All Chapters of 舞いし炎。飛ぶは空。: Chapter 21 - Chapter 30

30 Chapters

空間を越えし機械

二人は荒野と化したアクアストールを踏みしめながら、聳え立つサウンズロッドを見上げていた。「カタリナ。もう少しで全てが終わる。」 そう言ったロシェの表情からは、いろんな思いが伝わってきた。「そうね。思い返せば全てがここから始まったわ。」 カタリナがそう言うと、ロシェは被りを振った。「思い出に浸るのは後にしよう。今は目の前の敵に集中するんだ。」 ロシェはそう言いながらサウンズロッドの屋上に目を向けていた。カタリナもつられるようにそこに目を向ける。やはりこの国の王はそこで待っていたようだ。「よく来たな。」 カムはそう言った。カタリナははじめて見る王の姿を目に焼き付ける。「あぁ。」 ロシェは静かな声でそう答えた。「隣にいるのが炎の巫女か。華奢な割に相当な手練れだと聞いている。」 カムはカタリナに向けてそう言った。「えぇ。そうよ。あなたを葬るために地獄の底から這い上がってきたのよ。」 カタリナのその言葉を聞いて、カムは大きく笑ってみせた。「好きにすればいい。ここまで辿り着けたのならな。そんなことよりも、七人のマフィティスアと三体の人型兵器をたった二人で倒してしまうとはな。全く恐ろしいものだ。」「おまえと話をしにきたのではない。古の機械を出せ。」 ロシェは強い口調でそう言った。「まぁ待て。あれは極端に太陽を嫌っていてな。」 カムはそう言いながら、右手を挙げて部下に合図を送った。「古の機械よ。聞いているか?これより約束通り人工気候装置を破壊する。」 カムはそう叫んだ。「そんなことをすれば、古の機械が夜の間好き放題できてしまうのではないの?」 カタリナの問いかけにカムは笑って答えた。「俺はどちらでもいいんだ。先祖が作り上げた至高の兵器。古の機械が世界を滅ぼすのか、伝説の空の王が救うのか。それを見届けたいだけだからな。」 空を覆っていた結界が壊れた。人工気候装置が破壊されたのだろう。辺りに夜の帳が降りた。「空の王。せいぜい楽しませてくれ。」 カムはそう言うと、サウンズロッド内部へと姿を消した。おそらくどこかからかこの戦いを傍観しているのだろう。「カム=スカーデッド。」 ロシェは噛み締めるようにその名を呟いた。カタリナも湧き出てくる怒りを抑えきれずに拳を強く握る。「古の機械の相手は僕が一人でする。カタリナはサウンズロッドへ入
last updateLast Updated : 2026-06-30
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空間を越えし機械Ⅱ

カタリナがサウンズロッドへ入った後、しばらくの沈黙が続いていた。そしてそれはロシェの集中力を極限にまで高めている。「忌々しい空の王。久しいな。」 地中からの声が辺りに響き渡った。そして大地が激しく揺れる。最初にアクアストールを襲った地震と同じだ。あの時もカムはこうやって地震を引き起こしたのだろう。ロシェは空へと飛び上がった。「あぁ。久しぶりだな。」 ロシェはそう答えた。大地は裂けていき、異様な雰囲気を醸し出している太古の棺は完全に壊されている。古の機械は姿を見せた。その両足で荒れ果てた大地を何の感情を抱くことなく踏みつけた。およそ七百年だろうか。二人はここアクアストールで再開することになったのだ。「空の王よ。この時を待ち焦がれていた。」「そうだな。僕も同じだ。古の機械ラオム。今度こそ完全に消し去ってみせる。」 ロシェの言葉には力がこもっている。「まずは手始めに殴り合うとしようか。」 ラオムはそう言うと、一瞬で上空にいるロシェの前へと移動した。そして右拳を振るう。ロシェはそれを避ける。「雷剣。」 ロシェは雷の剣で、ラオムの繰り返し放たれる拳を次々といなしていく。「衰えてはおらぬか。」 ラオムはそう言いながら何度も拳を振るう。「むしろ強くなったさ。あの頃より。」 ロシェもそれを次々に受け止める。「ならこれならどうだ。ワープゲート。」 ラオムがそう言うと、ロシェの後方にサークルが出現した。するとさっきまで前方で拳を振るっていたラオムが、後方に瞬間移動している。ロシェは何とかその動きに感覚でついていく。何度もそれが繰り返された。「懐かしかろう。この空間転移能力。」「そうだな。」 ロシェはそう答えながら、雷の剣で拳を叩いて行く。しかしラオムの拳の強度の方が上なのようで、雷の剣は徐々にヒビが走っていった。そしてついにラオムの拳が、雷の剣を粉砕した。「七百年待ち侘びた決闘も呆気なく終わりを迎えるものだ。」 ラオムは渾身の右拳をロシェに振り下ろす。ロシェは地中へと叩きつけられた。それを見てラオムは地上へと瞬間移動した。「本当にこれで終わりなのか?」 ラオムが問いかけると、土煙の中に無傷のロシェが立っていた。「そんなわけないだろ。」 ロシェはそう強く答えた。寸前のところで雲の鎧を身に纏って防いだのだ。「そうでなくては、七百年待っ
last updateLast Updated : 2026-06-30
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空間を越えし機械Ⅲ

「長き戦いもようやく終わった。」 「ま、まだ、だ。」ロシェの声だった。蚊の鳴くようなか細い声を何とか振り絞っている。「まだ生きているのか。往生際の悪さも大したものだ。」ラオムはそう言うと、再び手で十字を切る。ホワイトホールを出現させた。「空の王よ。混沌の未来の礎となるがよい。」 再び無数の槍がロシェに向かって降り注いだ。「お、おう、」今にも消えそうな声でロシェは何かを呟いている。もちろんラオムには届いていない。しかし空には届いているようだ。失った右腕を空に掲げることはできない。それでも空は、ロシェの思いを確かに受け取っている。「お、おう、ぎ。紡がれた太陽。」ロシェの体から光が放たれた。その光が上空にいるラオムを包み込む。しかしその瞬間、無数の槍が、動けないロシェを再び貫いた。もうロシェが目を開けることはないだろう。しかし最後に放った奥義に思いは詰まっている。ラオムを包み込んだ光は赤い球体へと姿を変えた。それは太陽そのもののエネルギーだ。中に閉じ込められたラオムは空間を手で切る。「ブラックホール。」しかし異空間が現れることはなかった。ラオムは力を失っていることに気がつく。「そうか。これが空の王の真の力なのか。」ラオムはそう呟くと球体の中で座り込み、目を瞑った。古代兵器や古の機械は太陽の下では力を失ってしまう。それはカタリナがガリュウとの戦いで証明した。ラオムは全てを悟り諦めたのだろう。ロシェが命を振り絞って作り出した太陽の棺桶は、徐々に空へと向かって上昇していく。本物の太陽の元へと向かっているのだ。これによってもう二度と古の機械ラオムが、この世界に姿を現すことはないだろう。過去からの因縁の戦いは壮絶な引き分けとなったのだ。いや、ロシェの命をかけた最期の奥義がラオムに勝ったと言ってもいいのかも知れない。 ロシェはラオムを倒せたのかどうかも分からないまま眠ってしまったのだろう。ようやく長い年月を越えて、古の機械を消し去ることに成功したのに、その事実を知らないままに眠っている。本当はすぐにでもカタリナの側に行きたかったはずだ。でもそれは叶わない望みとなってしまった。約束を果たせなかった自分が悔しいと感じているのだろう。カタリナを後悔させてしまう自分を憎むのだろう。ロシェは現代に蘇ってからの人生をどう感じているのだろうか。きっと楽しかったと思え
last updateLast Updated : 2026-06-30
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革命

時折外から聞こえてくるけたたましい轟音は、カタリナの心を不安で埋め尽くしていた。それでもカタリナは首を横に振り、自分に言い聞かせた。ロシェを信じると決めたのだから絶対に振り返らないと。そうしてサウンズロッド内部をただひたすらに駆け上がっていた。内部は侵入者を拒む構造で、複雑に入り組んでおり、まるで迷宮だった。これはかつて先代の王が暗殺されてから対策として改装されたものなのだろう。「こんなところで時間を弄んでいる場合じゃないのに。」カタリナはそうぼやきながらさっきも通った通路を走った。ふとカタリナは立ち止まる。「何も迷路に付き合ってやる必要はないのかもしれないわね。」カタリナはそう言いながらフレアリングに祈りを込めた。「フレア。炎蛇。八岐大蛇。」炎が形成したヤマタノオロチが、その八本の首を部屋のあらゆる方向に向ける。そして炎を放った。壁には八つの大きな穴が開いて、カタリナは確信の表情でそのうちの一つへと走った。上に上がる階段はそこにあった。それを何度か繰り返していると、ようやく中腹地点の広間へと辿り着いたのだ。カタリナが扉を開くと、その広間には一人の女が立っていた。と言うより待っていたという感じだろうか。「そう簡単には行かせてくれないわよね。」カタリナは小さくそう呟いた。「ようこそ。サウンズロッドへ。私はミレアよ。」「そう。ここにきて生身の人間が待っているとわね。でも私はあなたには用がないの。急いでいるから退いてくれないかしら?」カタリナがそう言うと、ミレアは笑った。「私はあなたに用があるの。会えて嬉しいのよ。カム様がマフィティスアをまとめて送り込むと言った時は絶望したんだから。あなたに会えなくなるって。でもあなたはそれを乗り越えてくれた。私すごく嬉しいの。」「そう。私はそんな風に思われてもちっとも嬉しくないわ。」「いいじゃない。同じ巫女同士仲良くしましょうよ。」「同じ巫女?」カタリナが聞くとミレアは嬉しそうに話し始めた。「空の王を支えた炎の巫女。その類稀なる強さを科学者バミルトン=スカーデッドは、自らが王になった時に欲したのよ。それで作り出したのがこれ。」ミレアはそう言うと、右手にはめられたリングを見せつけた。「それは。」カタリナは少し驚いた。それは黒いフレアリングのようなものだった。「これはダークリング。バミルトン=スカ
last updateLast Updated : 2026-06-30
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革命Ⅱ

「あちゃ。やっぱり強いな。」「もう十分でしょ?行かせてもらうわね。」カタリナはそう言うと、背中を向けて歩き出した。「待って。」「まだ何か?」「私まだやれるよ。もっと遊んでよ。」ミレアは立ち上がっていた。そしてダークリングに祈りを込めている。「カムという男は、あなたがそこまでして守りたい人なの?」カタリナの問いかけにミレアは被りを振った。「私は今、カム様を守るために戦ってるじゃない。楽しくて戦ってるのよ。」「そう。確かにあなたは巫女としての素質は高いわ。でもね。経験が浅い。あの頃の私を見ているかのようなの。」「経験値かぁ。そればっかりはどうしようもないね。」「これから積めばいい。その後にまた相手してあげるわよ。」「だめよ。私はもう決めてるの。自分の死場所はここだって。」「そう。ならもう何も言わないわ。」カタリナはフレアリングに祈りを込めた。「炎剣の舞。」「そうこなくっちゃ。闇剣の舞。」ミレアは闇の剣を持って、カタリナに向かって走る。「フレア。疾風の炎舞。」カタリナは炎の剣を持ったままそう呟いた。次の瞬間、カタリナはミレアの後ろに立っていた。ミレアの右腕を斬り落として。「見えなかった。」「でしょうね。」ミレアは斬り落とされた右腕を見ながら、小さく笑った。「これじゃあ。もうダークリングも使えない。」「それが狙いだからね。じゃあ私は行くわ。殺人の趣味はないの。」「待ってよ。ちゃんと殺してから行って。」「全て終わったら回復させてあげるから、そこまで待ってなさい。」カタリナがそう言うと、ミレアは株を降った。「そんなこと望んでない。ちゃんと殺してって言ってるの。でなければここから先に行かせるわけにはいかない。」「なぜ命を粗末に扱うの?」カタリナが聞くと、ミレアは少し考えてから答えた。「大事に扱っているからこそ、炎の巫女の手で終わりにしてほしいのよ。生きていてもいいことなんてないって分かっているから。」ミレアにも辛い過去があるのかもしれない。カタリナはかつての自分と重ね合わせた。「そう。分かったわ。でも私も急いでいるの。一瞬で終わらせてもらうわ。」「ありがとう。」カタリナは炎の剣でミレアの首を斬り落とした。「私も出会う人が違えばこうなっていたのかもしれないわね。」カタリナはそう呟くと、ミレアの骸に背を向け
last updateLast Updated : 2026-06-30
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革命Ⅲ

カタリナは最上階の扉を開こうとしていた。ふと外が静かなことに気がつく。頭の中には色々な憶測が飛び交ったのだが、その雑念全てをかき消して、自分が成すべきことに注力すると決意した。そしてゆっくりと扉を開く。「ミレアを倒したか。」カムはソファに腰掛けたままそう聞いた。「えぇ。」カタリナはそうとだけ答える。「モニター見てみろ。空の王ロシェ=カエルムは死んだ。古の機械も滅んだ。全ては俺の想定の範囲で進んでいた。誤算だったのはおまえだけだ。」モニターには見るも無惨に穴だらけとなり横たわっているロシェの姿が映っていた。カタリナは込み上がってくる感情を懸命に押し殺した。「私は選択を間違えてしまったようね。」「そうだな。俺の想像を遥かに凌駕するおまえの力があれば、ロシェ=カエルムが死ぬことはなかったかもしれない。でもおまえは自分の目的を優先してここへ来た。」「あなただけは何が何でもここで葬る。」カタリナはフレアリングに祈りを込めた。「フレア。煉獄の監獄。」カムの周り半径十メートルほどに炎のサークルが形成された。「そこから出ようとすると、全身を焼かれ死ぬことになるわ。そのソファから一歩たりとも動かないことね。」カタリナのその言葉を聞いて、カムは背もたれに腰を預けた。「なぜそこまでして俺を恨む?」「恨んでないわ。ここにくる時、あなたの兄の墓を見たわ。あなたも根っこから腐ってるわけではないようね。無理に悪を演じている。そんな風に私には見えるわ。」「おまえは知らないのだろう?俺の父がどのような人物だったのか。心優しく民からも愛される王だった。しかし突然命を奪われたのだ。それなら俺は逆に悪のカリスマとして国を支配すると決めたのだ。」「そう。あなたには同情するわ。でもしてはいけないことに手を染めて、奪った命が多すぎる。」「そうだろうな。」カムは頭がいい。こう話してるうちに何か打開策を練っているのかもしれない。しかしカムの額に滴る汗からは現状に覚悟を決めているかのようにも見える。カタリナにはこの男がよく読めなかった。「たかだか炎を操るだけのちっぽけな存在だと考えていたが、まさかおまえがこれほどの力を有していたとはな。どうだ?おまえの信じる王はもう死んだのだ。俺のこれからを信じてみないか?」「ふざけないで。あなたにこれからはない。ここで確実に死ぬべき人間
last updateLast Updated : 2026-06-30
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心に宿すもの

ロシェとカタリナはグレートニールに向かって歩いていた。ロシェが古の機械と戦った時、カムはアクアストールを封鎖していたようで、目撃者などはおらず、民は王が死んだことなどもちろん知らないままであった。唯一変わった状況といえば、人型機械が活動を停止したことだろうか。人工気候装置が破壊されたことにより、太陽が常に出ているわけではなくなった今、あれだけの高性能な機械を維持する体内エネルギーが枯渇してしまったのだろう。道中には動かなくなった人型機械がたくさん転がっていた。この光景を見て、民たちは国の異変に気づくのだろう。「ねぇ。ロシェ。」 カタリナが突然口を開いた。「どうした?」 ロシェは優しく聞き返した。「本当にもう平気なの?体。」 カタリナが心配になるのも、仕方のない話である。なぜならあの時、ロシェの心臓は完全に止まっていた。たしかに死んでいたのだ。「あぁ。大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」 ロシェは優しい笑顔でそう答えた。「それよりカタリナ。これからこの国をどう立て直していくんだ?」「そうね。もう王はいらないわ。みんなの力を合わせることが大事ね。」「そうか。国は壊すことよりも築くことの方が難しい。」 ロシェのその言葉に、カタリナはカムの言葉を思い出した。「そうよね。」「あぁ。みんなが同じ方向に向かうのが一番難しいことだと思う。ましてや率いる者を立てないのであれば。」「そうね。」 カタリナは少し俯きながらそう答えた。「カタリナ。何も焦る必要はない。ゆっくりと一歩ずつ進んで行けばいいと思う。」 ロシェは笑顔でそう言った。カタリナはその笑顔を見て、再び心に誓ったことがあった。この国を素敵な笑顔に包まれた国にしようと。  思い返せばアクアストールで全てが始まって、戦場から戦場へと移動を重ねた。あの時もロシェとカタリナはこの道を歩いていた。その時は気づきもしなかったのだが、ここにも美しい花は咲いている。きっとカタリナが目指している理想の国には、こういう小さな気づきが溢れているのだろう。安泰な平和とはまだまだ言い難いほど国は疲弊しきっているのが現状だけれども、二人は確実にその一歩を踏み出している。国民全てがその姿を描ければ、それが同じ方向を向くということに繋がる気がする。いつかは花が満開に咲くと信じて、二人は歩いている。「カタリナ。見て
last updateLast Updated : 2026-06-30
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心に宿すものⅡ

数日後。王が死んだことを知った国は一時混乱に陥った。喜びを噛みしめる者もいれば、路頭に迷う者もいた。二人はその全ての人たちに手を差し伸べて、決して見捨てることはしなかった。その小さな努力が積み重なって、三ヶ月が経つころには、皆の顔は同じ方向へと向かっていた。何者にも支配されない幸せな国を築いていこうと。  ロシェとカタリナはアクアストールにいた。民たちの活躍もあり、ゆっくりだが確実に復興は進んでいるように見える。「カタリナ。一つ思い出したことがあるんだ。」 ロシェが唐突にそんなことを言い出した。「なに?」「炎の巫女の最終奥義についてだ。」 カタリナは目を丸くした。「もう戦いは終わったのよ?最終奥義は必要かしら?」「地形操作の舞を知っているか?」「知ってるもなにも。私はそれがされた場所で修行を積んだの。」「そうか。なら話は早い。フィナは邪竜を追い払うために何者と生存できない地形へと変化させた。これに逆があるとすれば?」 ロシェの話を聞いて、カタリナは驚いた。「つまり命が芽吹く地形に変形させられるってこと?」「そうだ。」「でもどうやって。やり方がわからないわ。」「僕の勘が正しければ、ここの地下に巨大な神殿があるはずなんだ。そこに手掛かりがあるかもしれない。」「それなら探してみましょう。」 二人はサウンズロッドの内部へと入った。月日が経っても中は何も変わっていない。迷路のような一階フロアはカタリナが、吹っ飛ばしていたので捜索は案外スムーズに進んだ。「カタリナ。ここだ。」 二人は地下への扉の前に立つ。そしてロシェがゆっくりとその扉を開いた。「随分長い階段ね。」「古の機械の封印にはそれなりの巨大な空間が必要だったと思う。この先はかなり広く続いているだろう。」 ロシェがそう言うと、カタリナは小さな炎で辺りを照らした。「行こう。」 二人は地下へと足を進める。階段を下り終えると、そこにはカルトゥナやガリュウの時とは比べ物にならないほど広大な敷地が広がっていた。「たしかに広いわね。」「あぁ。でもここがかつての空の城の地下だとすれば僕にはどこに何があるか理解できる。ついてきてくれ。」 ロシェはそう言うと奥へと歩き出した。カタリナもそれについて行く。しばらく歩くと、古い扉が視界に入った。「あそこだ。」 二人はそこに向かった。
last updateLast Updated : 2026-06-30
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心に宿すものⅢ

「私に隠していることがあるよね?」「気づいていたのか?」「気づかないわけがない。」 カタリナは賢い。ゆえに人よりも小さな情報から結論を見出すことができてしまう。「ちゃんと話す。聞いてくれ。」 ロシェがそう言うと、カタリナは頷いた。「僕たちは時代を変えることができた。復興作業をする人たちの顔。辛いだろうに笑顔に溢れている。」 ロシェの言う通り、人々の表情に笑顔は戻りつつある。「そうね。」 カタリナは静かにそう答える。ロシェの服は先ほどよりも染み付いた血の量が増えてきている。「カタリナ。すまない。僕は。」 ロシェはそこまで言ったところで口から血を吐き出した。体には古の機械との戦いで負った傷が戻り始めている。「ロシェ。」 カタリナはロシェの肩を支えた。溢れてくる涙を必死に我慢しながら。目の前で起ころうとしている現象から目を背けてはならない。そんな風に思っているのだろう。ロシェは一度深呼吸をして話を続ける。「僕はやっぱりあの戦いで死んだんだ。カタリナがアクアリングに祈ってくれたから、最後に少しだけ新時代を歩く時間がもらえた。でももう時間切れみたいなんだ。」 ロシェはそう言いながら涙を拭う。「私はけっきょく、あなたに何もしてあげられなかった。全部一人で背負わせてしまった。」 カタリナは溢れ出る後悔を口にする。あの時一緒に戦っていればこんなことにはならなかったかもしれない。しかしそれを今更言っても時間は戻らない。「それは僕が望んだことだ。それにカタリナと過ごした時間は僕にとって大切なものになった。君がいてくれたからどんなことも乗り越えられたんだ。」 ロシェの言葉が、悲しみに暮れたカタリナを優しく包み込んでいく。「結婚の約束。守れなくてごめん。」 それにカタリナは被りを振る。「今日まで一緒にいてくれたじゃない。それで十分よ。」 カタリナは溢れ出る涙を拭い、ロシェの手を握った。「僕は空から見守り続ける。勝手なことを言うようだけど、これからも僕を愛していてほしいんだ。」「そんなの。あたりまえよ。」「ありがとう。カタリナはもう三つの鍵を手に入れている。あとはその想いを胸に舞えばいい。」 ロシェは最終奥義のことを言っているのだろう。しかし今のカタリナはロシェとの別れに頭を持っていかれていて、整理がつかない。「立派な国にしてくれ。」
last updateLast Updated : 2026-06-30
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紡がれる

戦争から2年。まだまだ途上ではあるが、幸せな雰囲気が街には溢れていた。壊れたものを立て直すことは非常にツラい作業と言える。しかし苦しい期間が長かったこの国では、その復興作業すら、幸福の風のように感じてしまう。カタリナは時折、海辺に腰掛けて、空と会話していた。(ねぇロシェ。今のこの国は笑ってる。笑ってるんだよ。私たちがずっと手に入れたかったモノ。この国が本当の意味で笑顔になれるってこと。それは叶ったんだよ。)「ママ?」小さな女の子が、カタリナの右手を握る。「どうしてママは1人でお話してるの?」カタリナは、女の子の頭に手を置いて答えた。「パパとお話してるんだよ。」「パパはお空にいるの?」「うん!いつも見守ってくれてるんだよ。」「いつかパパにも会いたいなぁ。」子供の悪気ない一言が、カタリナの心をエグる。「いつか……。きっと会えるよ!」カタリナは滲む涙をこっそりと拭った。民の祈りが草木を肥やすかのように、国は緑溢れる平穏な地へと変貌を遂げていく。小鳥の声も以前より溌剌としているようにも感じられる。カタリナは、ロシェとの間に生まれた奇跡の子に、ルーナと名前をつけていた。ルーナ・カエルム。それが次の時代を紡ぐ者。空と炎を紡ぐ者の名前だ。
last updateLast Updated : 2026-06-30
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