大学入試の結果が出た日、私・一ノ瀬寧々(いちのせ ねね)はいつもの癖でリビングに向かって叫んだ。「お父さん、お母さん!苦手だった教科の自己採点が満点だったよ!これで東都の大学に行って、お兄ちゃんと冬馬に会いに行けるね!」返ってきたのは、相変わらずの静寂だけだった。ソファには、4つの小さな人形が座っていた。父と母、兄・一ノ瀬駿(いちのせ しゅん)、そして幼馴染の藤代冬馬(ふじしろ とうま)。彼らは丸い目で私を見つめ、いつもの夜と同じように、黙ったまま寄り添ってくれていた。そこで、ふと思い出す。1年前に、妹の一ノ瀬結衣(いちのせ ゆい)が倒れていたことを。家族はこう言った。姉である私の成績が良すぎて、結衣は学業のストレスが原因で自殺未遂までしたのだと。そうして私は家族の「恥」となり、このアパートに追いやられた。引っ越した最初の夜、隣の部屋の酔っ払いが部屋を間違えて私のドアを叩いた。私は布団の中で縮こまり、声を殺して泣くしかなかった。何度家族と冬馬に電話をかけても、受話器からは、ただ冷たい呼出音だけが流れていた。夜が明ける頃、ようやく母から一通のメッセージが届いた。【もう電話してこないで。あなたが連絡してくると結衣が苦しむから】その日から、私は彼らを模した4つの人形を作った。食事の時も、眠る時も、彼らと一緒だった。成績が上がったことや、誰にも言えない悩みを聞いてもらった。けれど今、頬を涙が伝ったが、もう彼らに慰めを求めることはなかった。暗闇を一人で歩き続けた今、私にはついに、振り返らない勇気が宿ったのだ。私はその場に立ち、1年間暮らしたこの部屋を改めて見回した。壁紙は剥がれ落ち、そこからコンクリートが覗いていた。カーテンは古びていて、カビの斑点ができていた。天井のエアコンは鈍い音を立てるばかりで、夏になっても生ぬるい風しか送ってこなかった。受験生の夏、私は毎日デスクに向かって入試対策問題を解き続けた。問題用紙をめくるたび、全身が汗でびっしょりになっていった。しかし、一ノ瀬家は別にお金に困っているわけではないのだ。父と母、駿と結衣は、街の中心部にあるタワーマンションに住んでいる。結衣には自分の書斎も音楽室もある。ぬいぐるみや洋服を置くための専用の部屋さえあ
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