安田洋(やすだ よう)と付き合ってきた5年目に、彼が浮気をした。別に珍しいことじゃない。もともと彼は、この界隈では有名な女たらしだった。この5年間、彼の周りから女の姿が消えたことは一度もない。でも――今回は違った。今回は、どうやら本気らしい。写真は見知らぬ番号から送られてきた。整った顔立ちの若い女性が洋に寄り添い、幸せそうに笑っていたのが映っている。5年前の私も、きっとあんな笑顔だった。5年という時間を費やした私は、最後にあんな笑顔を見せたのがいつだったのかも思い出せない。写真には、一件の録音データも添えられていた。「洋、お前さ。片山亜希(かたやま あき)と付き合ってもう5年だろ?これからどうするつもりなんだ?」「どうするって?別にこのままでいいだろ」「お前はよくても、あっちはそうはいかないんじゃないか?」洋は鼻で笑った。「お前は分かってないな。亜希は俺の言うことなら何でも聞く。あいつは俺から離れられないんだよ。俺が何をしようと、大人しく俺のそばにいる。まるで尻尾を振ってついてくる犬みたいにな」私はそこで再生を止めた。この5年間、私は彼のどんな振る舞いにも目をつぶってきた。いつか私の想いは伝わる。いつか彼は振り向いてくれる。そう信じ続けてきた。でも彼にとって私は、ただの犬だった。従順で、都合のいい犬。写真や録音を誰が送ってきたのかなんて追及しなかった。そんなことはもうどうでもいい。大事なのは、一つだけ分かったこと――安田洋は変わらない。そして、彼は私を愛していない。荷造りは驚くほど早く終わった。一時間で荷物はすべてスーツケースに収まった。5年も暮らした部屋なのに、自分の物は思ったより少なかった。もちろん、洋はお金の面で私に不自由をさせたことはない。記念日やイベントのたび、高価なプレゼントを贈ってくれた。私はブランド品の出張買取を依頼し、それらをすべて売り払った。持っていても、お荷物になるだけだから。すべて片づけ終えると、私は家で洋の帰りを待った。最後くらい、ちゃんと顔を見て別れを告げたかった。けれど、どれだけ待っても彼は帰ってこなかった。その代わりにかかってきたのは、彼の友人・塩崎和也(しおざき かずや)からの電話だった。「洋が酔い潰れてる
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