All Chapters of キジも鳴かずば撃たれまい!: Chapter 11 - Chapter 12

12 Chapters

バーニング 2

「真壁か? 今どうなってる」「これが最後の電話になります」 家に帰った二兎は荷物を整理しながらイヤホンを通して電話を掛けた。相手は神奈川県警の同じ対策本部に所属する上司だ。「もう私とは関わらないでください」「あ? おい、お前」「無理なんです。付き纏わないで、ストーカー」 届け。届いて、お願いだから。「……シータの連中が近くにいるのか?」「!」 上司である松永《まつなが》慧《けい》吾《ご》はトクリュウや神奈川の暴力団に精通する信頼できる人だった。だから二兎の置かれている状況にいち早く察しがついたし、それが出来る人だから危険を承知で連絡をよこした。「落ち着いて聞いてくれ。例の取引現場で警察官が殉職した件はこっちに届いてる。遺体《ホトケ》は見つかってないが、あの場所で人が行方不明になって気づかないわけがない」「……それで?」「今はお前の安全が第一だ。足がつきそうなものは生ゴミに混ぜて廃棄しろ。見つかるとまずい」「わかり、ました」「『最後』なんて言うな。必ず生きて帰るぞ」 松永は仕事用のスマートフォンの待ち受けを妻と一人娘にしているような人だった。あの時死んだ警察官の中にも同じように家族がいるはずだ。 ──なんでこうなった?「あの、私今お付き合いしてる人がいるんです。姉崎の〈リンダ〉っていうクラブで働いてる」「……! リンダだな? 阿座上組の息が掛かっていた店だ。そこに連中がいるんだな」「はい」「でかした。あとは俺たちに任せろ」 その日のうちに二兎は自分の警察官としての身分を証明するものをすべて廃棄した。必要な情報は頭の中にしまい込み、燃やせるものは自宅のベランダで吸ったことのないタバコと一緒に燃やした。 殺し屋がいるというだけで二兎は自分でも必要以上だと思うほど怯え切っていた。日常から完全に切り離されて宙に浮かんだ気分だった。 それでも、私は平和を、メビを守るにはこうするしかないのだと思うことにした。 そうしているうちにインターフォンが鳴った。二兎はびくんと身体を跳ねさせたが、草壁一果としてドアを開ける。「メビさん?」「ボスがお呼びだ。その……大丈夫か」 闇バイトの運び屋である少年メビは少し気まずそうに顔を俯かせていた。「声が聞こえたから」「……すみません」「ストーカーってやつか。嫌な野郎だ」「そう、ですね」
last updateLast Updated : 2026-07-08
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バーニング 3

 あの夜の話。少年《メビ》をぶん殴って気絶させた後、花火は灘子の指示通りに小包と衣服にそれぞれGPSを取り付けてから豹虎を助けに入った。 灘子は初めから運び屋をエサに発信機で組織を釣り上げるつもりだったのだ。だから豹虎を囮にして花火だけが単独で動く必要があった。「……で、ここか」 結果、小包と衣服は二つともクラブ・リンダの座標を示した。 ピンクのネオンがいやらしく照らす歓楽街の中心部。その治安の悪さから一般客は寄り付かず、今は不良たちの縄張りだ。 ここにあの闇バイト少年がいるはずだ。そして恐らく、パランティカ・シータの幹部級も。「っし、行こか」「マスター」「あ? どないした」「そのシータって結局なんなの?」 少し考えて、豹虎はこう返した。「この国で一番危険なクズの集まり」 人見組は詐欺を容認する厄介なクズの集まり。対してシータの前身である阿座上組は殺人で逮捕された組員を表彰する異常で危険な連中が少なからずいた。ドレッドもその一人。組長が病死してからは息子である泰良《たいら》が引き継いだが、泰良はその異常な連中を率いるリーダーでもあった。 奴が関わってるなら、危険度は裏社会でも随一に跳ね上がる。 クラブ・リンダは会員制だが、路地裏に面する裏口の警備はまるで大したことなかった。いびきをかいて眠るチンピラを通り越して終わり。「……なんか見たことあるような」「チンピラが?」「いや、何でもない。行こ行こ」 目的は少年やシータの幹部クラスと接触し、ライセンスの在処となぜ豹虎を狙うのか理由を突き止めること。 盗み聞きができれば十分なのだが、未成年をクラブに連れ込んで目立たないはずもない。花火は入ってすぐの女子トイレで待たせることにした。「こっからは大人の時間や。合図するから待て」「あ、マスター」「……?」「わたしはガスがどんな顔か知らない。知ってるのはガスバーナーで人を生きたまま焼き殺す手口と、殺傷力だけなら日本一の殺し屋だってこと」「えぇ……怖……」「接触してくるかも知れないから、今覚えて」 トイレに隠れる前、花火は豹虎に自分の手を見せた。「こいつ殺し屋かもって思ったら手を見ること」「手?」「うん。昔師匠が教えてくれたの。手が荒れてて変に白かったらほぼ確実に殺し屋なんだって」 そんな見分け方があるのか、と率直に思った
last updateLast Updated : 2026-07-10
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