはないってこと?」 「おそらくはそうね。でも火のないところに煙は立たないでしょ?」 カタリナがそう言うと、ロシェは少し考える素振りを見せてから答えた。 「おとぎ話だと決めつけない方がいいな。」 「そうね。でも本当に亡霊なんているのかしら?それこそ古代兵器とかだったりするかもね。」 「分からないけど。警戒はしておこう。」 ロシェがそう答えると、カタリナは頷いた。 「それにしても薄暗いわね。」 木々が日光を遮っているので、辺りは暗かった。その薄暗さが奇妙な雰囲気をさらに駆り立てている。 「そうだね。」 そう静かな口調で答えたロシェは、なんだか思い詰めたような表情を浮かべていた。思い返せばこの密林に足を踏み入れた辺りから少し様子がおかしいとは感じていた。カタリナはそれが気になってはいたが、聞くことはしない。人には言いたくないことの一つや二つあって当然だと思っている。 「とにかく今日はもう寝よう。」 カタリナがそう言うと、ロシェは静かに頷いた。そして二人は横たわり眠りについた。 幾分かの時間が過ぎて、カタリナが目を覚ますと、ロシェは上空を見上げていた。木々のせいで空を目視することはできないが、何かを感じ取っているように見受けられる。 「どうしたの?」 カタリナがそう尋ねると、ロシェは神妙な面持ちで答えた。 「胸騒ぎがするんだ。」 「胸騒ぎ?悪い予感みたいな?」 カタリナが聞くと、ロシェは被りを振る。 「分からない。でもここに来てからず
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機械仕掛けの亡霊Ⅱ

「どうやら噂は本当のようね。」 カタリナはそう言いながらフレアリングに祈りを込める。 「炎剣の舞。」 炎の剣を右手で握りしめた。二人の視界が捉えたのは、全身を機械に蝕まれた人骨だった。体のいたるところの骨が朽ち果てており機械によってなんとかその姿を保っている、言わば動く化石のようなものだった。いったいどれだけの年月をここで過ごしてきたのか。考えるだけでも恐ろしくなる。 「うぅ。うぅ。」 何かを言いたそうにしていることは分かるが、もはや言葉を発するだけの人間的要素は失ってしまっているのだろう。 「カタリナ。ここは一度逃げよう。」 尋常ではない汗を拭いながらロシェがそう言った。明らかに様子がおかしい。 「分かったわ。」 カタリナは炎の剣を消してロシェに従った。それはロシェの容態を気にしてのことだ。とにかく走ってその場から去った。不思議なことに、その機械は追いかけてくることはしない。その様子を見て二人は止まる。 「追いかけてはこないみたいね。ロシェ。大丈夫?」 カタリナがそう聞くと、ロシェは悲痛な表情で答えた。 「なぜだが分からないけど、あれを見た時にとても悲しい気持ちになったんだ。」 「悲しい?」 「そうだ。でも理由がわからない。」 ロシェの言ってる意味は、カタリナには分からなかった。 「もしかしたら、ロシェの記憶に関係する何かなのかもしれないね。」 「そうなのかもしれない。」 二人を沈黙が包み込んだ。木々の揺れる音が辺りをこだまする。 「迂回はできるけど、あれをこのまま放っておくの?」 カタリナは優しい口調でそう聞いた。 「いいや。」 ロシェもこのまま無視するつもりはないらしい。もしも本当に記憶の手がかりなのだとしたら放っておくわけにはいかないというのが二人の共通の認識だった。 「見た感じ、相当古い機械よね。」 カタリナには不思議に思うことがあった。同じ古い機械でもカルトゥナは綺麗な姿を保っていた。同じ時代を跨いできた機械にしては、こちらの方はあまりにも劣化が進み過ぎている。特に人間部分は酷い有様だ。言うなれば崩れかけた化石の残骸が機械に貼り付いている状態。その答えをロシェは言ってくれた。 「古代兵器の失敗作と見ていいだろう。」 「失敗作?それを殺さずにこんな
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機械仕掛けの亡霊Ⅲ

「一つ気がかりなことがある。僕たちがここにきてフレイに会った時、辺りはすでに戦闘を行った形跡があった。フレイは何かを守ろうとしていたのかもしれない。」 ロシェがそう言うと、カタリナも同意する。 「私もそれは感じていたわ。おそらくここに敵はいる。」 二人は周囲を見渡した。それを見て物陰から一人の男が姿を現した。黒いフードを被っており顔は分からない。 「あれれ。あっさり殺しちゃったんだ。意外と非情なお兄ちゃんなんだね。」 その男は倒れた機械を見てそう言った。 「おまえは誰だ?」 ロシェは怒りを込めた声をぶつける。 「うーん。そうだねぇ。黒幕とでも名乗っておこうかな。」 飄々とした口ぶりの男は、ロシェの怒りのパロメーターを向上させる。 「ふざけるな。」 ロシェは雷の剣を男へ向けて、飛びあがろうとした。 「まぁ落ち着きなよ。君の相手はこっちだから。」 黒幕を名乗る男がそう言うと、先ほどまで倒れていた機械がロシェに向かって突撃してきた。その速度は格段に増しており、カルトゥナを彷彿させるほどだった。ロシェは慌てて雷の剣で、その機械の拳を受け止めた。 「おじさん。あの子に嘘ついてたんだ。お兄ちゃんに君が殺されればこの古代兵器は止まるってね。本当は逆。あの子が死ねば、この古代兵器は本来の力で君たちを襲うんだ。つまり彼女はストッパーだったってわけ。」 「悪趣味な。」 カタリナは炎の剣を右手に取って、ロシェの応援に向かおうとする。しかし黒幕を名乗る男がそれを静止した。 「お姉さんの相手は、この黒幕だよ。」 カタリナは、黒幕を名乗る男を鋭い目つきで睨みつけた。 「怖い怖い。そんなに睨まないでおくれ。」 「おまえと話をするつもりはない。」 カタリナはフレアリングに祈りを込めた。ロシェは古代兵器と対峙していた。初手で分かったことだが、この古代兵器はカルトゥナよりも強い。 「へぇ。おまえがあいつの兄貴なのか。見た目には大したことなさそうだな。俺は古代兵器クランツ。いちおう礼は言っておくぜ。目障りだったあいつを殺してくれてよ。」 ロシェは何も答えずに鋭い視線を向ける。 「あいつのせいで俺は自由に動けなかったからよ。体が鈍って仕方ないんだわ。ちょっと運動に付き合えや。」 「黙れ。」 ロシ
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機械仕掛けの亡霊Ⅳ

ロシェの体は風を帯び始めた。 「風神は全てを弾き返す。」 ロシェがそう言うと、取り巻いていた風がさらに風圧を増していく。 「おもしれぇ。まだまだ楽しめそうじゃねぇか。」 クランツのその声に、ロシェは被りを振る。 「もう終わりだ。」 それを聞いたクランツは、ロシェの周囲を全て爆破させた。強力な爆風がロシェを襲う。しかしその爆風は体に帯びていた風に吸収されていく。 「ほう。また防御か。」 「違う。これは攻撃だ。」 風の中で蓄積された爆風は、ロシェの前方一点に集中していた。そして爆風の蓄積された一点はただ静かにクランツに向けられている。 「風神は風を操る。」 それは解き放たれた。爆風の威力が強かった分、その破壊力と速度はは凄まじく、瞬く間にクランツの胴体に大きな穴を開けた。さすがのクランツも片膝を地面につける。ロシェはそれを見て、ゆっくりと近づいていく。 「俺の爆破を利用しやがったか。大したもんだぜ。でもな。この程度では俺もくたばんねぇぜ。」 「分かっている。だから最後は殴り合ってやるよ。そっちの方がおまえも好きだろ?」 ロシェはゆっくりと歩きながらそう言った。 「なんだよ。話の分かるやつじゃねぇか。」 クランツも立ち上がった。 「左腕。修復しておけよ。片手では相手にならないから。」 「おいおい。舐めるじゃねぇぜ。」 そう答えるクランツに対して、ロシェは淡々とした口調で言った。 「いいから。修復しろ。」 「しねぇよ。」 「そうか。ならもう何も言わない。全力で葬る。」 ロシェはそう言いながら、右手を空へと掲げた。 「そうこなくっちゃ。」 クランツは楽しそうだった。 「雷神。」 ロシェの体に、今度は雷が帯び始めた。二人は同時に拳をぶつけ合う。大きな爆発が起きたが、その爆風が到達するよりも速く、ロシェは次の動きに移行している。 「なんだその速さは。」 これにはクランツも驚いて声を出した。 「雷神は身体能力を格段に向上させる。だから言ったんだ。片手では相手にならないと。」 「生意気だな。速いだけではどうしようもねぇぜ。」 クランツはそう言いながら、もう一度右拳を繰り出すが、そこにロシェはもういない。逆にロシェの右拳が、クランツの顔を貫いた。 「こ
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機械仕掛けの亡霊Ⅴ

ロシェが古代兵器と戦っている時、カタリナは黒幕を名乗る男と対峙していた。 「えぇっと。なんだっけ?そうそう。確か君【炎の巫女】だったよね?」 黒幕を名乗る男はさらに続ける。 「昔話に出てくる英雄の末裔。本当に実在するんだから世の中はおもしろいよねぇ。」 この男は一体何者なのだろうか。機械ではなく生身の人間であることは確かである。 「私はあなたと話をするつもりはないわ。」 「冷たいねぇ。嫌われちゃったのかな。」 相変わらずの読めない態度だが、カタリナには一つ確信していることがある。この黒幕を名乗る男はかなりの手練れだ。 「弟がねぇ。その【癒しのリング】が邪魔だから、君の存在を消してきてほしいなんて言うからさぁ。かわいい弟の頼みなら兄として叶えてあげたいもんねぇ。」 「随分とお喋りなのね。」 カタリナはこの男の醸し出す独特な空気感が妙に居心地が悪かった。 「そうなんだよ。お喋りな性格でねぇ。でものんびりしてると、あっちも終わってしまうから、ちゃちゃっと済ましちゃおうか。まぁ、そういうことだから、ごめんねぇ。」 そう言いながら男は、短剣を取り出した。それを見てカタリナも炎の剣を強く握る。 「あ。そうそう。物事には相性ってのがあってねぇ。君は今から相性最悪の相手と戦うことになるから覚悟しときなよぉ。」 男はニヤニヤと笑いながらそう言った。カタリナは何も答えずに相手の出方を伺っている。 「全く。兄使いが荒いというかなんというかねぇ。」 男はそうぼやくと視線を下に向けた。その隙をカタリナは逃さない。舞うように華麗に、そして素早く男との距離を詰めて、炎の剣を突き立てる。その瞬間男の目が変わったことに気がついた。さっきまでのふざけた目ではない。それは戦う人間の目、戦士の目だった。ゆっくりと短剣をカタリナの方へ向ける。 「ナールゲア流短剣術。水流。」 短剣の先から巨大な水流が現れてカタリナを襲う。二十メートルほど流されたところで水は消えた。カタリナは炎の剣が消えていることに気がつく。水によって消火されてしまったのだ。 「これはまずいわね。」 カタリナはさっき男が言っていた相性の話を思い出す。この戦いにおいて、フレアリングの効力は無意味と判断していいだろう。 「ナールゲア流短剣術はねぇ。水の力を操るための剣術なんだよぉ。習得
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機械仕掛けの亡霊Ⅵ

「フレア。炎龍。八岐大蛇。」 炎がヤマタノオロチを形成する。 「圧倒的質量で押し通すまでよ。」 八つの口から一斉に炎が放たれる。 「水でできた偽物には効果がなくても、本物にだけは必ずダメージがあるはずよ。」 カタリナの読みは正しかった。五体のうちの一体だけが、その圧倒的質量の炎に弾き飛ばされて大木へと叩きつけられる。その体は大火傷を負っていた。それに伴って残りの分身も姿を消す。 「終わりね。」 決着はついた。ちょうどその時にロシェもやってきた。 「カタリナ。無事か?」 「えぇ。私は大丈夫よ。ロシェの方も片付いたみたいね。」 「うん。それより。」 二人は焼けた男に目を向けた。 「あれはいったい何者なんだ?」 「分からないわ。でも弟がどうとか言っていたわね。」 「弟?話がよく分からないな。」 「本人に聞いてみましょう。」 「生きてるのか?」 ロシェは驚いた様子でそう尋ねた。どう見ても焼死体にしか見えない。 「加減はしたもの。それにああ見えて結構タフよ。あの男。」 「そう、なのか。」 二人は、大木にもたれかかるように倒れている男の方へと向かった。 「おい。生きてるのか?」 ロシェが声をかけると、男は目を開いた。そしてゆっくりと答える。 「生きてるよ。なんとかね。」 「おまえは何者なんだ?」 「最初から言ってるよね。ただの黒幕だってさぁ。」 男の口ぶりは変わらずふざけた態度のままだった。 「そうか。おまえは何を知っている?妹を機械にしたのが誰なのかも知っているのか?」 男は少し黙っていた。そしてゆっくりとロシェに目を向ける。 「君に聞く覚悟はあるのかい?あるのなら知っていること全て話そう。」 ロシェはカタリナの方へ目を向ける。カタリナはそれに気づいて口を開いた。 「こいつはふざけた態度だけれど、嘘はつかないと思うわよ。」 カタリナのその言葉を聞いて、ロシェは覚悟を決めた。 「聞かせてくれ。」 男は順を追って説明を始めた。 「君の妹を苦しめたのは君と同じ空の民なんだよ。」 「七百年前に存在したとされる空の国の民のことか?」 ロシェがそう聞くと、男は少し笑った。 「そうだったね。君はまだ記憶が戻ってないから分からないんだね。君はその七百年前に存在したとされる空の民を率いた男
last updateÚltima actualización : 2026-06-30
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カム・スカーデットという男

景色は少し一変して、アクアストール中央部、王の宮殿サウンズロッドへと目を向けてみる。そこはいつもと変わらない静かな時間が流れていた。カム=スカーデッドは大きなソファに腰掛けながら、自らの科学力で作り上げた妙な機械の数々を眺めている。人を信じないカムからすれば、この機械たちが唯一信頼のおけるものなのかもしれない。そんな風に考えてみると、珈琲を啜るカムの姿が、妙に寂しげに見受けられる気がする。 「コンコンコン。カム様。」 ドアの外からノック音と共に、女の声が聞こえた。カムはそれに答える。 「入れ。」 女はその言葉を聞くと、ドアを開き中へと入った。 「ミレアか。」 カムはぶっきらぼうにそう言った。 「私以外にここにくる人間はいないでしょ?命令通り、兄上様のご遺体を回収してきました。残念ながら体の方は火傷が酷すぎて、機械化してもどうにもならないでしょうね。頭の方はまだ幾分綺麗な状態で落ちていましたが、カム様と違ってそれほど賢くはなかったので、利用価値があるかどうかはなんとも言えませんね。」 ミレアは冷静にそう言った。 「安心しろ。機械にするために回収させたのではない。」 「そうなのですか?もしかしてカム様に追悼の意がお有りだとか?そんなわけないか。」 ミレアはそう言って少し笑っていた。 「俺にそんな口を聞いて、命があるのはお前くらいのものだ。」 「そうですね。私は特別なので。」 「そうだな。」 「それで。ご遺体はどうされます?」 ミレアが聞くと、カムは少し考えてから答えた。 「あれでも俺の唯一の兄貴なんだ。」 「それなら丁重に埋葬しますね。」 「あぁ。頼む。」 カムのその言葉を聞いて、ミレアは部屋を出て行った。再び部屋に静けさが戻ってくる。カムは額に飾られた一枚の絵に目を向けた。そこには自分と兄がまだ幼かった頃の様子が描かれている。 「サイ。おまえは本当に馬鹿で優しい兄貴だった。」 カムはそう言って珈琲を口に運んだ。その目には一粒の涙が溢れていた。 先代の王。つまりはカムの父は優しい人だった。国民に対しても、家族に対しても。しかしカムがまだ十四歳の頃に、何者かの手によって暗殺された。理由は分からない。でもカムはそれが王である者の宿命なのだと考えていた。でも兄であるサイはそうではなかった。毎日涙を流しては、何故
last updateÚltima actualización : 2026-06-30
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カム・スカーデットという男Ⅱ

「やれるやれないの話ではない。やってもらわなければ困るのだ。」 「それはそうですが。そこまで信頼のおける者なのか、私には分からないですね。」 「ミレア。この世にはどれだけ策を講じても、想定外というものは起きるものだ。」 「と言いますと?」 ミレアがそう聞くと、カムは少し笑って答えた。 「確実なことなど何も存在しないということだ。だから人生は面白いのだ。」 「つまり空の王が負ける可能性も想定に入れているということですか?」 「そうだな。でも不思議な話だが。俺は闘技場であいつに会ってみて思うのだ。必ず勝つだろうとな。」 カムの表情は真剣だった。 「そうですか。カム様がそれほど信頼できると言うのであれば大丈夫なのでしょうね。それなら私は私にできることをしましょう。邪魔なのは炎の巫女なのでしょう?」 「そうだ。」 「私が消してきましょうか?」 ミレアはどこか楽しそうにそう言ってみせた。 「だめだ。おまえは俺を守る最後の砦だ。前線に出すつもりはない。」 「えぇ。戦いたかったのに。じゃあどうするおつもりですか?放っておいたらここにきてしまいますよ?まぁ戦えるなら私はそれでもいいと思いますけどね。」 「マフィティスアは何人残ってる?」 カムの問いかけに、ミレアはどこかつまらなさそうに答えた。 「アランが死んだので、残り七人ですね。あいつらを向かわせるんですか?空の王まで死んでしまいますよ?」 「記憶を取り戻した空の王が、人間如きに負けるとは思えん。それにあくまでも命令は炎の巫女の抹殺だ。そう伝えろ。」 「私に任せてくださればいいものを。」 ミレアが不貞腐れたようにそう言った。 「おまえは最後の砦だと言っただろう?俺の想定より炎の巫女が強ければ、おまえにも出番はくる。準備だけはしておけ。」 それを聞いてミレアは嬉しそうに答えた。 「カム様の想定が外れることを祈っておきます。では命令を伝えてきます。」 ミレアは退出した。 カタリナとロシェはアクアストールへ向けて歩いていた。以前通った時とは違い、今度は確実に葬るための準備を整えている。 「カタリナ。一つ聞きたいことがある。」 ロシェがそう聞くと、カタリナは静かに頷いた。 「カタリナは怖くないのか?」 「怖い?」 「そう。戦うこと。僕は怖い。」 ロシェが
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