「よぉ姉貴。はよ金くれよ」 凜に気付いた大雅が席にやってくるなり、それだけを言って右手を差し出した。 当時中学二年だった彼は身長も伸び、体格も良くなっていた。 けれど、締まりのないニヤケ顔と、間延びした話し方は変わっていない。 八年ぶりの再会にも、懐かしさは微塵も湧かなかった。「遅れてきたのに謝罪もなしか」 理玖が低い声で、溜息混じりに呟く。「あぁ? 誰やそいつ。なんで一人やないねん」 大雅は一瞬だけ理玖を見たものの、すぐに凜へ視線を戻した。「そう言うお前も、一人じゃないだろうが」 理玖の視線が、大雅の隣に立つスーツ姿の男へ向けられる。 三十代ほどだろうか。 濃紺のスーツを着た男は大雅の横で黙ったまま、店内の壁掛け時計を見ている。――この人が、山下……? 玲奈から聞いた名前が頭を過る。「そんなん、お前に関係ないやろが」「なら、俺がここにいても関係ないよな」 大雅が大袈裟に舌を鳴らした。「とりあえず、はよ金よこせや」 大雅に睨まれ、凜は反射的に身を縮こませる。「座れ」 理玖の低い声が響いた。「はぁ? なんでお前の言うことを、俺が――」「金を受け取りに来たんだろう。なら、まず説明しろ」 理玖が向かいの席を指差す。 大雅は隣りにいるスーツ姿の男へ視線をやったが、男は何も言わない。 再び舌を打って乱暴にソファに腰を下ろし、男もその隣に座った。「何を説明せぇっちゅうねん」「百万円を要求する根拠だ」 大雅が眉を寄せる。「はぁ? 姉貴のせいでこっちは苦労しとるんや。その詫びとして当然やろが」「苦労?」「姉貴が縁談をぶち壊したせいで、こっちは散々なんや」「白鳥家が没落した責任を、凜一人に押しつけるつもりか。当時高校生だった凜に全責任があると?」「そらそうやろ
Última actualización : 2026-09-05 Leer más