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All Chapters of 菊池まりな童話集: Chapter 1 - Chapter 10

16 Chapters

第1話 虹の橋を渡った猫が教えてくれたこと

 あけみがまだ生まれる前の話です。お父さんがお母さんにこう、切り出しました。「今度、猫の譲渡会があるんだけど、一緒に行かないか?」あけみのお父さんもお母さんも、猫が好きで休みが合えば、猫カフェに行くなどしていました。「いいわねぇ。いつなの?」「今度の土曜日だよ。」「わかったわ。一緒に行きましょう!」お父さんもお母さんもにこにこしながら、その日を待ちました。そして、譲渡会当日になりました。会場には、たくさんの人が来ています。お父さんとお母さんも、どの猫にしようか、真剣に見ていきます。「ねぇ、この子はどうかしら?生後6ヶ月の雌猫ちゃんよ?」「お、三毛猫かぁ。可愛いなぁ。」「じゃあ、決まりね!」お父さんもお母さんも嬉しそうです。猫をお迎え用のゲージに入れ、車に乗せペット用品売り場へ向かいます。「猫トイレ、猫砂。子猫から食べられるカリカリの餌。あと、おやつに、これはどうかな?」スティック状の袋に入った、猫のおやつを手に取りながら言います。「お、そうだな。えーっと、あとは、猫のおもちゃと…。」お父さんもお母さんも楽しそうに、猫のおもちゃを選びます。「爪とぎや、爪切りも必要ね。」「そうだな。それと、お風呂グッズも買っておかないとな。」ペット用品売場はゲージに入れたペットも一緒に見て回れます。子猫は最初はにゃーにゃー鳴いていましたが、疲れたのか、おとなしくしています。たくさんの買い物を済ませ、家に帰宅しました。「ちょっと買いすぎたかな?」「大丈夫よ。きっと。」迎え入れた猫の名前をお父さんとお母さんで、ちゃおと名付けました。猫のワクチン接種や、避妊手術も済ませました。ちゃおを迎え入れて半年後、お母さんが妊娠していることが分かりました。お父さんも大喜びです。「最初の子は、流産してしまって残念だったけれど、また戻ってきてくれたんだな。」「そうね。流れた子は、忘れ物を取りに戻ったって言われてるものね。」そうして生まれてきたのが、あけみです。ちゃおはあけみが家に来てから、時に母親、そして時にお姉さんとなりながら、見守り、一緒に遊んだり、寝るときも必ず一緒でした。あけみもちゃおが大好きで、とても可愛がっていました。しかし、ある日のことです。「お母さん!ちゃおの元気がないの!!」あけみがちゃおを抱きかかえて階段を降りてきま
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第2話 老犬ジョンと子猫のルナ

ある春の日、小さな町の片隅で、1匹の野良猫が5匹の子猫を生みました。野良猫は安全で暖かい場所を探しては、移動をしていました。しかし、ある日、移動中に1匹の子猫を見失ってしまいました。母猫とはぐれてしまった子猫は生後3ヶ月で、よちよちと小さな身体で、母猫を探して町を歩き出しました。「お腹が空いたな…。ミルクが欲しいなぁ。」子猫は疲れてきてしまいました。その時、急に雨が降りだしてきました。雨に濡れた子猫の身体は、どんどん冷たくなっていきます。「ああ、もうダメだ…。」子猫はついに力尽きて、パタンと道端に倒れてしまいました。そこへ野球の練習を終えた少年が通りかかりました。少年は子猫を見つけると、カバンの中からタオルを取り出し、子猫をタオルで優しく包み、家に連れていきました。「お母さん、この子猫を助けて!」少年はお母さんに、タオルに包んだ子猫を見せながら言いました。「あらあら、大変!身体が冷たくなってるわ!」お母さんは少年から子猫を受け取ると、お湯で子猫の身体を暖め始めました。「あなたはどこから来たの?お母さん猫とはぐれてしまったのかしら?」「ひとりでよくここまで歩いたわね。偉かったね。」お母さんは必死に子猫に話しかけながら看病をしています。この家にはジョンという名前の老犬がいます。ジョンも心配そうに、子猫を見ていました。子猫の身体が温まると、お母さんは子猫を毛布にくるみ、子猫用のミルクを飲ませました。子猫は少しだけミルクを飲むことが出来ました。ジョンはその様子を見て少し安心しました。お母さんは、ジョンに言いました。「ジョン、この子猫の親代わりになってほしいの。いい?」ジョンは「ワン!」と鳴き、分かったと返事をしました。それから毎日、ジョンと子猫はいつもそばにいました。ジョンは優しく子猫の身体を舐めます。お母さんは子猫にミルクを飲ませたり、子猫用の餌を与えたりしました。時々、温かいお湯で身体を洗ってあげたりもしていました。少年も優しく子猫を撫でながら、「早く元気になれよ!」と声をかけました。子猫は徐々に元気になっていきました。ジョンもとても嬉しそうです。ジョンが子猫に話しかけます。「お前さん、どこから来たんだい?もうちょっとで、危ないところだったんだよ。」子猫は「お母さんとはぐれてしまって…。お母さんを探して
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第3話 月の泣きごと

 むかしむかし、空に浮かぶ月は、とても寂しい思いをしていました。毎晩、月は地上の村々を見下ろし、家族たちが集まって笑い合う姿を羨ましく思っていました。「わたしには友達がいない」と月は星たちにつぶやきました。星たちは月から遠く離れていて、月の言葉を聞くことができませんでした。ある夜、小さな村に住む優しい心を持った女の子のキミコが、空を見上げると、月が涙を流しているように見えました。「どうして泣いているの?」とキミコは月に向かって問いかけました。驚いたことに、月はキミコの声を聞き、答えました。「わたしはとても寂しいの。みんなには家族や友達がいるけれど、わたしにはだれもいないわ」キミコは考えました。そして言いました。「わたしがあなたの友達になるよ。毎晩、あなたに話しかけるね」その日から、キミコは毎晩窓辺に座り、月に向かって一日の出来事を話すようになりました。学校での出来事、友達とのゲーム、家族との楽しい時間について話しました。 月は徐々に明るく輝くようになり、キミコの話を聞くのを楽しみにしていました。そして、月の光は村全体を優しく照らすようになりました。村の人々は、月の光が以前より明るく、暖かくなったことに気づきました。夜道を照らす月の光のおかげで、村人たちは安心して夜も活動できるようになりました。やがて、村の子どもたちもキミコの真似をして、月に話しかけるようになりました。月はもう決して寂しくありませんでした。 それから何年も経った今でも、月は地上の子どもたちの声に耳を傾け、優しく微笑みながら世界を照らしています。だから、夜空を見上げたとき、月が特別に明るく輝いているのを見たら、それはきっと誰かの優しい言葉に月が喜んでいるのかもしれませんね。だから、今夜眠る前に、窓から月に「おやすみなさい」と言ってみてください。きっと月はあなたの言葉を聞いて、もっと明るく輝くことでしょう。
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第4話 鈴の森の小さな友達

 昔々、日本の山奥深く、緑濃い木々に囲まれた「鈴の森」がありました。この森の木々は、風が吹くたびに優しい鈴の音を奏で、まるで森全体が歌っているようでした。鈴の音は、森に住む動物たちや精霊たちの歌声と重なり合い、神秘的な響きを奏でていました。森の片隅には、小さな家がありました。そこに住んでいたのは、ユキという名の、たった一人で暮らす小さな女の子です。両親を早くに亡くし、優しいおばあちゃんと二人で静かに暮らしていました。ユキには人間の友達はいませんでしたが、不思議な力を持っていました。それは、動物たちの言葉を理解し、動物たちもユキの言葉を理解できるという、特別な能力です。森のリスやウサギ、鳥たち、そして賢いキツネやフクロウたちは、ユキのことを「森の小さな友達」と呼んでいました。 ある寒い冬の夜、ユキのおばあちゃんは、急に具合が悪くなりました。村一番のお医者さんが診てみると、「おばあさんを救うには、鈴の森の奥深くにある『月光の花』が必要だ」と言いました。月光の花は、満月の夜にだけ、森の最も危険な場所である「影の谷」に咲くという、伝説の花でした。「月光の花… 影の谷…」 おばあちゃんの言葉を聞いたユキは、少し震える手で小さなリュックサックに水筒と少しのパンを詰め込みました。おばあちゃんにそっとキスをして、「必ず戻ってくるから!」と約束し、ユキは月光の花を探しに出かけました。森の入り口で、ユキはシロという名の白いキツネに出会いました。シロは、鈴の森で最も賢いキツネとして知られていました。 シロはユキの旅の目的を聞くと、心配そうに言いました。「影の谷は危険な場所だよ。一人で行くのはやめなさい。」しかし、ユキの決意は固かったです。「おばあちゃんを助けたいんです!」 ユキの純粋な心に触れたシロは、「ならば、私が一緒に行くよ。」と、ユキの旅に加わりました。二人は森の中を進んでいくと、今度はミドリという名のフクロウに出会いました。ミドリは、森の古木に巣を作り、森のあらゆることを知っている賢いフクロウでした。ミドリはユキに、影の谷の危険性を改めて伝えました。「影の谷には、森の精霊『影の主』が住んでいる。彼は人間を嫌うのだ。」しかし、ユキはびくともしませんでした。「それでも、おばあちゃんを救わなければ!」 ユキの強い意志に感銘を受けたミドリは、「私も
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第5話 星の声を聞いた少年

 村はずれの小さな家に、タカシという少年が祖母と二人で暮らしていました。タカシの両親は彼が幼い頃に旅に出たきり、戻ってきていませんでした。タカシは他の子どもたちとは少し違っていました。彼は星空を見るのが大好きで、夜になると家の裏にある小高い丘に上り、星を眺めながら何時間も過ごすのでした。「タカシ、また星を見ているのかい?」と祖母はいつも優しく微笑みながら言いました。「うん、おばあちゃん。星たちが僕に話しかけてくるんだ。」とタカシは答えました。村の子どもたちはタカシのことを「変わり者」と呼び、時には意地悪をすることもありました。でもタカシは気にしませんでした。彼には星たちがいたからです。ある夏の夜、いつものように丘の上で星を見ていると、一際明るい流れ星が空を横切りました。その瞬間、タカシの耳に小さな声が聞こえました。「助けて...」タカシは驚いて周りを見回しましたが、誰もいません。「こちらよ、タカシ...」声は空から聞こえてくるようでした。タカシは星空を見上げると、北の空に普段見たことのない青白い星が輝いていました。「私はホシノ。遠い星の世界から来たの。私たちの星が危機に陥っているの。助けてくれるのはあなただけよ。」タカシは信じられない気持ちでしたが、何か特別なことが起きていると感じました。「どうすればいいの?」とタカシは尋ねました。「明日の夜、再び丘に来て。そして心を開いて。あなたの中にある光を見つけなさい。」翌日、タカシは一日中その声のことを考えていました。学校でも上の空で、先生に何度も注意されました。夜になり、タカシは急いで丘に向かいました。空には昨日と同じ青白い星が輝いています。「来てくれたのね、タカシ。」ホシノの声が再び聞こえました。「あなたの村に、間もなく大きな災いが起ころうとしています。村の後ろにある古い山が崩れる兆しがあるの。」タカシは驚きました。「でも、どうすればいいの?誰も僕の言うことなんて信じないよ。」「あなたの中には特別な力があるの。星の言葉を理解する力。心を開いて、その力を使って村人たちに伝えなさい。」タカシは深く息を吸い込み、目を閉じました。すると不思議なことに、山の方から微かな震動を感じました。それは言葉ではないけれど、何かが崩れそうになっている感覚でした。次の日、タカシは勇気を出して
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第6話 タケシと柴犬のリン

 タケシは7歳の誕生日、待ちに待ったプレゼントを受け取った。ふわふわの毛並みに、くりくりとした瞳の柴犬の子犬だった。タケシは、その小さな命に「リン」と名付けた。リンは、タケシにとって初めての、かけがえのない友達になった。毎朝、タケシが学校へ行くときには、玄関先で見送るリン。そして、夕暮れ時、タケシがランドセルを下ろすと、しっぽをブンブン振りながら飛びついてくるリン。タケシの笑顔は、リンと過ごす毎日に増え、家にはいつも、リンの小さな鳴き声と、タケシの明るい笑い声が響いていた。 ある日、タケシは急に熱を出して寝込んでしまった。いつも元気いっぱいのタケシが、ぐったりと布団の中でうなされている。リンは、タケシの様子がおかしいことに気づいた。タケシの熱っぽい頬を心配そうに舐め、小さな体を寄せた。リンは、タケシが苦しそうにしているのが辛かった。タケシがいつも喜んで食べる、あの甘いお菓子があれば、きっと元気になってくれるのに…。そんな思いが、リンの小さな胸を満たしていった。夕暮れ時、いつものようにタケシが帰ってくる気配がないことに気づいたリンは、こっそりと家を抜け出した。小さな体で、タケシが大好きだった、あの駄菓子屋を目指して。道は長く、リンには初めての冒険だった。車の音に驚き、大きな犬に吠えられ、何度も怖くなった。それでも、タケシの笑顔を思い浮かべながら、必死に足を進めた。やっとの思いで駄菓子屋に到着したリン。しかし、店主に「犬は入れません!」と追い払われてしまった。リンは、小さな声で「タケシ…」と鳴きながら、お菓子を手に入れることが出来ずに、悲しくなって店から離れていった。空には星が瞬き始め、辺りは暗くなってきた。リンは、タケシのいない家に、一人ぼっちで帰っていく。しっぽは下がり、足取りも重かった。しかし、その時、リンは何かを感じた。それは、かすかな、けれども確かに聞こえる、タケシの声だった。「リン…」リンは、その声に導かれるように、家へと急いだ。そして、家の玄関を開けると、そこには、熱が少し下がったタケシが、弱々しくながらも笑顔でリンを待っていた。「リン…帰ってきてくれたんだね…」タケシは、リンを抱きしめ、涙を流した。リンは、タケシの温かい胸の中で、安心したように眠りについた。お菓子は買えなかったけれど、リンはタケシに、自分の気持ち、そして
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第7話 おひさまとおつきさまのおくりもの

 森の奥深く、こんもりとした木々に囲まれた小さな家がありました。そこには、やさしい目をした小さなうさぎの女の子「ももこ」が住んでいました。ももこは、ピンク色のリボンをつけていつも元気いっぱい。「おはよう、おひさま!」ももこは朝目覚めると、窓から差し込む朝日に向かって手を振りました。「今日も一日よろしくね!」ももこの小さなベッドのわきには、お花の絵が描かれた小さな時計がカチカチと優しい音を立てていました。ある朝、ももこが庭の花に水をやっていると、キラキラと光る小さな紙切れが空から舞い降りてきました。「あれ?なにかな?」ももこは不思議そうに紙を拾い上げました。それは金色と銀色のきらきらした文字で書かれた手紙でした。「親愛なるももこへ。わたしたち、おひさまとおつきさまは、とても大切なおくりものをなくしてしまいました。それをさがす旅に出てくれるやさしい子を探しています。ももこ、お手伝いしてくれませんか?」ももこは目を丸くして手紙を何度も読み返しました。「わあ!おひさまとおつきさまからの手紙だ!」ももこは急いでリュックサックに必要なものを詰め始めました。「えーと、ハンカチに、おにぎり、水筒、それから...」その時、窓からふわっと風が吹き込み、ももこの大好きな青いマフラーが踊るように浮かびました。「そうだ!マフラーも持っていこう。夜はさむいかもしれないもんね」ももこが言うと、マフラーはふわりと彼女の首に巻き付いて、優しく頬をなでました。「あれ?マフラーさん、あなたも一緒に来てくれるの?」マフラーはまるで返事をするように、もう一度ももこの頬をなでました。準備を終えたももこは、大きな森の入り口に立ちました。高い木々が頭上で揺れ、葉っぱがサラサラと音を立てています。「さあ、おひさまとおつきさまの贈り物を探す旅の始まりだよ」ももこは自分に言い聞かせるように小さくつぶやきました。ちょうどその時、一羽の小さな青い鳥がももこの前に舞い降りてきました。「こんにちは、ももこ!わたしはあおい。おひさまとおつきさまに頼まれて、あなたを案内することになったんだよ」「わあ、あおいさん!よろしくお願いします」ももこは嬉しそうに笑いました。ももことあおいは森の中を進んでいきました。やがて、色とりどりの花が咲き誇る美しい花畑に出ました。「わあ、きれい!」
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第8話 忘れられたぬいぐるみの旅

 あるところに、うさぎのぬいぐるみがありました。名前は「モモ」。柔らかくて、耳が長くて、鼻のところには小さなハートの刺繍がありました。 モモは、かつて女の子「ナナ」の一番の友だちでした。ナナがまだ小さかったころ、どこへ行くにもモモを連れていき、夜にはぎゅっと抱きしめて眠りました。「モモ、きょうね、保育園でおともだちができたの!」「モモ、おねしょしちゃった……でも、おかあさんに怒られなかったよ。」 モミは何も話せなかったけれど、その柔らかな体でナナの気持ちをいつも受け止めていました。 けれど、時は流れて──。 ナナが小学校に入るころ、モモはだんだん棚の上に置かれるようになり、中学校に上がるころには押し入れの奥にしまわれてしまいました。 それでもモモは、ナナのことをずっと想っていました。 ある年の春、大掃除のときのこと。押し入れの奥から引っ張り出されたモモは、古い布や箱と一緒に、ごみ袋に入れられてしまいました。「……ナナ……?」 モモの心が、かすかに揺れました。ぬいぐるみには声も足もありません。でも、心だけは確かにあったのです。 その日の夕方、ゴミ回収車がやってきて、モモは家から遠く離れた処分場へと運ばれてしまいました。 ……でも、その途中。 大きな風がふき、ごみ袋が破れました。中からころんと転がり出たモモは、道ばたに落ち、そのまま夜の街に取り残されました。 冷たいアスファルト、見知らぬ景色。 けれどモモは思いました。(ナナのところに、かえりたい……) モモの旅が始まりました。  最初にモモを見つけたのは、道ばたで段ボールに寝ていたホームレスのおじいさんでした。「おや、ぬいぐるみか。ずいぶん汚れちまってるな……」 おじいさんはモモを拾い上げ、ボロボロのコートの中に入れました。夜の寒さを少しでもやわらげたかったのです。「……お前もひとりぼっちか」 おじいさんはそう言って、モモを抱きしめて眠りました。 でも朝になると、おじいさんはモモをベンチの上にそっと置きました。「ありがとうな。お前のおかげで、ちょっとだけあったかく眠れたよ。」 次にモモを見つけたのは、小さな男の子でした。公園で遊んでいるとき、ベンチに置かれたモモに気づいたのです。「ママ! このうさぎのぬいぐるみ、もってかえっていい?」「だめよ、落とし物かもしれな
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第9話 雲の上の音楽家

 むかしむかし、ある小さな村がありました。その村には、音楽が好きな少年、カケルが住んでいました。カケルは毎日、自分の古いリコーダーを吹きながら、村の川辺や森の中で友達と遊びました。しかし、彼の夢は、空に浮かぶ雲の上で素晴らしい音楽を奏でることでした。ある日、カケルは川のほとりで不思議な老猫に出会いました。その猫は、ふわふわの白い毛を持ち、目は深い青色で輝いていました。「君の音楽は素晴らしいね。でも、もっと高い場所で演奏してみたいなら、私をついておいで」と老猫は言いました。カケルは驚きましたが、興味を持って猫について行くことにしました。猫は彼を山の頂に導き、そこからは、雲が手の届くところに浮かんでいました。「さあ、雲に飛び乗ってごらん」と猫は促しました。カケルはドキドキしながら、跳びかかりました。すると、彼は驚くべきことに、雲の上に着地しました。雲の上には、色とりどりの楽器を持った動物たちが集まっており、音楽を奏でていました。ウサギがバイオリンを弾き、リスがドラム、そしてフクロウが歌を歌っていました。カケルはその場の雰囲気に心を奪われ、仲間になりました。彼のリコーダーの音色は、雲の上の仲間たちに響き渡り、みんなで美しいメロディを奏でました。カケルは、高く高く響く音楽の中で、幸せに満たされました。しかし、夕暮れ時になり、カケルは村に帰らなければならないことを思い出しました。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいました。「またここに来る?」と、リスが尋ねました。カケルは大きく頷きました。「必ず戻ってくるよ!」カケルは老猫に感謝し、雲から飛び降りて村に戻りました。それ以来、彼は毎日リコーダーを吹きながら、雲にいる仲間たちのことを思い出しました。そして、彼の音楽は村中に広がり、村の人たちも音楽を愛するようになりました。カケルの夢は、村の人たちに音楽の楽しさを伝えることでしたが、彼には一つの特別な秘密がありました。雲の上の仲間たちとの友情と、それぞれの楽器から生まれる素晴らしい音楽のことを、心の中で大切に育て続けました。村は音楽に満ち溢れ、カケルはいつかまた雲の上で音楽を奏でることを夢見て、今日も元気にリコーダーを吹き続けていました。そして、空にはいつも、彼を見守る雲たちが漂っていました。
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第10話 森の小さな郵便屋さん

 森の奥深く、苔むした大きな樫の木のくぼみに「キノシタ郵便局」という小さな郵便局がありました。そこで働いていたのは、リスのキノシタさん。彼は森に住むすべての動物たちの手紙を届ける、とても忙しい郵便屋さんでした。毎朝日の出とともに、キノシタさんは赤い郵便帽をかぶり、小さな茶色のかばんを肩にかけて出発します。かばんには森中の動物たちからの手紙や小包がぎっしりと詰まっています。「おはようございます、キノシタさん!」と鳥たちが空から挨拶すると、キノシタさんは帽子を取って丁寧にお辞儀をします。「今日もよろしくお願いしますね!」キノシタさんの一日は長く忙しいものでした。まずは地上の配達から始まります。ウサギのホシノ家には人参の種の小包を、モグラのツチヤさんには地下深くまで潜って新しい眼鏡を届けます。午後になると、木の上に住む動物たちへの配達です。リスである彼にとって、これは得意な仕事でした。素早く木から木へと飛び移りながら、フクロウのヨルさんには夜間用の特製ランタンを、カササギのヒカル夫妻には新居祝いのカードを届けます。 しかし、森には川や池もあり、水辺に住む動物たちへの配達は少し難しいものでした。キノシタさんは自分で作った小さな葉っぱのボートに乗り、カエルのガワさんやカモのミナモ家族に手紙を届けます。時には波に揺られて郵便物が濡れそうになることもありましたが、彼は決して失敗しませんでした。このように、キノシタさんは森のどんな場所にも手紙を届けられるよう、工夫を凝らしていました。でも、彼にとって最も届けるのが難しかったのは、クマのクボタさんへの配達でした。クボタさんは森で一番の大きな洞窟に住んでいて、とても怖がりな性格でした。誰かが近づくと、すぐに奥に隠れてしまいます。そのため、キノシタさんがどんなに呼びかけても、クボタさんは姿を見せようとしませんでした。ある日、クボタさんへ特別な小包が届きました。差出人は「森の仲間たち」とだけ書かれています。「今日こそクボタさんに会えますように」と祈りながら、キノシタさんはクボタさんの洞窟へ向かいました。いつものように声をかけても返事はありません。キノシタさんは悩みました。そして、ひらめいたように洞窟の入り口に小さな手紙を置きました。「クボタさん、みんなからの大切な贈り物です。しばらくここに置いておきますね。」そ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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