舞いし炎。飛ぶは空。

舞いし炎。飛ぶは空。

last update最終更新日 : 2026-06-30
作家:  ふわりたった今更新されました
言語: Japanese
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概要

アクション

強いヒロイン

異世界ファンタジー

王子

巫女

超能力

成長

機械の力で最強の軍事国家となったスカーデッド王国。 その国を巨大な地震が襲った。 崩壊した首都アクアストールと、無傷のまま聳え立つ王の宮殿。 炎を自在に操る【炎の巫女】と、古代に存在した【空の王】が、 革命のため。悪い歴史の終結のため。力を合わせて戦うストーリーです。

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第1話

日の沈まない暗闇の世界

王国歴七百二十四年、アリエスフライト大陸には八つの国が存在していた。その中でも最も巨大な勢力を誇ったのが、フェルト王国である。国王フェルト三世は圧倒的な軍事力を武器に他国を次々に侵略していった。

 王国歴七百六十一年、遂にアリエスフライト大陸には二つの国しか無くなっていた。フェルト王国ともう一つ、それまで相手にもされてこなかった小さな国スカーデッド王国。機械産業が盛んなこの国に軍事力と呼べるものは皆無だと誰しもが甘く見ていた。

 アルテミスの大戦。八十五万人のフェルト軍に対してスカーデッド王国が用意したのはたった四十五機の人型戦闘兵器だった。決着はあっという間に着いた。月の光が照らしたのは八十五万人の死体と血に塗られたアルテミス大橋。

 この戦争を機にスカーデッド王国は世界に名を轟かせる軍事国家となったのだった。

王国歴七百七十年。スカーデッド王国。

 このところ人類の頭脳を恐ろしいと感じる事がある。長い歴史の時間軸の中で、アルテミスの大戦からの九年間など、あっという間に過ぎ行く月日である。その僅かな時間でも人は更に発展させ変化させる能力を持っているのだから末恐ろしい限りだ。

 新たに開発されたあらゆるものには人工知能が割り当てられ、人の生活圏に次々と組み込まれていった。例えば近所のスーパーやコンビニエンスストア、ファミリーレストランなんかに入ってみると、出迎えてくれるのは見た目には人と全く遜色のない人型の機械だったりもする。むしろスカーデッド王国においてはそちらの方が多いのかもしれない。人間と共存する人型機械の誕生。それは利便性の向上と共に、血の通わない現状を人々に突きつけている。もちろん初めの頃は大いに喜んでいた。仕事は極限にまで簡素化され、厄介毎は人型機械が引き受けてくれる。家庭内においても家事や育児までもが、人型機械のテリトリーとして展開されていった。生活が著しく楽になることに喜びを感じるのが人間の弱みといえる。しかし徐々に人々は違和感を覚えていった。日常は機械に侵食されていき、人として生まれたことへの意義を見失い始めていた。進歩は時として恐怖にもなりうる。朝ゴミ捨て場で挨拶をした隣人が、実は機械なのかもしれないのだから。

 つまりこの世界における機械はもはや人間なのだ。人間と同じ生活を刻み、友との語らいや同僚との会食もする。休日には夜景を見るためにドライブに出かけ、温かいラーメンのスープを啜る。人間以上に人間を演じている。それでいて人間の何倍も優れた能力を備えている。それはアルテミスの大戦で実証済みのことだ。

 スカーデッド王国。首都アクアストール。

 人型機械による効率的統治で治安を維持している王国随一の都市だ。高層ビルが立ち並ぶ中、都市の中央部には堀のように水が張られてあり、その真ん中には大きな塔が聳え立つ。国の中枢はこの塔で担われている。

 ビルの側面に映し出されたビジョンに目をやると、ニュースキャスターがその日の情報を丁寧に伝えていた。

「次は空の情報です。アクアストール以外の全ての地域で午前十時と午後四時の二回。人工気候装置を用いて三十分間の雨を降らせます。一時的に太陽が隠れますので、くれぐれもご自宅から出ないようにご注意くださいませ。」

 初めて聞く者には珍しい事だろうが、この国ではいつものことだ。理由は解らないが、太陽の沈まないこの国では雨が降ることもない。そうなると作物が育たないので、定期的に人工的に雨を降らす。なぜ太陽が隠れる時に、外出が禁止されているのかは定かではない。それにしても自然の代表ともいえる天気までも機械の力で操作してしまうのだから全く恐ろしい機械文化が根付いている。とにもかくにも今日も変わらない一日が過ぎていくのだろう。誰しもがそう思っていた。しかしそうはならなかった。

「ゴゴゴゴ」

 という大きな音が鳴り響き、次第に大地が大きく暴れ始めた。機械をもってしても止めることのできない自然現象。震災だ。都市中の液晶パネルに先ほどのニュースキャスターが映し出され速報を伝える。

「緊急地震速報です。震度計測不可級の巨大地震です。直ちに指定の避難区域へと移動してください。」

 日常はこんな風に、なんの躊躇いもなく壊されてしまう。跡形もなく消え失せた無数の建物の瓦礫が辺りに散らばっている。その下に埋もれているのが人なのか人型機械なのかは解らないが、たくさんの命の火が消えたことに変わりはない。

 スカーデッド王国が誇った首都アクアストールは一瞬にして荒野とかした。生き残った民達にとってせめてもの救いはアクアストール中央に位置する国の中枢を担う塔サウンズロッドが無事だったことだろう。そこが無事だという事は王は生きているという事なのだから。安堵する民達の中を、颯爽と掻き分けて、傷一つなく聳え立つサウンズロッドを鋭い視線で見上げる女がいた。彼女もまた強い意志を胸に秘め、サウンズロッドのように、崩れ去ったアクアストールに聳え立っているかのようだった。

 機械文化で築き上げた栄華も崩れ去るときはほんの一瞬だ。そしてこういう時に生き残る人間はだいたい二種類に分けられると思う。一つは強い権力を有し、全てを肯定する力を持つ者。もう一つは理に反し主に欺きそれでも己を曲げず信じることに強い意志を持って突き進む者。無傷のサウンズロッドと、それを睨むように見つめる女。戦いの始まりを告げるかのように絵になる描写に感じられた。

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ゆらめく炎 舞い降りて
震災から三日ほど経った。不思議なことに、これだけの規模の大地震にも関わらず余震は一切なく、生き残った住民たちによる創作活動が比較的速やかに行われていた。 「おーい。誰かいねぇか?」  そんな声が荒地と化したアクアストールにこだまする。 「ここらはもう誰もいねぇみたいだな。」 「そうか。生きてるやつはみんな避難できたみてぇだな。」 「だと良いんだけどよ。まだ顔見てないやつも大勢いるみたいだしな。」 「うちの母ちゃんもまだ見つかってねぇんだわ。」 「大丈夫。きっと生きてるさ。」  住民たちの声が、荒野を闊歩している。瓦礫の下に埋もれた死骸の山を見ると、実態が骨身に伝わってくるようで、よほどの精神力がなければ目を開くこともままならないであろう。そして震災の影響が具現化されていくにつれて、無傷の宮殿サウンズロッドへの不信感は漂っているように感じる。あれだけの規模の地震にも耐えた構造、いや、まるでそこだけ何事もなかったかのような違和感。誰も口にすることはないが異様な光景であることに間違いはない。三日経った今も、中枢からの指示や労いなどは一切なく、それが不信感へと繋がっているのだろう。しかし暗黙の了解なのかは解らないが、口に出して文句を言う者は一人もいなかった。なんとか生き延びた命をそんなことのために失いたくはないのだろう。 「ここらは特にひでぇな。」 「あぁ。」  救助活動に勤しんでいた住民たちは、両手を合わせ追悼の意を込めた。 「まるでアルテミスだな。」  一人の男がそう言うと、皆は揃って暗い顔をした。スカーデッド王国は元々戦争とは無縁の国だったのだが、フェルト王国との大戦の後、諸外国からも一目置かれる軍事国家との認識となっている。しかし実態は、人力を必要としない独立した機械による戦争スタイルだったため、国民は戦争を知らない。それでもアルテミス大橋の悲惨な姿は目に焼き付いており、今のアクアストールの現状がリンクしてしまったのだろう。 「やれやれだ。とりあえず瓦礫の下に誰かいねぇか探そうぜ。」 「あぁ。気が滅入りそうだ。」 「そう言うな。誰かがやんねぇといけねぇんだ。だったら動ける俺らがやらねぇと。」  男がそう言うと、もう一人の男はサウンズロッドを睨むように見ながら答えた。 「こんな時にいったい何をしてるのだか。」 「ばか。滅多なこと
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ゆらめく炎 舞い降りてⅡ
カタリナは二度三度被りを振った。「余震はこないわ。だから大丈夫。」「それはわかんねぇだろ?さぁ避難所に行こう。」 そう言って男の一人がカタリナの腕を掴もうとした。しかし捉えることは出来なかった。一瞬の出来事だったが、カタリナは素早い身のこなしで体を反転させ男の手を交わしていた。「おいおい。ねぇちゃん何者なんだよ。」 あまりにも軽快かつ戦い慣れした身のこなしに男は少し恐怖感を滲ませながらそう問いかけた。「ねぇちゃんよ。俺たちは助けようとしてるんだぜ。その態度はどうなのよ。」 もう一人の男が少し怒りを滲ませながら言った。「何度も言ってるじゃない。放っておいてって。」「その態度が良くないって言ってんだよ。」 男がそう言いながらカタリナに向かって拳を振り上げる。それをもう一人の男が止めた。「やめとけ。このねぇちゃん只者じゃねぇ。やべぇよ。」 その姿を見てカタリナは小さな声で呟いた。「殴りたければ殴ればいいじゃない。」 これを聞いた怒り心頭の男は静止する男を振り払って、カタリナに向かっていった。「結局は救ってる自分に酔いしれてる偽善者ね。」「黙れ。」 男の太い腕から放たれた拳が、カタリナめがけて一直線に振り下ろされた。しかしそれは空を切り、それどころか気づけばカタリナは背後にいた。男の額に一粒の汗が流れ落ちているのがわかる。「なんなんだ。ねぇちゃんは。」 もう一人の男が怯えた表情でカタリナに向けて言葉を投げた。「大きいだけでは私には勝てないわ。」「わかった。もう放っておくから。何もしないでくれ。」 さっきまで怒っていた男も慌てた様子で媚び始めていた。「何もしないわ。あなたたちは悪くない。人助けは立派よ。私の態度も良くなかったし。ここはお互い様ってことで。」 カタリナがそう言うと、男たちはようやく落ち着きを取り戻して、その場から立ち去っていった。カタリナはそっと空に目を向ける。そして静かに目を閉じた。少しだけ過去のことを思い出している。そんな感じの表情に見えた。  カタリナ。それが彼女の名前である。カタリナの記憶の中には、両親の存在はない。たとえ片隅に存在していたとしても思い出したくもないような過去を歩まされた。金のためだったのだろうか、それとも他に理由があったのだろうか。詳しいことは今となっては解りようもないが、事実として
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ゆらめく炎 舞い降りてⅢ
カタリナは固く決意して、どこか遠くへと向かった。ただひたすら東へと。  長い道のりを休むことなく歩き続けたカタリナは、すでに国境を越えて隣国へと足を踏み入れていた。時間を考えると、へカーソンが王都から帰り、事態を把握して捜索を始めているかもしれない。そう仮定すれば、国境を越えられたことはかなり運が良かったと言える。ここまでくればそうそう見つかることはないだろうから。カタリナは何を思っているのだろうか。その答えは意外なものだ。ただ東へ向かうだけの途方もない逃亡生活を、まだ十に満たない子供がしているのだ。ましてや信頼していたへカーソンの正体が、自分を機械にしようと考えていたのだから、卑屈になり死をも考えていても不思議ではない。しかしそうではないのがカタリナという人間だった。物事の序列を冷静に見極め、根幹部分を考える。つまり人道をわきまえない世界を作り上げ、機械による統治、人の価値の下落を推し進めた存在がいること。それが誰なのかは予測できる。その利己的な支配者を憎み、鳥籠の中の幸せに満足する人を憐れむ。カタリナ自身が、機械との生活を直に触れ、その脅威を目の当たりにしたからこそ、このままではいけないと強く思った。誰かが変えなければいけないと。今は逃げることしかできないが、いつか必ず悪魔が支配する棺桶のような国スカーデッド王国を打ち砕くと心に誓っていた。それがカタリナの根底にある正義感という強い光なのだろう。そして胸に光が灯れば、必ず運命の歯車が動き出すようになっているのが、この世界の理なのかもしれない。逃げるだけのカタリナの運命は、たった一人の男との出会いによって修羅の道へと誘われることになる。  ただ東へと向かっていたカタリナは、道中一人の男と出会った。スカーデッド王国を出た後は、険しい山岳地帯を進んでいたので、人と出会うこと自体が久方ぶりの出来事だ。 「こんな場所に、子供が一人で、どうかしたのか?」  何も言わずにすれ違おうとしていたカタリナは、その話しかけてきた男に少し嫌悪感を抱いた。 「何もない。ただ歩いているだけよ。」 「そうか。お互い様だな。」  男はそう言うと、岩に腰掛けた。カタリナはその姿をゆっくりと見る。人間であることには間違いないのだが、血生臭さを隠しきれていないその男に警戒心を怠らないようにしているのだろう。 「あなたこそ、こんな所で
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ゆらめく炎 舞い降りてⅣ
カタリナは決意を固めて、中へと入って行った。中は想像以上に広く、真っ直ぐと奥へ続いていた。とりあえず進んでいくと、再び大きな扉があった。同じように石碑が建ててあり、カタリナはフレアリングを嵌め込んだ。「第一の試練。炎は全てを焼き尽くす。」 扉は開き、カタリナは中へと入っていく。広い空間の中には、一人の老人が茶を啜っていた。「ようやく来たか。わしは魏良。おまえさんが新しい炎の巫女かいな。」 魏良と名乗る老人は、飄々とした口ぶりだった。「ずっとここにいるの?」 カタリナが聞くと、魏良は大きな声をあげて笑った。「無駄話は良いじゃろう。早速第一の試練と行こうじゃないか。」「待って。私は何をすれば良いの?」「わしの攻撃を全て止めれば良い。ただし炎を使ってじゃ。」 カタリナは理解した。第一の試練とは、状況に応じたフレアリングの使い方を習得する事なのだと。「わかったわ。やってみる。」「よし。じゃあいくぞ。」 魏良はまず大きな剣を取り出した。「手始めじゃ。」 向かってくる魏良を見て、カタリナはフレアリングに祈りを込める。「フレアリング。炎の剣。」 カタリナは炎の剣で受け止めた。「ほう。かなり扱えておるの。さては実践済みじゃな。しかし甘い。フレアリングは心と声に呼応するのじゃ。正しく示してやらなければ鈍らにしかならんのじゃよ。」 カタリナは徐々に押されていき、遂には吹き飛ばされた。まず驚いたのは、炎の剣なのにも関わらず、魏良の鉄製の剣を焼き切れなかった事。へカーソンとの戦いではいとも容易く出来たのだが、鉄の素材が違うのだろう。「どうすればいいの?」 カタリナが聞くと、魏良は被りを振った。「自分で考えるのじゃよ。フレアリングと一つになってみせよ。さぁ次じゃ。」 魏良は大きな弓を取り出した。目一杯まで弦を引き、カタリナに向けて解き放つ。「避けちゃいかんぞ。炎で制するのじゃ。」 カタリナは考えた。フレアリングと一つになる。それに炎は全てを焼き尽くすという石碑の言葉。「やってみる価値はある。フレアリング。お願い。私のイメージを汲み取って。」 フレアリングが眩い光を放ち、カタリナの周りに火柱が五本立ち上がった。その一つが盾の形へと姿を変えて魏良の放った矢を溶かしていく。「ほう。なかなか飲み込みが速いのう。それならこれはどうかね。」 魏
last update最終更新日 : 2026-06-30
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大空を駆ける人
依然として震災の影響は色濃く、国の中枢からは何の指示もでない。国民たちは疲弊しきり、不満を抱く者も多い。一部では王が何かの目的で人為的にこの大震災を引き起こしたのではないかという説も飛び出してきており、不信感は募る一方だった。突拍子もない説に思えるが、この国においては不可能な話ではない。年中太陽を有して、時に人為的に雨を降らせる人工気候装置なるものを作り上げたくらいなのだから、大地を操る何らかの機械を完成させていてもおかしくはない。とまあそんな仮説を頭に描いていても実際のところは調べようもなく、国民たちはただ心の中でのみ自分の思いをぶちまけていた。実際に声に出してしまえば殺されてしまうかもしれない。そんな恐怖感がこの国を支配していた。カタリナからすれば、黙って順応していくだけの者も等しく罪だと思っている。それは悪い国の典型だ。築く者がいて、従う者がいる。だから不恰好なままに歯車は回ってしまうのだと思う。 スタレスを始末したカタリナは、アクアストール内北部地方へと一度退避していた。もともとここは人が多い住宅街だったが、跡形もなく消え去っていた。瓦礫の上を歩くたびに心の中に聞こえてくるのは、失われた多くの命の魂の叫び。カタリナがここへ来た理由は身を隠すためである。下っ端とはいえ、特殊警察の一人を葬ったのだから、すぐに国の中枢は動き出すだろう。まとめて相手をしても勝ち目がないことは理解できる。フレアリングはあくまでも一対一を有利進めるための武器であり、複数人を相手に戦えるのかは解らない。それにここなら、ヘカーソンの屋敷が残っているかもしれない。あの地下室は相当頑丈な作りだったから、身を隠すには丁度いいと考えていた。しかしカタリナの想像よりも早く、国の中枢は動いていたようで、追っ手はすでに背後にまで来ていた。「待て。」 その声でカタリナは、振り向かずともそれが機械であることを認識した。強いて言うなら人間独特の抑揚がないと言ったところだろうか。普通の人間には見分けるのは難しいだろうが、カタリナにはすぐにわかる。「私に何か用?」「少し話を聞かせろ。」「何の話?」 カタリナは静かな口調で答えながら、声の主の方へ振り返った。改めてこの国の技術の精巧さに感服する。見た目には全く人と遜色はない。それもそうだろう。人を材料にしているのだから。かつてへカーソンの家の地下室で
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大空を駆ける人Ⅱ
ダメージは相当深刻なようで、足元がふらつく。滴った血が視界を悪くする。そんな状態のままフレアリングを掲げようとした時、一人の青年が機械とカタリナの間に割って入ってきた。 「もうやめるんだ。これ以上やれば死んでしまう。」 その青年は、無情の機械に対してはっきりと言い放った。 「なんだお前は。死んでしまう?笑わせる。俺は処刑しにきているんだぞ。」 「理由は知らない。でも殺すことはない。」 青年はカタリナを庇うように両手を大きく広げていた。 「邪魔をするなら、おまえから死ぬことになるが。いいのか?」 「僕は死なない。彼女も死なせない。そのために来たんだ。」 この青年の凛々しい表情からは、死への恐怖など微塵も感じられない。カタリナはつい先ほどその恐怖を感じてしまっていた。しかし気持ちだけでどうにかなる相手ではないことは身に沁みて理解している。 「私のことはいい。逃げて。」 カタリナが言えるのはその言葉だけだった。青年はゆっくりとカタリナの方へ目を向けて笑顔を見せながら答えた。 「僕は逃げない。君を守る。」 「だったら。私も戦う。でも。」 カタリナには疑問があった。この青年はいったいどこから現れたのかということだ。これだけ感覚を研ぎ澄まして戦っていたのだから、何者かの接近に気づかないわけがない。しかしこの青年は、気づけばそこに立っていた。 「あなたどこから来たの?」 カタリナは疑問をそのままぶつけてみた。すると青年は右手の人差し指をゆっくりと上空へ向けた。 「僕はロシェっていうんだ。空から来た。」 カタリナにはその言葉の意味がいまいち理解できていなかったのだが、次の動きで全ての合点がいく。 「望み通り、おまえから殺してやろう。」 機械は両手のひらをロシェに向けた。 「ダブルレーザー。追撃モード。」 放たれた二本の光線はロシェを襲う。しかしロシェに当たることはなかった。ロシェは、機械も何も使わずに大空へと飛んでいた。右へ左へ自由に飛び回り、光線をよけていく。そう自分自身の意思と能力で空を駆け回っていた。 「空の王。なの。」 カタリナは驚きのあまり、心の声を漏らしていた。 「君。手伝ってほしいんだ。」 ロシェは追従してくる光線を余裕の表情で避けながら、カタリナに話しかけた。 「何をすればいいの?」 「ち
last update最終更新日 : 2026-06-30
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ロギレンスの丘とフレアリング
ロギレンスの丘。工業地帯コレムナール。アクアストールから、ここに来るまでに四十日ほどかかったが、逆にそのおかげもあってカタリナの傷は癒えていた。訓練によって驚異的な回復力を身につけていたカタリナには骨の回復など数十日あれば可能なことだ。 二人は大きな外壁の所々に備えられていた門の一つに手をかける。しかし予想通り固く閉ざされており開くことができない。「破るしかないわね。」 カタリナはそう言うとフレアリングに祈りを込めた。「ロシェ。下がってて。」 ロシェはカタリナの指示通りに、少し距離をあける。それを見たカタリナはゆっくりと舞い始めた。すると徐々にカタリナの周りに炎が渦巻きだした。「フレア。炎龍の咆哮。」 カタリナはそう言いながら右手を扉の方に向けて広げた。すると渦巻いていた炎が龍の姿に形成され大きな口を開ける。そしてその大きな口から吐き出された炎は瞬く間に扉を溶かしていった。「さぁ。これで中に入れるわね。」「ありがとう。行こう。」 二人は中に足を踏み入れて衝撃の光景を目にした。「こ、これは。まるでアクアストールのようだ。」 そう言ったロシェの目に映っていた光景は、まさにアクアストール同様、崩壊した都市と、聳え立つ一つの塔だった。サウンズロッドほど大きくはないが、明らかにこの工業地帯の司令塔と捉えられる場所に位置している。「ロシェ。私は一つ確信したことがある。」 カタリナは淡々とした口調でそう言った。「何を?」「これは仕組まれた地震よ。」「つまりどういうことだ?」 ロシェがそう聞くと、カタリナは冷静に辺りを見渡してからゆっくりと答えた。「アクアストールでは国の中枢を担っているサウンズロッドだけが無事。ここでは、おそらくあの塔がロギレンスの丘を仕切っていた。その国の行政機関が組み込まれた部分だけが無事ということは、この地震は国が起こしたと考えることができると思う。」 カタリナの意見にロシェは被りを振った。「でも。カタリナの話では、ロギレンスの丘は国の最重要拠点の一つなんだろ?アクアストールもそうだ。破壊されて困るのは国の方ではないだろうか?」「確かにロシェの言う通りよ。だから国もここまでの被害を予期できなかったのじゃないかしら?」「僕には分からない。でもカタリナがそう言うならそうなのかもしれない。でも意図が読めない。」「例
last update最終更新日 : 2026-06-30
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ロギレンスの丘とフレアリングⅡ
ロシェは扉に手をかける。古代文字のようなものが刻まれていたが、古すぎて朽ち果てていた。ここには鍵はないようで扉は開いた。現れたのは長い階段。二人はその階段を下っていく。その先には真っ直ぐと伸びる長い一本道。「カタリナ。注意して進もう。」「そうね。」 二人の声が地下世界へと反響した。数々の苦難を乗り越えてきたカタリナにとっても、これ程息苦しさを覚える殺気は初めてだった。並の人間なら容易に押し潰されてしまうほどの緊張感が二人を襲う。それは道を進めば進むほどに大きく強くなっていく。「この気配。古の機械に似ている。」 ロシェがそう呟くと、カタリナはようやくロシェが敵にしている物の強大さを理解した。人型機械とはまるで似て非なる物。「まさか古の機械ともう出会ってしまうなんて。運が良いのだか悪いのだか。困ったものね。」 カタリナがそう言うと、ロシェは被りを振った。「いや。よく似ているが少し違う。」「見てからのお楽しみってことね。」 この先にいるのがロシェの倒すべき敵である古の機械かどうかは関係ない。少なくとも今ここで待ち受けているものは、とてつもなく強くそして残忍だ。殺気からだけでもそれが伝わってくる。「そういうことだ。」「とにかく進みましょう。」 カタリナはその言葉に恐怖を閉じ込めて前を向いた。「カタリナ。一つ約束してほしい。」「どうしたの?」「お互いに自分を守ることを優先しよう。」 ロシェのその言葉に、カタリナは黙って頷いた。この先に待つ戦闘において、お互いに身を守りあう余裕はないとロシェは判断したのだろう。だからこそ自分の身は己でしか守ることができない。その言葉には命の重みがのしかかっていた。沈黙がそれを深く身に染みさせる。暗く長い道に二人の足音だけがこだましていく。しばらく進むと、青白い光に照らされた大きな扉が見えた。いや、それよりもその奥からひしひしと伝わってくる強烈な殺気の方が、二人の心を震わせている。「ついに来てしまったわね。」 カタリナは小さく呟いた。「近づいてわかったことがある。」「なに?」「これもまた古の機械だ。僕が知っているのとは違う。また別のものだけど。」 二人は扉の前で立ち止まった。額を流れ出る冷や汗を拭い呼吸を整えた。「ロシェ。」「うん。行こう。」 ロシェは扉を開いた。そこに広がっていたのは、広い部
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ロギレンスの丘とフレアリングⅢ
「おまえは記憶をなくして退化した。私は過去の敗戦から学び備えた。だから何度も言っているのだ。おまえでは私に勝てないと。」 ロシェは機械女の体を見て理解した。「まさか。絶縁素材か。」「その通り。私は雷に負けた。だからそれに備えたってわけだ。」 機械女はかつての戦いの経験から、自身に改良を加えて、体を絶縁素材の金属に作り替えていた。ロシェは膝から崩れ落ちた。「それにしても大した破壊力だった。」 機械女はそう言いながら外れかけていた左足を瞬時に修復した。そして崩れ落ちたロシェに向かってその左足で蹴りを入れた。力なく吹き飛ばされ、壁に激突する。機械女はゆっくりとロシェの方へ歩いていた。その手には二本の剣が携えられている。今度こそ本当に命を奪うつもりだろう。ロシェは心が折れていた。それにもう立ち上がるだけの血が体内に残っていない。「長き因縁もこれで終わりだ。」 機械女はロシェの心臓へ剣を向けた。その時だった。「フレア。炎剣の舞。」 気を失っていたカタリナが炎の剣を握りしめて、機械女の胸に突き立てた。「ようやく目覚めたか。見ての通り、こいつは終わりだ。」「ロシェ。諦めてはいけない。まだやれることがあるはずよ。」 カタリナの問いかけにロシェは答えることができなかった。体内の血が流れ過ぎてしまったのだろう。「巫女よ。もう無駄だ。こいつもおまえもここで死ぬ運命なのだ。」 機械女の言葉がカタリナの脳内に響き渡る。ロシェはすでに瀕死の状態だ。それに自分もダメージはかなり残っている。でもやらなくてはならない。カタリナは決意を固めた。「運命は炎が導いてくれるわ。」「そのセリフ。かつての巫女も同じことを言っていた。」「そう。」「なぜ私がおまえを先に殺さなかったか分かるか?」「そんなこと。知るわけない。」 カタリナがそう答えると、機械女の表情に憎しみのようなものが垣間見えた。「あの時。【炎の巫女】さえいなければ、私は空の民を滅ぼせたのだ。」 過去に因縁があるのだろう。詳しくは分からないが、それは読み取れる。そしてカタリナを後に残したのは、その積年の恨みを存分に晴らすためなのだと思われる。しかしそんなことはカタリナには関係のないことだ。「過去のことは知らないわ。それより大切なのは今よ。私はあなたを越えるわ。」「それもそうだ。」 機械女はそう答え
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