目を覚まして隣を見ても、理玖の姿はなかった。 そっと手を伸ばして枕に触れてみる。 冷たい。 昨夜、白川から連絡を受けて出ていった理玖は、結局一度も帰ってこなかったらしい。「……何があったんかな」 スマートフォンを確認する。 理玖から連絡はない。 何かメッセージを送ろうかとも思ったが、邪魔をしてはいけない気がして、そのまま画面を閉じた。 朝食の準備をする。 いつもの癖で味噌汁を二人分作りかけて、途中で手が止まった。――今日は、うちだけやんか。 自分一人分だけの朝食をローテーブルへ運ぶ。 窓から射し込む朝陽は暖かいのに、部屋の中は妙に静かだった。 ここへ来たばかりの頃なら、何とも思わなかったはずなのに。 最近は、隣に理玖がいることに慣れてしまったらしい。 凜は箸を手に取りながら、テレビの電源を入れた。『続いて、昨夜から白川ホールディングスで発生している大規模なシステム障害についてです』「……え?」 箸が止まった。 画面には、見覚えのある白川ホールディングスの本社ビルが映っている。『関係者によりますと、昨夜遅く、白川ホールディングスの複数部署で、社内システムへ接続できない障害が発生したとのことです』 淡々と読み上げるアナウンサーの声に合わせて、テロップが流れる。【白川HD 複数部署でシステム障害】『現在も原因の調査と復旧作業が続けられているということです』「そんな……」 昨夜の理玖の表情が蘇る。『分かった。すぐに行く』 電話を受けた途端、それまでとはまるで違う顔になった。――あれから、ずっと……?『また、白川ホールディングスでは、情報セキュリティ企業のKurose Web Securityがシステムの監視を担当しています』 息を呑む。
Última actualización : 2026-09-29 Leer más