川瀬周平(かわせ しゅうへい)の投稿には、清実の友人たちからのコメントがいくつも並んでいた。以前は俺もフォローしていた、見覚えのある顔ぶればかりだ。【うわ、清実さん太っ腹。そんな高い時計、さらっと贈れるなんてすごい】【さっき松岡陸(まつおか りく)のSNSも見たけど、誕生日にもらったの、コンビニのギフト券だけみたいだよ。清実さんの中じゃ、彼氏より周平くんのほうが大事なんだね】俺は画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。今日は俺の誕生日だ。清実は朝一番にメッセージを送ってきて、仕事が立て込んでいて帰れないと告げてきた。そして一緒に届いたのが、コンビニのデジタルギフトと、たったひと言のメッセージだった。【誕生日おめでとう】一方で、周平の正規採用は高級レストランで祝い、俺が前から欲しがっていた腕時計まで贈っていた。7年という月日が、急にどうしようもなく滑稽なものに思えてきた。清実にとって俺は、コンビニのギフト券ひとつで誕生日を済ませられる相手だった。周平は、時間も金も惜しまず尽くしたい相手だった。そこへ、周平がまた新しい投稿を上げた。今度は動画だ。カラオケボックスの薄暗がりの中、清実がカメラをまっすぐ見つめながら、切なげにラブソングを歌っている。周りの連中が囃し立てる声も入っていた。「清実さん、周平のこと好きすぎでしょ」「いつになったら陸なんか捨てて、堂々と周平と付き合うわけ?」動画はそこでぷつりと途切れた。俺はスマホを握りしめた。言葉にできない感情が胸の奥にわだかまり、息が詰まった。ふとテーブルに目をやれば、2時間かけて作った料理が並んでいた。その隣には、自分で焼いたケーキも置いてあった。今日は清実とふたりで、穏やかな誕生日を過ごせると思っていた。なのに彼女はまた「仕事」を口実に俺を放ったらかしにし、周平のもとへ行ってしまった。こんな理不尽は、この7年間で数え切れないほど繰り返されてきた。いつしか、そんな扱いにすっかり慣れてしまった自分がいる。スマホをしまい、ケーキの箱を開けてカメラを向け、1枚撮り、その写真をSNSに載せた。誕生日を写真に残すのは、毎年続けてきた習慣だ。今年も同じだ。誰かのせいで、この習慣を崩すつもりはなかった。投稿を終え、ケーキを1切れ切って口に運んだ。
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